伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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74、果実

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「ほら、あれだよ。行こう。」

桃色の、丸い実が沢山木になってました。

「あぁ、温室の中は甘い香り。」

「あの実の香りです。異国から取り寄せて育てております。」

案内をしてくださるおじいさん先生がニコニコと教えてくれます。

「あ、こんにちは、ロルフ様。」

「今日もいらっしゃっいましたね。そちらはどなたですか?」

草むらや木の影から、入り口でお会いした方とは違う若い庭師や学者の方々がぞろぞろと現れ、木の近くに辿り着く前に囲まれました。

驚いて、ヨルンガにしがみついていると、皆さんは微笑ましそうに私を眺めています。

「怖がらせて申し訳ない。緑の館へようこそいらっしゃいました、小さなお嬢さん。」

「お嬢さん、そんな高い所にいなくても怖いことありませんよ。降りていらっしゃい。」

小さいお嬢さんなんて、デビュー前の子供への呼び掛けです。

思わずムッとします。

「いいえ、子供じゃありません。もう、私はレディです。初めまして、皆様。サンマルク伯爵家の次女、リリィです。今年、デビュー致しました。以後お見知りおきを。」

「そうでしたか、可愛らしいレディ。失礼いたしました。」

「ごめんなさい、足をケガしているので不作法かと思いますが、高い所からのご挨拶をお許しください。」

「おおっ、それは重ね重ね失礼を。」

「なんと、丁寧なご挨拶を。」

「素晴らしい。」

大袈裟に誉められ恥ずかしくなった私はヨルンガの胸に顔を隠します。

「退いてくれ、みんな。あの実を採りに来たんだ。これじゃ採れない。」

ロルフ様が皆さんに囲まれ埋もれて見えません。

「ほら、みんな。仕事に戻りなさい。ロルフ様とレディが困っている。」

ひとりひとりと私は握手をして、散り散りに去っていかれました。

木の影や草むらから、皆さんが手を振っていらっしゃって、私も振り返します。

手の甲にキスを落とす方々もいましたが、年配の方ばかりで緊張することなく笑顔を見せてお礼を言えました。

「部下達が申し訳ない。お気を悪くされてませんか?」

「私がお仕事の邪魔をしてしまったのに、皆さんが気さくでとても嬉しいです。」

ほほっとおじいさん先生が笑って応えています。

案内された木の下で、甘い香りの実をちぎり、ロルフ様とおじいさん先生と沢山おしゃべりをしました。

実を採る為、ヨルンガに高く持ち上げてもらっていると、遠くの草むらや木の影から先生達が手を振って笑っています。

温室を出る時には、お土産だと学者の先生方がお花や種を持たせてくれました。

ロルフ様にまた連れてくるようにとお話されています。

「また機会がありましたら、ぜひ。」

「私の方から招待させていただきます。」

もう一度、私の家名を確認されて手紙を送るとおじいさん先生が仰いました。

今は王妃の宮殿にいることを説明し、宛先の相談をしました。

ロルフ様は俺が連れてくると仰って、またご一緒に来る約束を致します。

次は足が治る頃が良いです。

自分の足でこの温室を散歩したいと思いました。

王妃の宮殿に戻り、沢山頂いた果物を王妃と宮殿に遣えてらっしゃる皆様に振る舞いました。

夜、王妃様とお食事をご一緒し、ロルフ様から頂いた果物がデザートに使われていました。

「うふふ、まったく。あの子ったら大盤振る舞いね。あぁ、美味しいわぁ。もぐ。」

「ロルフ様はとてもお優しいのですね。」

「そうね。あの子、いい子なのよ。どうかしら?気に入った?」

「気に入…、そんな、おそれ多いです。えと、とても、はい。お優しくて、とても素敵な方だと思いました。」

気に入ったかと聞かれ、私の立場から気に入ったと言うのは憚られて、他の言葉を探しました。

「そうなのね、母として嬉しいわ。うふふ。」

デザートの黄色と緑の、二色がロルフ様の昼間、虹色に輝く瞳ように思えました。

また来ると仰っていたので、早くお会いしたくて口元が緩んでしまいます。

「それと、明日の予定ですけど、会場での件を陛下がお話になるわ。」

「え、陛下直々にでございますか?まぁ、どうしましょう。私、まだ参上できる格好が用意出来ません。」

陛下にお会いするならちゃんとドレスを着なくてはいけませんのに、コルセットを巻けないので慌てました。

「大丈夫よ。非公式で行う私的なものだから。私も参加しますし、謁見の間ではなくティールームを使うわ。私があげた服を来ていらっしゃい。」

どうせだからあとで私が選ぶわ、と楽しそうに微笑まれます。

最近、体の痛みが落ち着き、体調が良いと言うことで、明日の午後は家族とランディック辺境伯爵夫妻、ザボン公爵、第二王子様方の数名もいらっしゃるそうです。

第二王子は呼ばれる予定ではなかったそうですが、会うまで帰らないと仰っているそうで、どうせなら皆さんと同席の場でお会いすることになったんだとか。

もう少し早めに予定していたようですが、私の発熱で延期していたと聞きました。

お母様とお姉様は、今回の件をとても心配しているとお父様の手紙に記されていたので、お二人にお会いしたら何と仰られるのか気が重くなりました。

食後は部屋で、王妃が衣装を出してああでもないこうでもないと沢山の衣装と睨めっこされています。

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