伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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91、入場※ロルフ

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リリィには久々の社交場。

馬車から降りるリリィの手を取る。

しっとりと濡れていて少しぎこちない。

緊張した面持ちにしおれた印象が強い。

「緊張してる?」

「はい。」

「俺じゃ頼りにならないかな?」

「だって、ロルフ様がいるから余計。失敗したらと思うと。」

ますますしおれてしょんぼりする。

「そうか。一緒だね。実は俺もリリィに緊張してるから失敗するかもって思ってるんだ。」

「え?」

「人生で2度目のエスコートだよ。俺が失敗したら助けてね。俺もリリィを助けるから。お互い助け合うのはどうかな?」

「ふ、ふふ。ロルフ様は失敗なんかされませんのに。くすくす。でも私、お役に立てるようにがんばります。」

「頼りにしてるよ。」

顔が和らいで微笑みが出る。

近い目線にお互い笑って入り口へ向かう。

腕に添えられた手を撫でる。

入場を知らせる声が響き、視線が集まる。

怖かったのかリリィにきゅっと掴まれ心地好かった。

「注目の的だね。」

「はい。」

「皆、嬉しそうな顔だよ。君が来たから。」

「え?そう、ですか?」

「よく見て。皆、顔が喜んでる。」

周囲を見て安心したようだ。

俺達を好意的に見つめる視線の多さに緊張が緩む。

「知り合いの顔もいるんじゃないか。」

「はい。見かけました。あとでご挨拶をしたいです。」

ニコニコ笑って先程のしおれた印象は消えて生き生きとしだす。

やっとエスコートまで漕ぎ着けた。

長かった。

それとなく反応を見ながら誘うが、なかなかエスコートに頷いてくれず、結局母のごり押しでもぎ取った。

手を繋ぐのは許してくれるのに。

リリィの頑なさ以外にも壁があった。

何が問題かってウォルリック卿だ。

今回の件でかなり怒っていてリリィの後見人の一人として名前を連ねると言い張った。

ランディック辺境伯の存在も大きいのに。

しかも、王妃である母上、今回の件に絡んだザボン公爵。

それなら自分がとそれぞれが庇護に入れたいと口を出した。

あまり大きくすると件のことが公になるからとアダム兄さんが諌めてやっと治まった。

父上は呑気にリリィをダーシャやオリガの遊び相手に王宮に留めたいと言う。

令息ならまだしも、普通のご令嬢に何をさせるんだとウォルリック卿とザボン公爵が止めた。

止めなかったらそうなっていたと思う。

そもそもリリィ本人が喜びそうだけど。

ウォルリック卿の気が治まったところで、母上がリリィを俺の婚約者候補として扱いたいと言うとまた揉めた。

なぜ父親でもないのに口出すのかと言えば敬愛するキンバリー様の孫だからだと言う。

それだけでもなく孫のように可愛がっていたリリィを簡単によそにやりたくないと。

領地から出てこないのでなかなか構えなかったが、今年のデビューからやっと交流を深められると話した。

自分の孫と縁続きにと考えてもいたようで婚約者候補として公に扱うことを嫌がった。

どっちにしろ本人の意思を尊重することなので、婚約者候補として扱うことはないが、個人的に親しくする分には口出し不要と決まった。

そうと決まれば、母上の離宮に留めてる間に関係を深めようと毎日、プライベートのバラを自分で選んで送った。

離宮と言っても回廊が繋がっていて行き来は簡単だ。

暇を作ってせっせと通うが、疲れさせていることも気づいたのである程度に留めた。

学者達の誘いも頻繁で俺がいる時しかダメと言えば皆が陛下そっくりだとからかわれる。

ガレヌスと母上がまだ治ってないからと出来るだけ長く引き留めて社交界への復帰を伸ばした。

ウォルリック卿がリリィの参加に合わせて複数いる孫達と会わせようと狙っているからだ。

冗談じゃない。

社交界の妖精と呼ばれ人気があるんだ。

赤薔薇と呼ばれるアンバー嬢や黄金の冠と唱われたサフィア嬢とはまた違った魅力で一躍時の人となっている。

デビュタントと演奏会のパーティーにしか来なかったことで余計に皆の噂になり、妖精の復帰を待ち望まれていた。

黄金の第二王子を虜にしたと影ながら囁かれ、殿方の粗暴に怯えて隠れたのだとまだ秘かに噂が流れている。

表向きは倒れるサフィア嬢を支え損ねて足をくじいたとザボン公爵から話を広めさせた。

側にいた俺が間に合わなかった謝罪も重ねて、王妃の医師に治療させていると母の離宮に留める言い訳も流した。

リリィ不在の間、社交場に行けば兄達が俺のリリィへの献身を仄めかして、俺もそれとなく肯定した。

今、会場でウォルリック卿や他の男達が奮闘しているが、俺と並んだ時の釣り合いにまわりはお似合いだと口にしている。

自分が小柄で良かったと初めて思った。

ダンスを誘われても練習をしてないからと嫌がった。

「無理強いはできませんね。」

相手の男にやんわりと微笑んで制すると悔しがり、リリィはほっとしたような顔を向ける。

「してやられましたね。」

「何もしてませんよ。」

ウォルリック卿の苦々しそうな顔を軽くいなす。

「丁重に扱いください。いざとなればこちらも。」

「覚悟いたします。」

ふんと尊大に鼻をならし、リリィには目尻を下げて話しかけていた。

リリィはウォルリック卿の裏を知らせてないようで、困った顔のリリィは王家の方にそんな態度しないで、心配だからと叱られている。

それも嬉しいようでうんうんと頷く。

普段の違いに笑みがこぼれた。

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