七つの不思議のその先に願い事1つ叶えましょう

桜月 翠恋

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1章 願い事

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                   side-やまと-


みんなを安心させる言葉の一つも出ないまま、俺は七不思議について考えていた
この状況からして七不思議は本当だった

なら、やるべきことは一つ


「朝まで残れば願い事が叶うなら…夜のまま止まった校舎だけは絶対になんとかしないと…」

「一つだけじゃ収まらないだろうから、順番通りに七不思議を解いていかないとだめなんじゃない?」

「なるほどな……一番から、か?」

「多分」

「……なら…」


つぶやくと同時に立ち上がり、軽く身体を伸ばす
緊張と恐怖で凝り固まっていた筋肉がゆっくりとほぐれて行く

なんにせよ、ここで怯えてる場合じゃない
俺が動かなきゃ、状況は変わらないだろう


「なぁ、悠。1つめってなんだっけ」

「校舎裏の少女だな」

「了解。じゃあ校舎裏かな」


俺が立ち上がると、怯えていた弥宵が叫ぶ


「なんでそんな普通にしてられるのよ!!廊下のアレ見た!?血まみれで、人が、人が……ぐちゃぐちゃにっ……ぅ……」


口をおさえて、言葉が切れてしまう弥宵

そりゃあそうだ。誰だってあんな死体を見たら恐怖で動けなくなる
この七不思議を始めた時点で俺らは、これが現実だとわからされてしまった
だからこそ…


「終わらせなきゃ帰れない」


俺が言った言葉に弥宵は更に目尻に涙をためて、俺を睨みつけた


「っ……こんなこと、やるんじゃなかった!!やるべきじゃなかったのよ!やまと達のせいよ」

「それは今更でしょう。佐賀宮さん……貴方、矛盾してるんじゃないかしら?」

「なにがよ」

「貴方だって楽しそうだから、願いを叶えたいからここに来たのでしょう?人のせいにするのはお門違いよ」

「っ………!」


俺らを…特に睨みつけながら弥宵その場に座り込んだ


「とにかく…私はここから動かないから」

「わかった。悠お前は弥宵についてやってくれ」

「いや、俺は行くよ。早く終わらせたいしな」


ヘラヘラ笑う悠に、俺の心は落ち着くのを感じた
悠だけは俺をいつも支えてくれている

こいつらだけでも帰さないと…


「弥宵達を残しておけないんだが…」


ちらりと教室にを見渡す

外に出たカイと山本を除いてもここには女子が三人いる
俺に続いて悠が一緒に来てしまうと、男子は天谷だけになってしまう

さすがに、天谷一人に女子を三人も守ってくれと言っても厳しいだろう

頭を悩ませていると宮苑が俺の横に来た


「大丈夫よ。私が神崎くんについていくから。だから森野くんは天谷くんと一緒に五月さんと佐賀宮さんを守っていて頂戴。」


宮苑の発言に悠は少し悩んでから、宮苑の目を見て頷いた


「しょうがねーなぁ。わかったよ。じゃあ宮苑。俺の大切な大切なやまとを頼んだぜ!」

「えぇ、任せて。森野くんの大切な人は守るから」


二人して笑っていたが、俺のプライドが……

宮苑は俺に向き直った
いや、俺一人のほうが安心なのだが


「あーっと……俺、多分……守れませんよ」

「大丈夫よ。自分の身くらい自分で守るから」

「……わかった。なるべく俺から離れないで」


「待ってよ!!」


俺と宮苑の話をさえぎって弥宵が俺の胸ぐらをつかんできた

めんどくさい。小さい頃から弥宵は気に食わないことがあるとこうやって俺に掴みかかってくる


「何だよ」

「何だよ、じゃないわよ!!やまとまで、平橋くんや山本さんみたいに馬鹿なの!?外に出たら死んじゃうかもしれないんだよ!!」

「わかってるよ」

「わかってない!!」


叫びだした弥宵をみんなは心配そうに見ていたが俺だけは冷めた目で見つめる


「お願いだから……わかってるなら…一緒にいてよぉ…」

「ダメだ」


弥宵の瞳から涙が溢れる


「あんたなんか……もう知らない!!大ッキライ!」


俺を突き飛ばすと弥宵は俺に背を向け、離れた

僅かに胸は痛むが、みんなを守るためだ

そう自分を奮い立たせる


まさか、何をするのも嫌な俺がこんなふうに動くなんてな…思っても見なかった


「さぁ、神崎くん。もう行けるかしら?」

「あぁ、大丈夫だ。じゃあ…悠、天谷。みんなを頼むぞ」


二人が頷いたのを見て、俺は宮苑と共に七不思議の書かれたノートを握りしめ、教室の外へと向かった
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