君を巡る物語を始めよう

桜月 翠恋

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真っ暗な部屋にはパソコンのモニターから漏れる淡い光だけがぼんやりと浮かんでいる

その淡い光に照らされているのは一人の青年だった
彼はモニターの置いてある机に齧り付くようにしながら、その机に散らばった紙に何かを書いていた


「違う、違うっ、こうじゃない………」


ブツブツとつぶやきながらモニターに目をやる青年
ボサボサになった銀髪をガリガリと掻きむしり、暫くしてから左手にボールペンを持ちなおした


「クソ、どうしたらいいんだ…」


紙をグシャグシャにして呆然とする青年に暗闇の中から何者かの声が響く


「ねぇ、君……まだ諦めないのかい?」


その声に青年は顔を向けることもないまま机に向かい続けた

それが不満なのか声は更に話しかける


「ねぇ、ねぇねぇ、君のことなんだけど…。ここには君と僕以外、誰もいないだろう?それとも君には何か見えてるのかなぁ?」


その言葉にイラつき、青年は机に強くペンを叩きつけた

カシャン!と大きな音がたてば声は笑い声をあげた


「あはは!怖い怖い」


人をおちょくる様な笑いを漏らしながら声の主はどこかへと行ったようだ

青年は一人、再び机の上の紙に文字を書きなぐり続けた


ゆっくりと青年の片足から力が抜けていく
ぶらりと力なく垂れる足に不快感を感じているのかペンを置いた青年は力の入らなくなった足を椅子の上へと引き上げ、胡座をかく

楽な姿勢になったのか、またペンを持ち、さっきまでの作業の続きを書き始めた

暗闇の中、声の主はその様子を永遠に見続けた

カリカリとペンの音が響く
必死の形相で青年は何かを紙に書き続ける

声の主はそれをあざ笑う

結局、結末は変わらないのだから
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