伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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46、第二王子

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本日の付き添いは隣国の淑女の騎乗を思い付いた女王陛下の姪御様のみです。

お名前はクリスティーン様です

女王陛下直々に手解きを受けているためか、本当に舌を巻くほど巧みに馬を操り、たまに付き添いの私たちを巻こうとするのです。

なんとかお供をしていたら、私を気に入ったと仰って付き添いの指名をいただき、愛称で呼ぶように言われました。

クリス様は今回の演奏会に参加はされません。

外交を兼ねて婚約者候補を選びに来られたと仰っていました。

クリス様は明け透けな性格をされているようで、先日の乗馬の時、会っていきなり、自分がこの国に輿入れしたらどう思うかとお尋ねになられて驚きました。

我が国は多民族に寛容で他国の方のお輿入れは珍しくありません。

遠い果ての国との貿易が盛んな我が国は、黒い髪、ブロンド、赤い髪等の方々が多く、真珠の肌も象牙の肌もチョコレートの肌も美しいという価値観です。

どの貴族でも遡れば他国の血が入っております。

現在の王族にも様々な方がおられました。

名君と名高い女王陛下の縁者であらせられるのだから、社交界で快く受け入れられるのではないかと、このように当たり障りのないお答えをしました。
 


「おい!お前!」

いきなりどこからか怒鳴り声が聞こえ、クリス様と私は驚きました。

ヨルンガと二人の護衛の表情がきつく固まります。

「クリスティーン様、リリィ様、第二王子があちらからいらっしゃっています。」

ヨルンガは忌々しそうに近づく馬上の人物を睨んでいました。



「第二王子、ご機嫌麗しく。」

クリス様は憮然とされ、私は馬上にて恭しく頭を下げました。
第二王子とクリス様の相性も最悪です。
お互い気が強くよく衝突されます。


「淑女に怒鳴り付けるなどご機嫌な方ね。」

「やぁクリスティーン嬢、下々に対する礼儀だ。」

私を見下げ、特にこういう女のなと付け足しました。
この王子は外交問題を起こしに来られたのかしら?と不思議です。

「こんな色の側仕えを連れるなんて趣味が悪い。お前はもう帰れ!」

 
クリス様と私の馬の間に無理やり割り込んできます。

「危ないじゃない!」

馬が慌てるのでどうどうと宥めて落ち着かせますが、お二人がやいやいの喧嘩されるのでなかなか馬が落ち着きません。

「第二王子は本当にこの色がお嫌いですねぇ。いらっしゃる間だけ染めるのはどうかしら、ヨルンガ。」

「ランディックご夫妻がお許しになりませんよ。」

「そうねぇ。」

それよりこのお二人をどうにかせねばなりません。


「第二王子の付き人は近くに見当たらないわね。」

「先ほど護衛一人に探しに行かせました。そう離れていないと思います。」


「だいたいお前がこんな色をしてるのがいかんのだ!」

「リリィの髪の色が何なの!あなたの国だけよ!外の人間には意味のないことよ!」

「お二人とも、馬が興奮しますわ。」

お二人とも馬の様子に気付き、多少落ち着きを取り戻しました。

「第二王子がこの色をお嫌いならいらっしゃる間だけ染めようかと思いますの。何色がよろしいでしょうか?」

「え?そ、染めるのか?俺がいる間?」

どの国のご令嬢も染めることを嫌がります。
1日だけならいいのですが、とても手間がかかり染め粉の臭いや髪の痛みがひどいのであまり勧められないのです。

「はい、ご不快にさせていることが申し訳なくて。乗馬はお勤めなのでやめることは出来ませんし、体型もすぐに変えられません。せめて見た目がお好みに合うように髪の色だけでも。」

ご滞在はあと1週間程です。

そのくらいの期間ならいいかなと考えました。
ディーナたちの手間が増えて申し訳ないですが。

「リリィ様、勝手には出来かねます。」

「ヨルンガ、帰ったらマリエおば様にお願いするわ。第二王子の為にとお願いすれば許可が降りると思うの。」

「リリィ、そんな髪を染めるまでしなくても。第二王子!あなた、他国のご令嬢にそこまでさせるな、んて、あ……。あなた、ちょっと…」

第二王子が顔を真っ赤にしてぶるぶる震えていらっしゃいました。

「あ、あの、も、申し訳ありません!」

怒らせてしまったと慌てて頭を下げました。
染髪がよろしくなかったのでしょうか。
いや、でも第二王子はアンバー様たちに染めろと気軽に仰っていたので染髪には寛容だったはずです。
何やらぶつぶつ呟いていらっしゃいますし、不思議になりちらりと下から第二王子のお顔を盗み見ました。
一層、顔を歪め激しく睨まれてしまい、首を引っ込めます。

「そ、めなくていい。」

なにもするなと片言で仰り、迎えに来た付き人に連れられてその場を離れました。

「怒らせてしまいました。第二王子の国では色を隠すのは悪く思われるのね。」

「…いえ、そうではございません。」

「え?リリィ。第二王子の顔を見たのよね?赤かったでしょう?」

「はい、お顔を真っ赤にして体が震えるほどお怒りでした。」

二人は何やら違うものが見えていたようでしたが、私としては歩みよりに失敗してしょんぼりしてしまいました。

「ああリリィ。落ち込まなくていいのよ、あれじゃ分からなくて当然だもの。」

あちらの小川まで競争しましょう、と明るく声をかけてくださいました。
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