伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

文字の大きさ
70 / 98

70、見舞い

しおりを挟む
午後から王妃がお見舞いに来られるので簡単に支度をいたしました。

ヨルンガに浴室へ運ばれてディーナに湯あみをしてもらいます。

医師からやり方を学んだと湿布の張り替えをしてくれます。

腕と胸にテーブルの角にぶつかった所は変色してました。

鏡越しで背中を見ると、肩甲骨の下あたりに大きなアザが出来ていました。

「あのデキャンタが頑丈でよかったわ。割れたら切り傷だらけだもの。」
 
「恐ろしいことを仰らないでください。殴られたと聞いて死ぬほど心配でした。」

ディーナが震えて嗜めます。

「殴られてたのかしら?投げつけられたと思ってた。」

「私どもは殴られたと聞いております。」

「背中にアザが2ヶ所あるから殴られて投げつけられたのかも。」

「今は分かりませんね。もうよしましょう。湿布を貼って包帯をしますよ。」

「わかったわ。」

着替えを済ませ、またヨルンガに運ばれて隣の寝室に戻ります。

「このくらいの距離なら自分で歩くのに。」 

「痛み止を減らしますか。」

「ごめんなさい。何でもないです。」

長椅子に降ろされ足を伸ばしたまま髪の手入れをしてもらいます。

「この格好でいいの?」

「はい、王妃様より賜りました。そちらを着るようにと。」

ドレスとは言えない簡素なワンピースです。

寝巻きと言うには可愛いすぎて、王妃様とお会いするには簡素すぎます。

ゆったりと鎖骨下まで開いた襟元とハイウエストのところで幅広のリボンを結ばれ、小さめのパフスリーブが二の腕に緩くかかり、薄くプリーツが織り込まれたスカートが広がっています。

「コルセットを巻けないので仕方ありませんよ。」

「それもそうね。」

あの時、身支度をして会場に戻ろうとしたのは無謀だったと思いました。

痛くてコルセットをつけられそうにありません。

腕のアザを隠す為に袖の長くゆったりしたカーディガンを羽織り、支度を終えました。

「寝てなさい。」

王妃様はご挨拶もそこそこにお会いした途端、なぜ起きてるの!とベッドに押し込みました。

「ご挨拶だけでも…。」

「良いのよ、気持ちだけで充分よ。ガレヌスから大怪我だと聞いてるの。だから早く横になりなさい。」

大怪我…。

ではない気がしますが。

そしてあの医師のお名前はガレヌスなのですね。

やっと知りました。

女性の体に怪我があること自体とんでもないことではありますが。

体は打撲ですし、跡が残るような切り傷とは違います。

気楽に考えていたのですが、回りの認識は違ったようです。

お世話になっていることのお礼を申し上げて、いつごろ此方を引き払ってよいか尋ねます。

「そうね、周囲への話がまだ落ち着いてないからもうしばらくここで滞在してほしいわ。」

「話ですか?実家とザボン公爵様方とのやり取りは済んだと聞きましたが、何か他にありましたか?」

「いえね、色々あるのだけど。第二王子があなたに会いたがってるのでお断りしているのよ。直接、謝罪したいと仰ってるの。でもまだ、あなたと第二王子の噂が落ち着いてないから。」

「はぁ…。噂ですか。私としては謝罪を聞くだけなら、お会いして構いませんが」

今回のことをよっぽど反省されたのですね。

「……。やっぱりあなたが好きだと騒ぎだしたら困るわ。サフィア嬢との婚約発表があるのに。」

「あ、はい。困ります。会うの止めます。」

あの手紙だけで充分です。

なのに、今日辺り帰国予定だったのですが、延期されたそうです。


ですが、本当に心の籠ったお手紙のおかげで充分伝わりました。

早く帰国されてください。

ここなら無理に押し入れないということだ、第二王子が帰国するまで私の帰宅は延期になるそうです。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。

芹澤©️
恋愛
王太子の元へ側室として嫁いだ伯爵令嬢は、初夜の晩に宣言した。 「申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。」

逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います

みゅー
恋愛
アドリエンヌは魔法が使えず、それを知ったシャウラに魔法学園の卒業式の日に断罪されることになる。しかも、シャウラに嫌がらせをされたと濡れ衣を着せられてしまう。 当然王太子殿下との婚約は破棄となったが気づくと時間を遡り、絶大な力を手に入れていた。 今度こそ人生を楽しむため、自分にまるで興味を持っていない王太子殿下との婚約を穏便に解消し、自由に幸せに生きると決めたアドリエンヌ。 それなのに国の秘密に関わることになり、王太子殿下には監視という名目で付きまとわれるようになる。 だが、そんな日常の中でアドリエンヌは信頼できる仲間たちと国を救うことになる。 そして、その中で王太子殿下との信頼関係を気づいて行き……

処理中です...