無能と蔑まれ婚約破棄された私の数学は、最強の剣術でした~元婚約者が後悔した頃には、寡黙な辺境伯に世界一溺愛されています~

aozora

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 カシアンの言葉が、エララの心に温かいインクのように染み渡った。

 あの吹雪の夜から、はや数週間が過ぎていた。

 フェイランの厳しい冬は、名残惜しげに終わりを告げた。

 凍てついていた大地からは、春の胎動を告げる柔らかな緑が芽吹き始めている。

 雪解け水が小川となり、光を反射しながらきらきらと流れていた。

 領主の館の執務室。

 そこでは、大きな樫のテーブルいっぱいに広げられた羊皮紙の上を、エララの白い指が滑らかに滑っていた。

 緻密な線が織りなす設計図。

 それは彼女の思考そのものが、羊皮紙の上に写し取られたかのようだった。

 新しい水路、効率的な街路の区画整理、そして領民のための広場の幾何学的なデザイン。

 その全てが、フェイラン領の未来を形作っていた。

「この水路の勾配をあと三度、西へ調整すべきです。そうすることで、下流の農地への水流は運動エネルギーが最適化され、供給水量が約八パーセント増加します」

 エララは、精密な線の一つを指し示した。

「さらに、この地点に小さな貯水池を設けることが必須ですわ。乾季における水の供給安定性を確保するためにも」

 彼女の理路整然とした説明に、カシアンは真剣な眼差しで耳を傾けていた。

 彼の黒い瞳には、目の前の設計図に描かれた未来だけでなく、それを語るエララの横顔が映り込んでいる。

「素晴らしい……。君の頭脳は、この土地の枯れた血管に新しい血を流してくれるようだ」

 カシアンの惜しみない賞賛の言葉が、部屋に響いた。

 エララの頬は、微かに桜色に染まる。

 恋という名の未解決問題は、未だ彼女の中で解けないままだった。

 だが、その問いを前にした時の胸の高鳴りには、少しずつ慣れ始めていた。

 彼と共にいるこの場所、この時間。

 それが、自分にとって最も安定し、満たされた『座標』であることだけは、確かだった。

 この穏やかな日々が、証明のいらない公理のように、永遠に続くのだと信じていた。

 しかし。

 その静寂を切り裂いたのは、けたたましく鳴り響く警鐘の音だった。

 そして、執務室の扉を叩き壊さんばかりの、乱暴なノックがそれに続いた。

「申し上げます! カシアン様!」

 扉が勢いよく開き、一人の若い騎士が転がり込んできた。

 南の監視所から馬を飛ばしてきたのだろう。

 彼の鎧は泥と汗にまみれ、顔は青ざめていた。

「南方の領主、グレンヴィル男爵が……! 傭兵団を率い、我が領内へ侵攻を開始しました!」

 その言葉が響いた途端、一瞬にして室内の空気が凍りつく。

 グレンヴィル男爵。

 王都のゴシップにしか興味がなく、領地経営を疎かにしていると噂の、貪欲な小領主。

 フェイラン領がエララの知恵で豊かになり始めたことを妬み、その富を力ずくで奪いに来たのだろう。

「被害状況は!」

 カシアンの鋭い声が、騎士に飛ぶ。

「国境近くの村が一つ、すでに火の手に……! 敵の数はおよそ三百。傭兵崩れのならず者ばかりで、統率もなく、ただ破壊と略奪を繰り返している模様です!」

「……三百か」

 カシアンは眉根を寄せ、重い吐息を漏らした。

 フェイラン領の騎士団は精鋭揃いだ。

 しかし、その数は百五十に満たない。

 まともにぶつかれば、倍の兵力を持つ敵に押し切られる可能性が高い。

 家臣たちが色めき立ち、口々に迎撃や籠城を叫ぶ。

 その喧騒の中、エララは静かに壁に掛かったフェイラン領全土の地図の前へと歩み寄っていた。

「お待ちください」

 凛とした、しかし冷徹な響きを持つ彼女の声が、室内の喧騒を凪がせた。

「力と力でぶつかるのは、最も非効率な解ですわ」

 エララは懐から炭筆を取り出した。

 そして、地図の上に滑らかな曲線や直線を書き込み始める。

「敵は烏合の衆。目的は略奪」

 彼女の指が、地図上の特定の地点をなぞる。

「彼らの進軍経路は、最も効率的に略奪を実行でき、最も抵抗なく進める道筋……。それは、資源(利益)と移動距離(コスト)の比率が最大となる『最適経路のベクトル』に他なりません」

 三本の進軍予測ルートが、地図上に描き出された。

 それはまるで、未来を予言するかのような、確信に満ちていた。

「カシアン様。騎士団は三隊に分割し、直ちに配置すべきですわ」

 エララは澱みなく指示を出す。

「第一隊は、この『囁きの谷』へ向かうべきです。隘路となっているため、少人数で敵本隊の足を止められます」

 彼女の指が、一つ目の地点を示す。

「第二隊は、東の『迷いの森』へ。敵の別動隊がこちらの穀倉を狙う可能性が極めて高い。森の地形を利用し、ゲリラ戦で攪乱すべきですわ」

 二つ目の地点が示される。

 家臣たちは固唾を飲んで見守っていた。

「そして、カシアン様が率いる本隊は……ここですわ」

 エララの指が最後に示したのは、一見すると何もない、ただの開けた丘だった。

「ここは……?」

 訝しむ家臣の一人が、思わず声を漏らした。

 エララは静かに、しかし有無を言わさぬ口調で告げる。

「敵が二つの部隊に分断され、最も焦燥し、最も油断する一点。それが、全ての変数と定数を計算した結果、導き出された『力の均衡点』ですわ」

 彼女の灰色の瞳は、揺るぎない確信を宿していた。

「最小の力で、敵という不安定な構造体そのものを崩壊させられる、唯一の『臨界点』」

 その瞳に、恐怖も動揺もなかった。

 そこにあるのは、目の前の混沌とした事象を、美しい数式へと還元しようとする、絶対的な知性だけだった。

 カシアンは、その瞳をじっと見つめ、そして、迷いなく頷いた。

「全軍に告ぐ!」

 彼の声が、執務室に響き渡る。

「これより、我が軍の指揮はエララ様が執る! 各自、エララ様の指示された座標へ、直ちに行動を開始せよ!」

 カシアンの絶対的な信頼が、家臣たちの不安を打ち消し、新たな闘志に火をつけた。

 戦いは、エララの描いた設計図通りに進んだ。

 『囁きの谷』に誘い込まれたグレンヴィル男爵の主力部隊は、隘路からの投石と弓矢によって身動きを封じられ、無駄に消耗を重ねていった。

 谷に響くのは、敵兵の絶叫と、岩が砕ける鈍い音ばかりだった。

 『迷いの森』へ向かった別動隊は、地の利を生かしたフェイラン騎士団の奇襲に遭い、混乱の内に霧散した。

 森の奥深くで、彼らは逃げ惑うことしかできなかった。

 そして、カシアン率いる本隊が待ち受ける丘に現れたのは、分断され、疲弊しきった敵の残党だった。

 彼らの目に映るのは、絶望だけだった。

「突撃ィッ!」

 カシアンの号令一下、丘の上から駆け下りるフェイラン騎士団の勢いは、もはや崩れかけたダムを打ち破る濁流のようだった。

 戦況は、完全にフェイラン領が掌握していた。

 エララは、カシアンが用意してくれた後方の小さな天幕で、戦場から送られてくる報告を元に、次なる一手を冷静に分析していた。

 戦いは、もうすぐ終わる。

 彼女の計算に、間違いはなかった。

 その、はずだった。

「……なるほどな。あの女狐が、この厄介な作戦の立案者か」

 突如、背後から響いた下卑た声に、エララは全身を凍り付かせた。

 ゆっくりと振り返る。

 そこには、血と泥に汚れた鎧を纏い、巨大な両刃の剣を肩に担いだ、熊のような大男が立っていた。

 グレンヴィル男爵に雇われた傭兵団長、“赤髭”のボルグ。

 ボルグは本隊を囮に使い、その混乱に乗じて自ら少数の精鋭のみを率いていた。

 最も手薄になったであろう指揮所へ、血路を開くように強行突破を試みたのだ。

 彼の巨体と大剣は、奇襲の障害どころか、むしろ敵兵を蹴散らす武器そのものだった。

 エララの計算には、敵将の『個人的な功名心』という、非論理的な変数が含まれていなかった。

「噂の『賢姫』様のお顔を拝みに来たぜ」

 ボルグが、獰猛な笑みを浮かべた。

「その綺麗な頭脳を、俺様の剣でかち割って、最高の土産にしてやるよ!」

 護衛の騎士たちが、咄嗟にエララの前に飛び出す。

 しかし、ボルグが振るう大剣の一薙ぎで、護衛の騎士たちは紙切れのように吹き飛ばされた。

 その肉体が、軽々と宙を舞う。

 絶対的な質量。

 絶対的な暴力。

 エララの頭脳が、目の前の脅威を解析しようと回転する。

 相手の重心、剣の軌道、力のベクトル……。

 しかし、頭では理解できても、死の匂いをまとった圧倒的な殺気を前に、体は鉛のように動かなかった。

 ボルグが、勝利を確信して大剣を振り上げる。

 死。

 その単語が、エララの思考を白く塗りつぶした。

 その瞬間だった。

 銀色の閃光が、エララの視界を横切った。

 甲高い金属音と共に、火花が散る。

 エララの目の前には、黒いマントを翻し、彼女を守るように立つ、カシアンの背中があった。

「……君に、指一本触れさせるものか」

 カシアンは、ボルグの重い一撃を、その身に持つ長剣一本で受け止めていた。

 しかし、体格差は歴然だった。

 彼の腕が、足が、ギリギリと悲鳴を上げているのがわかった。

「辺境伯様のお出ましか! ちょうどいい!」

 ボルグが獰猛に吼え、さらに力を込める。

 カシアンの体勢が、ぐらりと揺らいだ。

 その一瞬の隙を、獣は見逃さなかった。

 ボルグは一度大剣を引くと、常人には反応不可能な速度で、がら空きになったカシアンの左腕めがけて二の太刀を繰り出した。

「ぐっ……!」

 肉を断ち、骨を削る、鈍い音。

 カシアンの左腕から、鮮血が噴水のように吹き上がった。

 真紅の飛沫が、エララの白い頬を、ドレスを、そして彼女の世界を、まだらに染め上げていく。

 カシアンは深手を負いながらも、決してエララの前から退かなかった。

 彼は痛みに顔を歪め、脂汗を滲ませながらも、その黒い瞳で、背後にいるエララだけを案じていた。

「カシアン様……っ!」

 エララの口から、悲鳴とも呼べぬ声が漏れた。

 守られている。

 この人が、私という『座標』を、その命を賭して守っている。

「ははっ! 女を守って死ぬか、辺境伯! 立派な最期だぜ!」

 勝ち誇ったボルグが、とどめを刺さんと、三度、大剣を振り上げた。

 その時。

 エララの灰色の瞳から、全ての光が消えた。

 温もりも、戸惑いも、恐怖も、全てが零度の静寂に沈んでいく。

 カシアンの血。

 カシアンの痛み。

 そして、それを嘲笑う、不合理な暴力。

 許さない。

 入力される全ての変数が、彼女の中で、ただ一つの解を導き出した。

 それは『排除』という名の、最も単純で、最も冷徹な方程式。

 エララの白い指が、腰に佩いたフェイラン鋼の細身の剣の柄を、静かに、しかし、決して離さないという決意を込めて、強く、強く握りしめた。
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