伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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72、ペット

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それぞれご挨拶を交わし、早速ペットを触らせてもらいます。

側にいたサラとディーナはあまりの大きさに怯んでしまったので下がるように告げます。

「大きな口。」

挨拶がわりに私の指をすんすん匂い大きな舌でぺろんと舐めてそのまま口に含まれてしまいました。

「ひぇっ、リリィ様ぁ。」

「大丈夫よ。赤ちゃんみたいに甘えて吸ってるだけ。怯えると興奮しちゃうわ。静かにしてね。」

「は、はいぃ。はぃ。」
 
「リリィ様、私どもは、し、心臓に悪いので少し、離れております。サラ、こちらへ。」

サラが震えていたのでディーナが連れてガセポから離れていきます。

「怯まないね。怖くない?止めさせようか?」

楽しそうに微笑むアダム様に私も笑みを返します。

ロルフ様とは違った男らしい顔立ちで陛下に似ていると思いました。

「少し怖いですね。でもキレイで可愛いと思います。」

長椅子に身を乗り上げて私の顔や首を匂って確認しています。

私はされるまま、たてがみの猫が気のすむまでじっと待ちます。

シピは不満そうに唸りましたが、諦めて身を退かし足元に降りていきました。

首もとを撫でると首輪が見えて金のタグにネロと彫られてます。

「ネロというのですね。」

「ああ。まだ止めなくていいのかい?」

強い力でぐいぐいと押される私に、アダム様がさすがに少しハラハラした様子で私を伺います。

「はい。匂いを嗅いでるだけですもの。ね、ネロ。美味しい匂いがする?さっきチョコレート食べてたから。」

ぐるぐると返事をするように唸り、長椅子に乗ってきて私に被さるように甘えてきます。

私のお腹より大きな顎を胸に乗せて、私は自分を支えられず長椅子のクッションに倒れてしまいました。

重くて苦しいので少し半身をよじりますが、お腹にすりすりと頭を押し付けて前足を巻き込んでくるので、ふかふかの毛並みを撫でて遊びました。

長椅子が狭いから、ネロははみ出た足をだらんと伸ばして満足そうに私の上で寛ぎ、たてがみを撫でると目を細めてぐるぐる鳴くのです。

「本当に大きな猫ですね。可愛い。」

「少し大きすぎるかな。」

隣のロルフ様も一緒にネロを撫でていました。

「こんにち、はー!こ、かこんにちは!イギル!いぎる!」

「イギル?こんにちわ、あなたはとってもご機嫌なのね。」

テーブルの上で羽をはためかせ、お喋りの相手をいたしました。

「名前はイギルだよ。」

「イギル、初めまして。リリィです。覚えてね。」

「!りっり、りり。ごき、ごきげんよっ」

バサバサと飛んで長椅子の背もたれに飛び乗り、私の髪の毛をくちばしでつついてきます。

「くすぐったい。イギル、いや、やめて。」

「くすぐ、くく。くすぐる。」

やめてと言いつつ痛みはないのでクスクス笑って好きなようにさせました。

鳥に表情はないはずなのに、イギルはとても楽しそうです。

「しゃべる鳥なんて初めて見ました。イギルはヘラクレス様のペットですか?」

「面白いだろう。うるさくて何度か絞めようと思ったが、愛嬌がある」

第二王子のヘラクレス様。

ご兄弟の中でもっとも体が大きくて、武勇に優れていることから軍のまとめ上げをなさってます。

話している間にヘラクレス様はご自身で、イギルの足輪に細いチェーンをかけて止まり木に繋ぎます。

「イギル、ご令嬢の髪を弄るな。こっちへ来い。」

「リリィ!リリィ!」

「もう覚えてくれたの?すごいわ。」

「言うことを聞け。さばいて食うぞ。」

「くう。イ、ヤだ!」

抵抗しますが、ヘラクレス様が足を掴んで止まり木に移動させると、ヘラクレスは意地悪としつこく啼いて、またヘラクレス様がお叱りになり、イギルはまた文句を言います。

本当に人間のような会話するので笑ってしまいました。

「次は小さな猿をお見せしよう。どうぞ。」

ネロに潰される私に、第三王子のナヴィーン様が近寄って柔らかく包んだ手の中を覗かせます。

ききっと小さく鳴く声が聞こえて、黒い大きな瞳の猿が指先から顔を覗いていました。

「わぁ、小さい。」

「最小の猿だそうだ。名はワンダ。」

「歩き回る人ですか?」

「よく知ってるな。異国の意味だ。」

「耳にしたことがありまして。」

感心する皆様に、私がそう呼ばれてましたとは言えません。

後ろにいるヨルンガだけは意味が分かっていると思います。

「大人しいから大丈夫だよ。」

「はい。」

指を近づけるとスルッと私の腕を走って、私の頬や耳を触りました。

「あっ。」

驚いて叫んでしまい、ワンダにいきなり耳を引っ張られ身をすくめました。

「あ、すまない!こら、ワンダ。」

ナヴィーン様の手がワンダを追いかけますが、スルッと逃げて首の後ろに髪の毛を掻き分けて潜り込んでいきました。

「わ、ワンダ。出てこい。」

「なつっこいのですね。そのうち飽きて出てきます。そうだわ、お菓子を用意してあげましょう。」

ワンダを潰さないよう頭と背中を浮かせると隙間でもぞもぞと走り回って遊んでいます。

イギルが触った時より強く髪を引くので少し痛みます。

それと、シフォンのリボンを引っ張ってほどいているのが分かって顔が熱くなりました。

皆さんに言わなければバレないと思い、出来るだけ平然とやり過ごします。

「すまない。他の者にはこんなに飛びかからないのだが。手から少し見せてあげようとしただけなんだ。」 

おろおろするナヴィーン様に、ヘラクレス様とアダム様がゲラゲラ笑ってしまいました。

「いや、ワンダは女の子にいつもこんなだよ。」

「たまにメイドが近づくとこうやってちょっかいかけてるぞ。飛びかかって髪を崩されるとよく聞く。ナヴィーンが一緒に見るのはデカイ男ばっかりだから嫌なんだよ。」

「え?!」

「兄上だけです、知らないのは。それより、何かおやつを持ってきてませんか?」

困った顔で笑うロルフ様に、しょぼんと恥ずかしそうに項垂れて、ポケットから袋を出してナッツやドライフルーツを出しています。

ナヴィーン様からナッツを受け取り、ワンダに見せるとパッと手から奪って背中の隙間から服の中に潜り込んできて、今度こそ大きく叫びそうになりました。

「あ、あ、だめ、ワンダッ。危ないから、出てきて。踏んじゃう。」

ネロからのし掛かられてるので身動き出来ず、くすぐったいのを堪えて叫ぶと、ワンダがごそごそと肩の隙間を走ります。

胸の包帯を掴んで走るのでほどけてしまい、慌ててワンダが落ちないように服の上から支えてあげると、その隙間が落ち着いたようで、そこで丸まってナッツをかじり始めました。

私はくすぐったいのを堪えていたせいで息が上がり顔がとても熱いです。

胸元からナッツをポリポリ齧る音が響いて恥ずかしくなりました。

「ぶふっ。ナヴィーン、お前のペットはとんでもない奴だなぁ。ぶふっふっ。くっくく。腹痛い。」

「こいつ、甘やかしすぎじゃないか?しつけ直せ。俺が預かろうか?」

「…兄上、ペットは飼い主に似ると言いますよ?知ってますか?」

楽しそうに笑うアダム様達と対象的にロルフ様は顔を赤くして怒っていました。

「ぶふぅ!くー!くくっ。お前に似たのか。そうかそうか!ははは!!」

「……すまん、本当にすまん。」

恥ずかしそうに小さくなるナヴィーン様をアダム様が笑っていました。
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