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1章 願い事

それぞれの願い

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   -side瑠梨-

私は考えていた。お願い事を
素敵な願い事!

もちろんわたしの願い事は決まってるの!

ちらりと横を歩くさとくんを見る
優しくて、いつも必ず私のそばにいてくれる

私の視線に気づいたさとくんは私の頭をなでてくれる


「どーしたの、さとくん?」

「瑠梨が寂しそうだったから」


ふんわりと、花のような優しい笑顔……
この笑顔は私だけのもの…
でも、本当なら私じゃなくて
はずの笑顔


「あのね、さとくん…」

「なーに?瑠梨」

「るーちゃん、さとくんのこと大好き」

「うん、俺もだよ、瑠梨」


幸せな会話、胸が痛い会話
幸せ?うん、幸せ

さとくんは嬉しそうに笑ってるから
私は笑うの

るーちゃん、大丈夫だよ
私は大丈夫


さとくんは私の頭を撫でる


「さとくん、さとくんの願い事は?」

「そうだな、瑠梨と一生そばに入れますようにって」


そういったさとくんは私の額に口付けた

恥ずかしくて顔が熱くなる

私は
るーちゃんはさとくんがすき、大好きなの

さとくんと指と指を絡め、二人で手を
繋ぐ
温かさがお互いの掌にじんわりと伝わる

どちらかともなく笑って、寄り添った

幸せな毎日。とても嬉しい毎日


だから、私の願いはひとつだけ









わたしの願い事は…×××××








 
 
 
 
 
 
 
 

 
 

 

 
 
 
     -side 悠-


「願い事かぁ…」

誰に言うでもなく、独りぼっちの家で俺は呟いた

七不思議。少なくとも願いを叶えるんだから何かしらの危険は伴いそうだ


「よっと」


気になれば仕方あるまい。
調べようではないか、とことんと!

腕まくりをし、自分のパソコンを立ち上げれば、カタカタと検索サイトを開く


「んーと?七不思議……花子さん?うちの七不思議には居ないなぁ…」


カタカタと文字を打ち込んでいく


「七不思議……死亡事件?」


ある記事で俺の手は止まった


「死亡事件、行方不明者多数?」


その記事には


【とある高校で流れている噂
この噂はいつから流行っているのか、いつから始まったのかもわからない七不思議
わかっていることは七不思議とかかわった人間が】


―プツン…


パソコンの画面が消えた


「っ………」


黒い画面に赤い文字が浮かぶ



『ホントウにアなタは
真実ヲ知リたイノ? 』


『知りタいナラ
願い事ヲかなエることダケ考えレバいい』


次々と浮かぶ文字に息を呑んだ…


次の瞬間



『だめよ、これ以上は』


耳元で女の子の声がした

振り返るが誰もいない

震える体をおさえ、画面を見直すと検索サイトが開いたままになっていた


「な、なんだ……ウイルス、か?驚かせ系の悪質サイトか?」


ほっと息をはき、俺はパソコンの電源をおとし、布団に横たわる

願い事


本当に叶うのだろうか?
迂闊に手を出していいものなのだろうか?


ノートの内容を思い出しながら俺は目を閉じた



 
 
俺の願い事はただ一つ


×××××



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

   -side萌奈美-



「たくくん、あゆちゃん、ご飯ちゃんと食べた~?」


パタパタと弟と妹のもとに駆け寄る


「たっくん食べたー!」

「あゆも食べたー!」


キャッキャッと嬉しそうに笑う二人にそっとデザートのプリンを出せば
もっと幸せそうに笑ってくれた


「じゃあ、父さん、あとお願いしてもいい?」


「あぁ、萌奈美は勉強もあるだろ、頑張りなさい」


優しく微笑んでくれた父さんにありがとう、と告げ部屋に入る



パサッと荷物をおろし、そっと布団に横になる


「七不思議、かぁ……」


みんなの話を思い出す
宮苑さんは何が気になってたみたいだけど……

ふと思い浮かぶのはカイ君の顔……

楽しそうなカイ君の笑顔

彼の笑顔を見ていたい…そう思ったところで顔が熱を持ったのを感じた


「な、何言っとるの!うち!」


わたわたとベットに座り直し、頬をペチペチ叩く

私はみんなといたいだけ


願い事は決まっている

でも……もし本当に

何でも叶うのなら







私の願いは………×××××
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『まだたりない、足りないよ…クスクス』
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