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76,イチャイチャしてる
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チイネェも筋力増加で体内の魔素を消費するから魔力の回復が必要。
体力の回復が早くなるとローラさんに聞いてからせっせと作ってる。
このメンバーの中で、魔素が少なくて消費に向かない体質なのは俺だけ。
マミヤ達も体力増強が出来るし、ホッパーは初級の攻撃魔法が使える。
魔法と相性が悪いのは大陸の特徴らしい。
俺って、何なら出来るんだよって疑問だ。
大陸人は呪符や強い念で魔法に近い操作ができるらしいけど、長い修行と本人の向き不向きがあるらしい。
他国に専門の家系があるってローラさん情報。
俺も弟子入りしたら出来るのか聞いたら、大陸の中でも特別な血筋だそうだ。
少し希望を持ったけど無駄だった。
もし可能性があるなら向こうから迎えが来るって。
血が引き合うとか何とか。
あーあ、実は魔法が使えるとかそういうスゴ技が欲しかった。
無いものはしょうがないし、ローラさんからの付与で充分スゴいことだ。
親父のおかげだけど。
マジ、身内の七光り。
それで回りから文句言われたくねぇし、ガンガン登ってかなきゃなぁ。
「外で弓の練習いいですか?火をお願いしたいんですけど」
「いいわよぉ、いってらっしゃい」
足を組んでお茶を飲みながら手を振っている。
火は竈の精霊が勝手にしてくれるからローラさんが何かすることはない。
庭に出て軽く弓の弦を引くと、以前より柔らかい。
チイネェが庭に刺してくれた丸太に通常の矢を一本、二本と当てていく。
軽い。
けど深く刺さってる。
速さも出た。
飛距離も変わりそう。
しばらく調整で練習しないと扱いこなせそうにない。
「ラオシン、ただいま」
「あ、おかえり。チイネェ」
集中していたら、いつの間にか後ろに立ってた。
「オルカさん達は?」
「魔道具屋」
道具のメンテナンスだって。
「付き添わなかったん?」
「気分悪くなるから店に寄りたくない」
「そうなん?なんで?」
「変な魔力が混ざって気持ち悪くなる」
「親父達も?」
「そうだよ。うちらは魔力酔いしやすい」
「……へぇ」
教えてなかったかと言われて頷いた。
何でも知ってるつもりだったけど結構知らないんだな、俺。
自分の出自も。
親父達の何なのか分からねぇ。
三人に愛されてるのは疑わないけど、自分の存在が何なのか分からないことがこんなにキツイとは思わなかった。
こうやってただいまって言うチイネェは変わらないのに。
悩むことない、それでいいって思えばいいのに、なんで俺を構うんだって不安になる。
「何落ち込んでんの」
「あー、別に。何も」
顔色で察するなよ。
こういうのは鬱陶しい。
顔を見れば分かるってのは。
近寄ってぐしゃぐしゃと髪を混ぜて引き寄せてる。
「やーめーろ」
「んー」
押し返しても生返事でやめる気がない。
本当に今はこの腕も嫌なんだ。
何だかんだ言ったって今まで安心だったのに、家族じゃないと疑ってから居心地悪い。
心臓がバクバクで息苦しい。
力強さに敵わなくて大人しくしたけど体が強張ったままだった。
「……嫌いになった?」
「え、あ?何?」
「……私らのこと。……加減が下手な鬼人だし。……怖い?」
「は?怖くないよ」
そういうことじゃねぇーし。
「……ラオシンに嫌われたらツラい」
「……え?!わ!チィネェ!泣くなよ!」
気づいたら肩に顔埋めてぐずぐずに鼻をすすってる。
「……今のあんたの態度なら姉さんもお父さんも泣くからね。……ぐず、ひっく」
「泣くなってば」
手を回して頭を撫でる。
つるつるの髪を撫でると俺も落ち着いてきた。
今までぐるっと巻いて投棒を刺してたのに、今は頭の天辺から編み込んで魚の骨みたいな髪型。
俺が髪の世話をしていたのに最近はしてない。
グラナラさんとオルカさんがチイネェの髪の手入れを手伝ってる。
「俺がしてたのに」
「何?」
「髪」
「してよ」
「習うよ。この編み方」
「いつものでいいよ」
「こっちの方が崩れなくて楽なんだろ」
「んー。……まあね。……あんたが早く覚えて」
「分かった」
グリグリと額をこめかみに押し付けてきた。
デカイ犬かなんかみたい。
言うと怒りそうだから黙っておくけど。
いや、チイネェなら怒らない。
あんたは小さい猫って笑いそう。
「嫌なことしないからずっと側にいてよ」
「嫌なことはないよ。俺も側にいたいから。姉さん、ありがとう。育ててくれて」
18年って長いよなぁ。
ずっといてくれたんだ。
下手くそな飯とおっかなびっくり触る手ばかり思い出す。
「……は?姉さん?なんでそう呼ぶの?」
「姉貴の方がよかった?」
「別にどっちでもいいけど、なんで急に?」
「……急に感謝したくなりまして。……ソダテテクレテ、アリガトウゴザイマス」
「大好きだからいい。したくてしたんだから」
「うおぅ」
また持ち上げられた。
簡単に抱えんのはやめてくんねぇ?
でもチイネェの満足そうな顔を間近で見たらいつも怒る気がなくなる。
まあ、いいかって思うんだよなぁ。
「その髪型も似合うよ」
結び目の毛先に手をやった。
短くて尻尾みたい。
「なんでもいいよ。あんたにして欲しい」
早く覚えてと急かされて苦笑いがでた。
きぃっと扉の開く音に顔を向けるとローラさんが渋い顔で俺達を見つめてた。
「……仲いいわねぇ。信じられないけど上の指示だから」
手をかざしてすぐにチイネェが俺を肩に抱え直して後ろへ跳んだ。
体力の回復が早くなるとローラさんに聞いてからせっせと作ってる。
このメンバーの中で、魔素が少なくて消費に向かない体質なのは俺だけ。
マミヤ達も体力増強が出来るし、ホッパーは初級の攻撃魔法が使える。
魔法と相性が悪いのは大陸の特徴らしい。
俺って、何なら出来るんだよって疑問だ。
大陸人は呪符や強い念で魔法に近い操作ができるらしいけど、長い修行と本人の向き不向きがあるらしい。
他国に専門の家系があるってローラさん情報。
俺も弟子入りしたら出来るのか聞いたら、大陸の中でも特別な血筋だそうだ。
少し希望を持ったけど無駄だった。
もし可能性があるなら向こうから迎えが来るって。
血が引き合うとか何とか。
あーあ、実は魔法が使えるとかそういうスゴ技が欲しかった。
無いものはしょうがないし、ローラさんからの付与で充分スゴいことだ。
親父のおかげだけど。
マジ、身内の七光り。
それで回りから文句言われたくねぇし、ガンガン登ってかなきゃなぁ。
「外で弓の練習いいですか?火をお願いしたいんですけど」
「いいわよぉ、いってらっしゃい」
足を組んでお茶を飲みながら手を振っている。
火は竈の精霊が勝手にしてくれるからローラさんが何かすることはない。
庭に出て軽く弓の弦を引くと、以前より柔らかい。
チイネェが庭に刺してくれた丸太に通常の矢を一本、二本と当てていく。
軽い。
けど深く刺さってる。
速さも出た。
飛距離も変わりそう。
しばらく調整で練習しないと扱いこなせそうにない。
「ラオシン、ただいま」
「あ、おかえり。チイネェ」
集中していたら、いつの間にか後ろに立ってた。
「オルカさん達は?」
「魔道具屋」
道具のメンテナンスだって。
「付き添わなかったん?」
「気分悪くなるから店に寄りたくない」
「そうなん?なんで?」
「変な魔力が混ざって気持ち悪くなる」
「親父達も?」
「そうだよ。うちらは魔力酔いしやすい」
「……へぇ」
教えてなかったかと言われて頷いた。
何でも知ってるつもりだったけど結構知らないんだな、俺。
自分の出自も。
親父達の何なのか分からねぇ。
三人に愛されてるのは疑わないけど、自分の存在が何なのか分からないことがこんなにキツイとは思わなかった。
こうやってただいまって言うチイネェは変わらないのに。
悩むことない、それでいいって思えばいいのに、なんで俺を構うんだって不安になる。
「何落ち込んでんの」
「あー、別に。何も」
顔色で察するなよ。
こういうのは鬱陶しい。
顔を見れば分かるってのは。
近寄ってぐしゃぐしゃと髪を混ぜて引き寄せてる。
「やーめーろ」
「んー」
押し返しても生返事でやめる気がない。
本当に今はこの腕も嫌なんだ。
何だかんだ言ったって今まで安心だったのに、家族じゃないと疑ってから居心地悪い。
心臓がバクバクで息苦しい。
力強さに敵わなくて大人しくしたけど体が強張ったままだった。
「……嫌いになった?」
「え、あ?何?」
「……私らのこと。……加減が下手な鬼人だし。……怖い?」
「は?怖くないよ」
そういうことじゃねぇーし。
「……ラオシンに嫌われたらツラい」
「……え?!わ!チィネェ!泣くなよ!」
気づいたら肩に顔埋めてぐずぐずに鼻をすすってる。
「……今のあんたの態度なら姉さんもお父さんも泣くからね。……ぐず、ひっく」
「泣くなってば」
手を回して頭を撫でる。
つるつるの髪を撫でると俺も落ち着いてきた。
今までぐるっと巻いて投棒を刺してたのに、今は頭の天辺から編み込んで魚の骨みたいな髪型。
俺が髪の世話をしていたのに最近はしてない。
グラナラさんとオルカさんがチイネェの髪の手入れを手伝ってる。
「俺がしてたのに」
「何?」
「髪」
「してよ」
「習うよ。この編み方」
「いつものでいいよ」
「こっちの方が崩れなくて楽なんだろ」
「んー。……まあね。……あんたが早く覚えて」
「分かった」
グリグリと額をこめかみに押し付けてきた。
デカイ犬かなんかみたい。
言うと怒りそうだから黙っておくけど。
いや、チイネェなら怒らない。
あんたは小さい猫って笑いそう。
「嫌なことしないからずっと側にいてよ」
「嫌なことはないよ。俺も側にいたいから。姉さん、ありがとう。育ててくれて」
18年って長いよなぁ。
ずっといてくれたんだ。
下手くそな飯とおっかなびっくり触る手ばかり思い出す。
「……は?姉さん?なんでそう呼ぶの?」
「姉貴の方がよかった?」
「別にどっちでもいいけど、なんで急に?」
「……急に感謝したくなりまして。……ソダテテクレテ、アリガトウゴザイマス」
「大好きだからいい。したくてしたんだから」
「うおぅ」
また持ち上げられた。
簡単に抱えんのはやめてくんねぇ?
でもチイネェの満足そうな顔を間近で見たらいつも怒る気がなくなる。
まあ、いいかって思うんだよなぁ。
「その髪型も似合うよ」
結び目の毛先に手をやった。
短くて尻尾みたい。
「なんでもいいよ。あんたにして欲しい」
早く覚えてと急かされて苦笑いがでた。
きぃっと扉の開く音に顔を向けるとローラさんが渋い顔で俺達を見つめてた。
「……仲いいわねぇ。信じられないけど上の指示だから」
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