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55、思惑※アンバー
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舞台袖に隠れたアンバーを、先に演奏を終えた令嬢達が出迎えた。
「あの!アンバー様、素敵でしたわ。」
若い可愛らしい令嬢達は頬を染めて囲む。
「ありがとう。」
ニコッと微笑めば、令嬢達はキャッと甲高い声で恥じらった。
ここは邪魔になるから早めに退きましょうと優しく諭すと若いご令嬢たちは嬉しそうにパタパタと走っていく。
「ねえ~、アンバー。会場がスゴいことになってるわよ~。」
順番を待つ席には隣国の侯爵令嬢が楽しそうに声をかける。
まだ誰も立っていない舞台からはまだ観客の歓声が聞こえていた。
「……本当ね。」
「迎賓館で会った時からぁ、少し雰囲気が変わったのは気づいてたけどぉ。」
以前、両親について外交団に参加した際に知り合った侯爵令嬢ロイス。
多少我が儘なところがあるが、身分にあまり拘りがなく同い年ということもあり親しくしている。
『なにも変わってないわよ。今日はちょっと調子に乗っただけ。』
こちらの国の発音が苦手で少し舌っ足らずにしゃべるので、アンバーはロイスに合わせて言葉を変える。
『そう?あんな大胆なパフォーマンスを?調子に乗っただけ?ふふっ。』
クスクス笑いながら、先ほど舞台上の真似をしてキスを投げるロイスにアンバーは曖昧に微笑む。
舞台袖の暗がりで顔が見えないはず。
今のアンバーは顔が真っ赤になっていた。
なぜあんなことをしたんだと自分で思っている。
『恋人?ねえ、そうでしょ?私のところからは誰に向けたのか全然分からなくて気になってたの。』
アンバーの腕に絡んで甘えるようにせがむ。
どうせ、明日のパーティーで耳にするのだと観念した。
『仲の良い女の子よ。』
『女の子?まさか迎賓館で良く一緒にいる小さい子?』
『ええ。』
『あんな子になんで?パーティーでも二人のこと薔薇と妖精なんて言っちゃってさ。ただの噂と思ってたのに。アンバーはあの子のこと、私より気に入ってるの?ねぇ。』
『そういうことじゃないわよ。ちょ、ちょっと顔が近いわ。』
アンバーは私のお気に入りなのにと唇を尖らせて、垂らした赤い髪を一房、指に絡めて弄ぶ。
髪が崩れると嫌がるが、やめてくれない。
『ひどい。アンバーは私の1番なのに。』
『ロイス、機嫌治してくれない?』
『だってズルいもの。私が先にアンバーを見つけたのに。なんで他に仲いい子ができるの?』
『友達に後も先もないわ。私はあなたも大事な友達と思ってるのよ?』
『分かってる。でもイヤなの。』
私のアンバーなのにとごねるロイスにため息が出た。
普段から我が儘なところがあるが、こんなにひどいのは初めてだった。
もうすぐ順番だと言うのにご褒美がないなら演奏もしたくないと言い出し、無理やりご褒美の約束をさせられた。
疲れて足早に控え室を目指して通路を抜けると楽譜を持ったウルリカに会う。
確か、公爵令嬢達と合奏をするはずだと思いだし、アンバーはウルリカに素敵な演奏だった、次の合奏もがんばってと愛想笑いで濁し、隣を抜けようとすれ違う。
「あなたも上手でしたわ。」
微笑むウルリカの唇が歪み、あなたには敵わないと返すと謙遜な態度を取りつつも瞳から優越感が滲んでいる。
二人きりだから油断して明け透けになっていると冷静に観察をする。
「リリィから聞きましたの。あなたは才能があるだけではなく何時間も努力されてると。それを聞いて感動しましたのよ。」
アンバーは心からウルリカの努力を称えるつもりで伝えた。
敵ながら才能が素晴らしいと心底思っていた。
それなのに、ウルリカは今まで見たことないほど顔を憎々しげに歪め、アンバーは驚いた。
「まぁ…。あの子ったら。嫌だわ、本当にお喋りで。」
楚々と微笑むが先ほどの表情はなんだったんだと戸惑った。
「あの子はちょっと…。今は社交界で持て囃されてますけど。時間がたてばどうなることやら。残念ながらああいうところがありますから。本当に家族は心配してますの。」
さも心配だという様子でため息を吐く。
「…アンバー様もお分かりになるでしょう?あの子がああいう子だと。」
ウルリカの眼差しに冷たいものを感じ、ただ曖昧に微笑むと、同意を得られなかったことを不服に感じたように見えた。
ともすれば、ただ心配そうにも見えた。
アンバーの培った経験を持ってしてもウルリカの感情の流れは分かりづらかった。
「私はアンバー様を心配していますのよ。」
親しくするならお気を付けてと心配そうに去っていく姿をアンバーはただ見つめるだけだった。
「あの!アンバー様、素敵でしたわ。」
若い可愛らしい令嬢達は頬を染めて囲む。
「ありがとう。」
ニコッと微笑めば、令嬢達はキャッと甲高い声で恥じらった。
ここは邪魔になるから早めに退きましょうと優しく諭すと若いご令嬢たちは嬉しそうにパタパタと走っていく。
「ねえ~、アンバー。会場がスゴいことになってるわよ~。」
順番を待つ席には隣国の侯爵令嬢が楽しそうに声をかける。
まだ誰も立っていない舞台からはまだ観客の歓声が聞こえていた。
「……本当ね。」
「迎賓館で会った時からぁ、少し雰囲気が変わったのは気づいてたけどぉ。」
以前、両親について外交団に参加した際に知り合った侯爵令嬢ロイス。
多少我が儘なところがあるが、身分にあまり拘りがなく同い年ということもあり親しくしている。
『なにも変わってないわよ。今日はちょっと調子に乗っただけ。』
こちらの国の発音が苦手で少し舌っ足らずにしゃべるので、アンバーはロイスに合わせて言葉を変える。
『そう?あんな大胆なパフォーマンスを?調子に乗っただけ?ふふっ。』
クスクス笑いながら、先ほど舞台上の真似をしてキスを投げるロイスにアンバーは曖昧に微笑む。
舞台袖の暗がりで顔が見えないはず。
今のアンバーは顔が真っ赤になっていた。
なぜあんなことをしたんだと自分で思っている。
『恋人?ねえ、そうでしょ?私のところからは誰に向けたのか全然分からなくて気になってたの。』
アンバーの腕に絡んで甘えるようにせがむ。
どうせ、明日のパーティーで耳にするのだと観念した。
『仲の良い女の子よ。』
『女の子?まさか迎賓館で良く一緒にいる小さい子?』
『ええ。』
『あんな子になんで?パーティーでも二人のこと薔薇と妖精なんて言っちゃってさ。ただの噂と思ってたのに。アンバーはあの子のこと、私より気に入ってるの?ねぇ。』
『そういうことじゃないわよ。ちょ、ちょっと顔が近いわ。』
アンバーは私のお気に入りなのにと唇を尖らせて、垂らした赤い髪を一房、指に絡めて弄ぶ。
髪が崩れると嫌がるが、やめてくれない。
『ひどい。アンバーは私の1番なのに。』
『ロイス、機嫌治してくれない?』
『だってズルいもの。私が先にアンバーを見つけたのに。なんで他に仲いい子ができるの?』
『友達に後も先もないわ。私はあなたも大事な友達と思ってるのよ?』
『分かってる。でもイヤなの。』
私のアンバーなのにとごねるロイスにため息が出た。
普段から我が儘なところがあるが、こんなにひどいのは初めてだった。
もうすぐ順番だと言うのにご褒美がないなら演奏もしたくないと言い出し、無理やりご褒美の約束をさせられた。
疲れて足早に控え室を目指して通路を抜けると楽譜を持ったウルリカに会う。
確か、公爵令嬢達と合奏をするはずだと思いだし、アンバーはウルリカに素敵な演奏だった、次の合奏もがんばってと愛想笑いで濁し、隣を抜けようとすれ違う。
「あなたも上手でしたわ。」
微笑むウルリカの唇が歪み、あなたには敵わないと返すと謙遜な態度を取りつつも瞳から優越感が滲んでいる。
二人きりだから油断して明け透けになっていると冷静に観察をする。
「リリィから聞きましたの。あなたは才能があるだけではなく何時間も努力されてると。それを聞いて感動しましたのよ。」
アンバーは心からウルリカの努力を称えるつもりで伝えた。
敵ながら才能が素晴らしいと心底思っていた。
それなのに、ウルリカは今まで見たことないほど顔を憎々しげに歪め、アンバーは驚いた。
「まぁ…。あの子ったら。嫌だわ、本当にお喋りで。」
楚々と微笑むが先ほどの表情はなんだったんだと戸惑った。
「あの子はちょっと…。今は社交界で持て囃されてますけど。時間がたてばどうなることやら。残念ながらああいうところがありますから。本当に家族は心配してますの。」
さも心配だという様子でため息を吐く。
「…アンバー様もお分かりになるでしょう?あの子がああいう子だと。」
ウルリカの眼差しに冷たいものを感じ、ただ曖昧に微笑むと、同意を得られなかったことを不服に感じたように見えた。
ともすれば、ただ心配そうにも見えた。
アンバーの培った経験を持ってしてもウルリカの感情の流れは分かりづらかった。
「私はアンバー様を心配していますのよ。」
親しくするならお気を付けてと心配そうに去っていく姿をアンバーはただ見つめるだけだった。
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