もう届くことはない君への愛

桜月 翠恋

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「お前に縁談が来ている」


それはいつも通りにお昼の日課である家の裏の森の散策を終えて家に帰ってきた瞬間に起きた

帰ってきてまだ落ち着いていない状態で珍しく父が話しかけてきたと思ったら、そう一言告げられた


「…あら……私に拒否権は……」

「あるとでも思っているのか?」

「いえ、確認ですわ」

「………あるわけ無いだろう。忌み子の分際で」



父の言葉に私はいつものように笑顔を浮かべる
そして極めて冷静に話を続ける


「わかりましたわ。詳しいお話は……」

「メイドにでも聞け、俺の時間をお前ごときに使わせるな」


父はそれだけ告げれば、私から目をそらし自室の方へと向かっていってしまった


私、ミュフィー・クロフォードは父に嫌われている
理由は単純明快。

私の母であるセレスティーナは、私を産んだその日に亡くなった

私が母から取り上げられたのとほぼ同時に私の母は息を引き取った

悲しみと喜びに溢れたそんな父の複雑な心を、赤子の私は粉々に砕いた

私の首筋には真っ赤な薔薇の痣が付いていたらしい

そして父は私を悪魔の子どもだと言い、私を忌み子と嫌っていた


「私は本当に悪魔の子、なのでしょうか……?」


能天気令嬢とまで呼ばれる私らしくもない事を呟いてしまう

自室へ向かう途中の窓の前に立ち、そっとドレスの胸元を広げ、首筋を見る

そこにはくっきりとタトゥーでもしているかのような真紅の薔薇の痣が浮き上がっている


「ふふっ、本当………こんな私に縁談なんて……」


父の独断で相手方は私のこの痣の事も、忌み子だと言われていることも何も知らないのかもしれない

まずは詳しく話を聞くしかないだろうと自室へと早足で向かう

自室で待っているだろうメイド長へ会いに


彼女は幼い頃から唯一、心を許せる人だった
だから早く話して、少しでも早くこの不安を取り除きたい

早足と言うより、もう廊下を走り出してしまう
早く彼女に会いたい
怖い
不安だ

そんな気持ちを振り払うように足を進める

屋敷の奥の隅にある自室の前に辿り着き、ドアを開ける

そこには探していた人が居た


「ブッドレア、今……いいかしら……?」


薄紫色の髪を靡かせブッドレアは私の方へ振り返ってくれる

彼女が私の家でメイド長をしていて、尚且つ私のお世話をしてくれているブッドレアだ

彼女は花のような綺麗な笑みを浮かべ、私の前に歩いて来た


「おかえりなさいませ、ミュフィー様。どうかなさいましたか?」

「……ブッドレア、あの、私に縁談の話が来ていると聞いたのだけれど……」

「その件……でしたか…」

「えぇ、お父様は貴方に聞け、とおっしゃって…」


先程までの笑顔と違い、彼女の表情は暗かった

元々訳あり令嬢などと噂の流れている私。

そんな私に縁談が来ていて、彼女の暗い表情…嫌でもわかるのは、相手も私と同じ【訳あり】と言うこと



「教えてくれる…?」

ブッドレアは、少しだけ悲しげに笑ったように見えた
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