伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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34、馬狂い兄弟

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私は光と闇の王子と共に同じ馬車に乗ることになりました。


どうやら二人は大変な馬狂いらしく、乗ってる間、延々と馬について語ってます。

私とサラとディーナの3人は死んだ目でお話を聞いてます。

いくら馬が好きでも私はここまで狂ってません。

小窓から外を見ればヨルンガがすごい形相で睨んでいます。

ここは地獄でしょうか。

「もう馬の話ばかり飽きました。」

本当にうんざりです。
隣でサラとディーナが力強く頷いてます。

「馬が好きなんだろう?」

「私はお世話したり乗ったりするのが好きなだけで、馬のことだけでそんなにお話しできません!」

「そんなことないだろう。」

「いいえ、飽きました。私にとって馬は乗ってこそ価値があるんです。たまには違う話を挟んでくださいませ。」

何がおかしいのか二人はゲラゲラ笑って喜んでます。

「そりゃそうだ!おい!馬車を止めろ!」

今度は何を始めるのですか!

「馬に乗るぞ!支度を!お前の育てた馬を試したい。」

我が家の護衛達が慌てて、あちらの隊長を呼び、このご兄弟を宥めます。

ヨルンガも厳しく諌めてますのに、馬に乗るの一点張りで無理やり馬車を停めます。 

外を見ると周囲は木々で囲まれた丘陵です。

見晴らしの悪いこんな場所で停まるなんて。

ディーナは緊張で顔を強張らせ、サラは不安で泣きそうでした。

危険を諭しても、自分たちは強いから大丈夫と自信満々で、逆に喧嘩腰でヨルンガと隊長に食って掛かります。

辺境の方は腕自慢ばかりで我を通そうとする性質の方が多いと聞いてますが、これはあんまりです。

孤児院の子供たちだってこんなことを言いません。

「馬狂いもいい加減になさいませ。我が家の大事な家族を困らせる人に私の大事な馬は絶対触らせません。」 

 
「ああ?」

「なんだと?」

「リ、リリィ様ぁ。」

気色ばむお二人が威圧的に私をねめつけます。
サラがたまらず泣き出して震えていました。
お二人は帯刀されていて興奮状態、私の言葉は我が家よりも高位の方への不敬です。
涙ながらにサラとディーナは私を庇っています。

「退いてくださいませ。」

ご兄弟を押し退け、馬車を降りました。
サラとディーナも付き従います。
ご兄弟は私が逃げたと思って私をせせら笑い、我が家の護衛たちは鬼の形相で睨みます。
これだけの屈強な男たちに睨まれても、なおもご兄弟は強気でいます。
腕よりもご自分の身分の高さを分かってらっしゃるのでしょう。


「あなた、馬を下りなさい。」

一触即発の空気に、あちらの護衛隊長が慌てて馬から下りて膝まずき謝罪されてますが、それを無視して私は馬に乗りました。

「早く馬車に乗って二人のお相手をしなさい。」
 

「お嬢様、しかし私は護衛の任が…」

「その護衛対象が自ら危険な行いをするのです。あなたの主人の気分で女所帯の我が家を危険にさらすのですか?言葉でお二人を諌められないなら体を張ってお止めしなさい!」

早く中にお入りなさい!と一喝すると我が家の護衛たちがご兄弟を囲み、押さえるように中へ戻します。 

その際に刀も取り上げさせました。

ヨルンガはロープを片手に、私にも責任がございますと隊長を引きずって中へ一緒に入りました。

ディーナもお手伝いいたしますと鞭を片手に乗り込みました。

外からかんぬきをかけ、泣きじゃくるサラを御者席に乗せさせます。
私の馬車にはお姉様のメイドたちが乗っていますので、サラ達を乗せるのは馬に負担がかかります。

「急いでランディック夫人の馬車を追いかけてご報告せねばなりません。駆け足で行きます。」

隊列を整えたら、すぐ走り出しました。
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