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夜明け前の静寂が、工房を支配していた。
カイウスとの通信が途絶えた後も、「遠見の水晶板」は仄かな光を放ち続け、エリアーナの紅潮した頬を照らし出している。
『私の……未来の公妃殿下』
その響きは、耳の奥で何度も反響した。命令でも、予言でもない。カイウスの、熱を帯びた、確かな意志が宿っていた。
胸の鼓動は、まだ荒々しく脈打っていた。自分が、この国の公妃となる?
そんな未来を、夢想したことすら一度もなかった。王太子妃教育を受けていた頃とは、全く異質の衝撃が、全身を震わせる。
あの時は、定められた義務だった。だが、今は――。
「……へっ、やるじゃねえか、公爵様よ。これで、お嬢様も腹を括るだろうよ」
沈黙を破ったのは、腕を組み、成り行きを見守っていたギデオンだった。
彼の口元には、普段の頑固な顔つきからは想像もつかない、楽しげな笑みが揺蕩っている。
その一言が合図だったかのように、固唾を飲んでいた若い技術者たちが、わっと沸いた。
「エリアーナ様、おめでとうございます!」
「公爵様の本気、見せていただきました!」
「すごい……歴史的瞬間に立ち会った気分です!」
祝福と、いくらかの揶揄を帯びた声が飛び交う。エリアーナはますます頬を朱に染め、俯くことしかできなかった。
「ま、まだ、そのような……!」
しどろもどろに否定しようとするが、誰一人として本気にする者はいなかった。
彼らは皆、この数ヶ月、カイウスがエリアーナをどれほど深く想い、彼女の研究にどれほどの情熱を注いできたかを知っていたのだ。
それは、もはや単なる領主としての投資ではなかった。一人の男が、愛する女に向ける、深く、揺るぎない信頼の証だった。
「お嬢様が公妃殿下になられりゃあ、この工房も安泰だな。国の予算が天井知らずで流れ込んでくるってもんだ」
ギデオンがにやりと笑いながら言うと、皆がどっと笑った。
工房の空気が、一気に和やかになる。
エリアーナは、仲間たちの温かい視線に包まれながら、胸にじんわりと広がる幸福感に目を細める。
追放されたあの日には、想像だにしなかった光景だった。
自分を信じ、共に未来を創ろうとしてくれる仲間がいる。
そして、自分の価値を誰よりも深く理解し、隣を歩もうとしてくれる人がいる。
ふと、窓の外に目をやる。東の空の縁が、瑠璃色から白銀へと変わり始めていた。夜の闇が、新しい光に溶けていく。
「さあ、皆さん」
エリアーナは、まだ熱を帯びる頬を両手で押さえ、くるりと仲間たちに向き直った。
その紫色の瞳に、もはや迷いの影はなかった。
そこに宿るのは、これから成し遂げるべきことへの、静謐な、しかし炎のように燃える決意。
その声は凛として、美しく響き渡る。
その瞳は、まさに世界に新たな光をもたらす者の、揺るぎない覚悟を宿していた。
◇
数日後、ヴァルヘイム公国の首都ヴァイスブルクは、未だかつてないほどの熱気に包まれていた。
大陸中の王侯貴族、大商人、ギルドの長たちが、若き公爵カイウス・エトール・ヴァルヘイムからの招待状を手に、この地に集結したのだ。
招待状に記された文言は、極めて簡潔でありながら、傲慢とすら取れるものだった。
『我が国にて、世界の新たな夜明けを披露する。歴史の転換点に立ち会う栄誉を、諸君らに与えよう』
これを受け取った者たちの反応は様々だった。
「小国ヴァルヘイムの若造が、何を思い上がったか」
「技術立国とは聞くが、一体どんな見世物だというのだ」
「グランツ王国との緊張が高まる中、これは何かの牽制か?」
懐疑、好奇、そして警戒。様々な思惑が渦巻く。
それでも大陸の有力者たちが足を運んだのは、カイウス・ヴァルヘイムという男の存在を、誰も無視できなかったからだ。
若くして公位を継ぎ、旧弊な貴族たちを粛清し、瞬く間に国を立て直した冷徹な手腕。
彼の行動には、常に合理的な計算と、未来を見据えた明確なビジョンがあった。
そんな男が、これほど大々的に、そして挑発的に何かを披露するというのだ。見過ごせるはずがなかった。
そして、その招待客の中には、ひときわ不機嫌な面持ちでヴァイスブルクの城に到着した一団がいた。グランツ王国の王太子、アルフォンス・ルキウス・グランツとその側近たちである。
「……くだらん。辺境の小国が、悪趣味な芝居を打ちおって」
豪奢な馬車から降り立ったアルフォンスは、周囲の喧騒を睥睨しながら吐き捨てた。
金色の髪は陽光を弾き、その容貌は相変わらず人々を魅了する。だが、彼の碧眼は、まるで高慢な濁流を湛えているかのように、苛立ちと傲慢さで淀んでいた。
彼にとって、この招待は屈辱以外の何物でもなかった。
先日、国境付近で小競り合いを起こし、カイウスにエリアーナの引き渡しを要求したものの、外交的に見事な手腕でいなされたばかりだ。
そんな相手からの、見下したような招待状。断ることは、グランツ王国の敗北を認めることになる。
故に、彼はこうして不本意ながらも足を運んだのだ。
まさしく、それがカイウスの狙いだった。
アルフォンスの傲慢さを熟知した上で、公爵は周到に布石を打った。招待状の挑発的な文言、そして断れば国威を損なう状況を作り出し、彼をこの場へ誘い込んだのだ。
全ては、世界が転換するその瞬間を、最も近くで『見せつける』ための、緻密に計算された舞台装置であった。
「一体、何を見せるつもりなのだ、あの黒衣の公爵は。せいぜいが、少しばかり精巧な絡繰り人形か、威力の高い魔導砲といったところだろう」
側近の言葉に、アルフォンスは鼻で笑った。
「どちらにせよ、我がグランツの伝統と、長年培ってきた軍事力の前にあっては、児戯に等しい。カイウスめ、せいぜい我々を楽しませてくれることだな」
彼には、自分がこれから目の当たりにするものが、自らの価値観、長年築き上げてきた世界の全てを根底から覆す、まさに『天変地異』と呼ぶべきものであることなど、微塵も想像できなかった。
ましてや、その革命の中心に、自分が「空想癖の役立たず」と断じ、無慈悲に切り捨てた令嬢がいることなど、知る由もなかった。
デモンストレーションが行われるのは、城の最も大きな大広間だった。
天井には巨大な水晶のシャンデリアが輝き、磨き上げられた床は鏡のように人々の姿を映している。
エリアーナは、控え室の窓から、続々と集まってくる貴族たちの姿を眺めていた。
その中には、見知った顔もいくつかある。父や母と共に王宮の夜会に出席した際に、言葉を交わした者たちだ。
彼らは今、自分のことをどう思っているのだろうか。国を追われた、哀れな令嬢だと?
「……緊張しているか」
不意に、背後から落ち着いた声が響いた。振り返るまでもない。この数ヶ月で、すっかり聴き慣れた、心に安らぎをもたらす声だった。
「カイウス様……」
そこに立っていたのは、漆黒の軍服に身を包んだカイウスだった。
金の刺繍が施された軍服は彼の威厳を際立たせ、いつも以上に精悍に見える。
彼はエリアーナの元へゆっくりと歩み寄ると、その紫色の瞳をじっと見つめた。
「少し、怖くなったのです。もし、これが誰にも理解されなかったら……。もし、また、空想だと笑われたら……」
弱音が、思わず口から零れ落ちた。
カイウスは何も言わず、エリアーナの細い肩にそっと手を置く。
その手のひらから伝わる温もりが、彼女の胸の奥に澱んでいた不安を、ゆっくりと溶かしていくようだった。
「エリアーナ。君はこれから、この世界の誰も見たことのないものを見せるのだ。理解されないのが当然だ。笑う者がいるのも当然だ。だが、それは問題ではない」
カイウスの金の瞳が、揺るぎない真剣な光を宿す。
「重要なのは、それが『真実』であることだ。君が創り上げたものは、紛れもない現実だ。誰が認めずとも、その価値は些かも揺るがない」
彼はそう言うと、エリアーナの身に着けているドレスに視線を落とした。
夜空を思わせる深い藍色のシルクに、銀糸で星々が刺繍された美しいドレス。カイウスが彼女のために特別に誂えさせたものだった。
「とても、よく似合っている。君の知性と同じくらい、輝いている」
予期せぬ言葉に、エリアーナの頬が染まる。
カイウスは悪戯っぽく口の端を上げると、彼女の前に跪き、その手を取った。まるで騎士が姫に忠誠を誓うように。
「君はただ、君が創り上げた真実を、世界に示すだけでいい。その後のことは、全て私が引き受ける。君を嘲笑う舌は私が抜き、君を脅かす手は私が断つ。だから、何も恐れることはない」
「カイウス様……」
「私の隣で、堂々と胸を張っていればいい。未来のヴァルヘイム公妃殿下」
囁かれた言葉に、エリアーナは一瞬、息を呑んだ。しかし、もううろたえはしない。
彼女はこくりと頷くと、カイウスの手を強く握り返した。
「はい」
その一言に、全ての覚悟が込められていた。
やがて、大広間の喧騒が静まり、全ての視線が壇上へと注がれる。
ゆっくりと壇上に上がったカイウスは、集まった大陸中の権力者たちを一瞥し、静かに口を開いた。
「本日、多忙の中、我がヴァルヘイムに足を運んでいただいたこと、感謝する」
その声はよく通り、絶対的な自信に満ち溢れていた。
「諸君らを招いた理由は、招待状に記した通りだ。今日、この場所で、世界は新たな時代へと足を踏み入れる。これまでの常識、価値観、国家間のパワーバランス、その全てが過去のものとなるだろう」
広間がざわめく。あまりに尊大な物言いに、不快感を露わにする者も少なくない。アルフォンスは腕を組み、冷笑を浮かべていた。
「では、紹介しよう。新たな時代を拓く、天命の担い手を」
カイウスが手を差し伸べた先から、エリアーナが静かに姿を現した。
その瞬間、広間は先ほどとは比較にならないほどのどよめきに包まれた。
「あれは……クレスメント侯爵家の……」
「グランツ王国を追放された、あの令嬢ではないか!?」
「なぜ彼女がここに? カイウス公は正気か!」
アルフォンスは、目を見開いたまま硬直していた。
エリアーナ? なぜ、あいつがここにいる?
追放した時よりも。いや、王宮にいた頃の、どの輝かしい瞬間よりも。
彼女は美しく、そして堂々として見えた。まるで、新たな生を得たかのように。
その隣にはカイウスが立ち、絶対的な庇護者として彼女を守っている。
一体、これはどういうことだ。アルフォンスの頭の中を、混乱の渦が埋め尽くす。
エリアーナは、浴びせられる好奇と侮蔑の視線に臆することなく、壇上の中央に進み出た。
そして、深々と一礼する。
「ご紹介に預かりました、エリアーナ・フォン・クレスメントと申します」
落ち着いた、澄んだ声だった。
「本日は皆様に、私が天より授かった知識――『遠見の水晶板』をお披露目いたします」
彼女は、侍従が運んできた二つの黒い板を手に取った。
磨き上げられた黒曜石のようにも見える、何の変哲もない薄い板だ。
「これは『天命石』を核とし、『流電』の力を利用して、遠く離れた場所の光景と音声を、瞬時に伝え合うことができる道具です」
広間から、失笑が漏れた。
「光で話す石、か。聞いたことがあるぞ。王太子殿下が婚約を破棄された原因だとか」
「やはり戯言だったな。カイウス公も、とうとう狂ったか」
「女の色香に迷わされたか。情けない」
アルフォンスは、その声を聞いて僅かに安堵した。
そうだ、やはりあれは戯言なのだ。自分の判断は間違っていなかった。
エリアーナはただの空想狂いで、カイウスはそれに踊らされている愚か者に過ぎない。
だが、エリアーナの表情は変わらなかった。
彼女は静かに、壇上に置かれた一つの水晶板に触れる。
「では、ご覧ください。世界の、夜明けを」
彼女が指先で板の表面をなぞると、信じられないことが起こった。
それまでただの黒い石板にしか見えなかったものが、内側から淡い光を発し始めたのだ。
光は瞬く間に板全体に広がり、やがて、そこに一つの映像を映し出した。
広間が、水を打ったように静まり返る。
水晶板に映っていたのは、見慣れない工房の内部だった。そして、画面の中央には、頑固そうな顔つきのドワーフが一人、腕を組んで立っている。
貴族たちが息を呑む。
魔法の水晶玉を使えば、遠くの景色をぼんやりと映すことはできる。だが、これほど鮮明に、まるで窓の向こうを見ているかのように映し出すことなど、不可能だ。それは魔術の域を超えていた。
カイウスが、その静寂を破るように、ゆっくりと口を開いた。
「諸君。今、君たちの目の前に映し出されているのは、ここから早馬で三日を要する、北の山岳地帯にある我がヴァルヘイムの工房だ」
ざわめきが、再び広間を揺らした。
そして、次の瞬間、彼らの常識は完全に破壊された。
『――聞こえるか、お嬢様! こっちは準備万端だぜ!』
水晶板から、ドワーフのしゃがれた声が、はっきりと響き渡ったのだ。
映像だけではない。音声も、だ。
数百キロは離れているであろう場所から、遅延もなく、リアルタイムで。
「ば、馬鹿な……」
誰かが、呻くように呟いた。
「これは……何の魔術だ……いや、魔術ではない……!」
アルフォンスは、全身を刺し貫くような悪寒に襲われた。
これは、既存の魔術とは全く異なる、異質な理(ことわり)に基づく技術だ。魔術とは、マナを操作し、自然の摂理を捻じ曲げるもの。
だが、目の前の現象は、まるで世界に新たな法則が書き加えられたかのように、完璧に、そして平然とそこに現出していた。
彼のプライド。彼が信じてきた世界の全てが、ガラガラと音を立てて崩れ去る。
それは「理解不能」という驚きを超え、「存在を許してはならないもの」を目の当たりにしたような、根源的な知的パニックだった。
エリアーナは、壇上の水晶板に向かって微笑みかける。
「はい、ギデオン。こちらも問題ありません。皆様にご挨拶を」
『おう! 大陸中の偉いさん方! これがヴァルヘイムの、いや、エリアーナお嬢様が創り出した奇跡だ! 目に焼き付けやがれ!』
映像の中のギデオンが、にかりと笑って手を振る。その背後では、若い技術者たちが歓声を上げていた。
もはや、誰も言葉を発することができなかった。貴族たちは、目の前で起きている奇跡に、ただ呆然と立ち尽くす。
早馬で数日かかる距離の相手と、顔を見ながら、今まさに会話をしている。そんなこと、神話の中にしか存在しないはずだった。
アルフォンスは、自分の席で全身が氷漬けになるのを感じていた。
流れる雷。光で話す石。
かつてエリアーナが、その瞳を輝かせながら彼に語った言葉が、脳内で炸裂する雷鳴のように轟いた。
あれは、空想ではなかった。戯言ではなかった。
自分が『空想癖の役立たず』と断じ、無慈悲に切り捨てた令嬢が語っていたのは、世界の理を根底から覆す、本物の『天命』だったのだ。
顔から、急速に血の気が失せていく。
自分が捨てたのは、ただの女ではない。この大陸の未来そのもの。
そして、その未来を、あの女と共に創り上げる「栄誉」までも。
彼女の隣に立ち、世界の夜明けを告げるという、誰よりも眩い場所を、自らの手で投げ捨てていたのだ。
愚かだったのは、空想に耽溺していたのは、エリアーナではない。
目の前の真実を『児戯』と断じ、耳を塞いだ、自分自身だったのだ。
どれほど計り知れない価値を持つ至宝を、自らの手でドブに投げ捨てたのか。
そして、その至宝を、誰よりも忌み嫌うはずのカイウス・ヴァルヘイムが、満面の笑みで抱きしめているという現実。
彼の脳裏に、かつてエリアーナが熱弁していた『流電』の原理が、今さら鮮明に蘇る。
理解できなかったのではない。理解しようとしなかったのだ。傲慢が、真実から目を背けさせたのだ。
遅れて、広間に嵐のような拍手と喝采が湧き起こった。驚愕は、やがて怒濤の熱狂へと変わる。
ある将軍は、この技術を軍事転用する可能性に即座に気づき、その顔に野心的な光を宿した。
大陸屈指の大商人は、この新たな流通手段がもたらすであろう莫大な富を計算し始め、恍惚とした笑みを浮かべる。
そして、ライバル国の使者たちは、自国の劣勢とヴァルヘイムの圧倒的な優位を悟り、恐怖で顔を引きつらせた。
誰もがこの新技術の持つ無限の可能性――軍事、商業、政治、その全てを革新する力を悟ったのだ。
その熱狂の只中で、カイウスが誇らしげにエリアーナの肩を抱き寄せた。
「これが、新しい時代の幕開けだ」
彼の宣言が、旧時代の終わりの狼煙のように、世界に響き渡った。
エリアーナは、自分を信じ続けてくれた唯一無二の男性の隣で、静かに微笑んでいた。
ただ一人、アルフォンスだけが、その熱狂の輪から置き去りにされ、顔面蒼白のまま、忘れ去られた過去の遺物のように、立ち尽くしていた。
カイウスとの通信が途絶えた後も、「遠見の水晶板」は仄かな光を放ち続け、エリアーナの紅潮した頬を照らし出している。
『私の……未来の公妃殿下』
その響きは、耳の奥で何度も反響した。命令でも、予言でもない。カイウスの、熱を帯びた、確かな意志が宿っていた。
胸の鼓動は、まだ荒々しく脈打っていた。自分が、この国の公妃となる?
そんな未来を、夢想したことすら一度もなかった。王太子妃教育を受けていた頃とは、全く異質の衝撃が、全身を震わせる。
あの時は、定められた義務だった。だが、今は――。
「……へっ、やるじゃねえか、公爵様よ。これで、お嬢様も腹を括るだろうよ」
沈黙を破ったのは、腕を組み、成り行きを見守っていたギデオンだった。
彼の口元には、普段の頑固な顔つきからは想像もつかない、楽しげな笑みが揺蕩っている。
その一言が合図だったかのように、固唾を飲んでいた若い技術者たちが、わっと沸いた。
「エリアーナ様、おめでとうございます!」
「公爵様の本気、見せていただきました!」
「すごい……歴史的瞬間に立ち会った気分です!」
祝福と、いくらかの揶揄を帯びた声が飛び交う。エリアーナはますます頬を朱に染め、俯くことしかできなかった。
「ま、まだ、そのような……!」
しどろもどろに否定しようとするが、誰一人として本気にする者はいなかった。
彼らは皆、この数ヶ月、カイウスがエリアーナをどれほど深く想い、彼女の研究にどれほどの情熱を注いできたかを知っていたのだ。
それは、もはや単なる領主としての投資ではなかった。一人の男が、愛する女に向ける、深く、揺るぎない信頼の証だった。
「お嬢様が公妃殿下になられりゃあ、この工房も安泰だな。国の予算が天井知らずで流れ込んでくるってもんだ」
ギデオンがにやりと笑いながら言うと、皆がどっと笑った。
工房の空気が、一気に和やかになる。
エリアーナは、仲間たちの温かい視線に包まれながら、胸にじんわりと広がる幸福感に目を細める。
追放されたあの日には、想像だにしなかった光景だった。
自分を信じ、共に未来を創ろうとしてくれる仲間がいる。
そして、自分の価値を誰よりも深く理解し、隣を歩もうとしてくれる人がいる。
ふと、窓の外に目をやる。東の空の縁が、瑠璃色から白銀へと変わり始めていた。夜の闇が、新しい光に溶けていく。
「さあ、皆さん」
エリアーナは、まだ熱を帯びる頬を両手で押さえ、くるりと仲間たちに向き直った。
その紫色の瞳に、もはや迷いの影はなかった。
そこに宿るのは、これから成し遂げるべきことへの、静謐な、しかし炎のように燃える決意。
その声は凛として、美しく響き渡る。
その瞳は、まさに世界に新たな光をもたらす者の、揺るぎない覚悟を宿していた。
◇
数日後、ヴァルヘイム公国の首都ヴァイスブルクは、未だかつてないほどの熱気に包まれていた。
大陸中の王侯貴族、大商人、ギルドの長たちが、若き公爵カイウス・エトール・ヴァルヘイムからの招待状を手に、この地に集結したのだ。
招待状に記された文言は、極めて簡潔でありながら、傲慢とすら取れるものだった。
『我が国にて、世界の新たな夜明けを披露する。歴史の転換点に立ち会う栄誉を、諸君らに与えよう』
これを受け取った者たちの反応は様々だった。
「小国ヴァルヘイムの若造が、何を思い上がったか」
「技術立国とは聞くが、一体どんな見世物だというのだ」
「グランツ王国との緊張が高まる中、これは何かの牽制か?」
懐疑、好奇、そして警戒。様々な思惑が渦巻く。
それでも大陸の有力者たちが足を運んだのは、カイウス・ヴァルヘイムという男の存在を、誰も無視できなかったからだ。
若くして公位を継ぎ、旧弊な貴族たちを粛清し、瞬く間に国を立て直した冷徹な手腕。
彼の行動には、常に合理的な計算と、未来を見据えた明確なビジョンがあった。
そんな男が、これほど大々的に、そして挑発的に何かを披露するというのだ。見過ごせるはずがなかった。
そして、その招待客の中には、ひときわ不機嫌な面持ちでヴァイスブルクの城に到着した一団がいた。グランツ王国の王太子、アルフォンス・ルキウス・グランツとその側近たちである。
「……くだらん。辺境の小国が、悪趣味な芝居を打ちおって」
豪奢な馬車から降り立ったアルフォンスは、周囲の喧騒を睥睨しながら吐き捨てた。
金色の髪は陽光を弾き、その容貌は相変わらず人々を魅了する。だが、彼の碧眼は、まるで高慢な濁流を湛えているかのように、苛立ちと傲慢さで淀んでいた。
彼にとって、この招待は屈辱以外の何物でもなかった。
先日、国境付近で小競り合いを起こし、カイウスにエリアーナの引き渡しを要求したものの、外交的に見事な手腕でいなされたばかりだ。
そんな相手からの、見下したような招待状。断ることは、グランツ王国の敗北を認めることになる。
故に、彼はこうして不本意ながらも足を運んだのだ。
まさしく、それがカイウスの狙いだった。
アルフォンスの傲慢さを熟知した上で、公爵は周到に布石を打った。招待状の挑発的な文言、そして断れば国威を損なう状況を作り出し、彼をこの場へ誘い込んだのだ。
全ては、世界が転換するその瞬間を、最も近くで『見せつける』ための、緻密に計算された舞台装置であった。
「一体、何を見せるつもりなのだ、あの黒衣の公爵は。せいぜいが、少しばかり精巧な絡繰り人形か、威力の高い魔導砲といったところだろう」
側近の言葉に、アルフォンスは鼻で笑った。
「どちらにせよ、我がグランツの伝統と、長年培ってきた軍事力の前にあっては、児戯に等しい。カイウスめ、せいぜい我々を楽しませてくれることだな」
彼には、自分がこれから目の当たりにするものが、自らの価値観、長年築き上げてきた世界の全てを根底から覆す、まさに『天変地異』と呼ぶべきものであることなど、微塵も想像できなかった。
ましてや、その革命の中心に、自分が「空想癖の役立たず」と断じ、無慈悲に切り捨てた令嬢がいることなど、知る由もなかった。
デモンストレーションが行われるのは、城の最も大きな大広間だった。
天井には巨大な水晶のシャンデリアが輝き、磨き上げられた床は鏡のように人々の姿を映している。
エリアーナは、控え室の窓から、続々と集まってくる貴族たちの姿を眺めていた。
その中には、見知った顔もいくつかある。父や母と共に王宮の夜会に出席した際に、言葉を交わした者たちだ。
彼らは今、自分のことをどう思っているのだろうか。国を追われた、哀れな令嬢だと?
「……緊張しているか」
不意に、背後から落ち着いた声が響いた。振り返るまでもない。この数ヶ月で、すっかり聴き慣れた、心に安らぎをもたらす声だった。
「カイウス様……」
そこに立っていたのは、漆黒の軍服に身を包んだカイウスだった。
金の刺繍が施された軍服は彼の威厳を際立たせ、いつも以上に精悍に見える。
彼はエリアーナの元へゆっくりと歩み寄ると、その紫色の瞳をじっと見つめた。
「少し、怖くなったのです。もし、これが誰にも理解されなかったら……。もし、また、空想だと笑われたら……」
弱音が、思わず口から零れ落ちた。
カイウスは何も言わず、エリアーナの細い肩にそっと手を置く。
その手のひらから伝わる温もりが、彼女の胸の奥に澱んでいた不安を、ゆっくりと溶かしていくようだった。
「エリアーナ。君はこれから、この世界の誰も見たことのないものを見せるのだ。理解されないのが当然だ。笑う者がいるのも当然だ。だが、それは問題ではない」
カイウスの金の瞳が、揺るぎない真剣な光を宿す。
「重要なのは、それが『真実』であることだ。君が創り上げたものは、紛れもない現実だ。誰が認めずとも、その価値は些かも揺るがない」
彼はそう言うと、エリアーナの身に着けているドレスに視線を落とした。
夜空を思わせる深い藍色のシルクに、銀糸で星々が刺繍された美しいドレス。カイウスが彼女のために特別に誂えさせたものだった。
「とても、よく似合っている。君の知性と同じくらい、輝いている」
予期せぬ言葉に、エリアーナの頬が染まる。
カイウスは悪戯っぽく口の端を上げると、彼女の前に跪き、その手を取った。まるで騎士が姫に忠誠を誓うように。
「君はただ、君が創り上げた真実を、世界に示すだけでいい。その後のことは、全て私が引き受ける。君を嘲笑う舌は私が抜き、君を脅かす手は私が断つ。だから、何も恐れることはない」
「カイウス様……」
「私の隣で、堂々と胸を張っていればいい。未来のヴァルヘイム公妃殿下」
囁かれた言葉に、エリアーナは一瞬、息を呑んだ。しかし、もううろたえはしない。
彼女はこくりと頷くと、カイウスの手を強く握り返した。
「はい」
その一言に、全ての覚悟が込められていた。
やがて、大広間の喧騒が静まり、全ての視線が壇上へと注がれる。
ゆっくりと壇上に上がったカイウスは、集まった大陸中の権力者たちを一瞥し、静かに口を開いた。
「本日、多忙の中、我がヴァルヘイムに足を運んでいただいたこと、感謝する」
その声はよく通り、絶対的な自信に満ち溢れていた。
「諸君らを招いた理由は、招待状に記した通りだ。今日、この場所で、世界は新たな時代へと足を踏み入れる。これまでの常識、価値観、国家間のパワーバランス、その全てが過去のものとなるだろう」
広間がざわめく。あまりに尊大な物言いに、不快感を露わにする者も少なくない。アルフォンスは腕を組み、冷笑を浮かべていた。
「では、紹介しよう。新たな時代を拓く、天命の担い手を」
カイウスが手を差し伸べた先から、エリアーナが静かに姿を現した。
その瞬間、広間は先ほどとは比較にならないほどのどよめきに包まれた。
「あれは……クレスメント侯爵家の……」
「グランツ王国を追放された、あの令嬢ではないか!?」
「なぜ彼女がここに? カイウス公は正気か!」
アルフォンスは、目を見開いたまま硬直していた。
エリアーナ? なぜ、あいつがここにいる?
追放した時よりも。いや、王宮にいた頃の、どの輝かしい瞬間よりも。
彼女は美しく、そして堂々として見えた。まるで、新たな生を得たかのように。
その隣にはカイウスが立ち、絶対的な庇護者として彼女を守っている。
一体、これはどういうことだ。アルフォンスの頭の中を、混乱の渦が埋め尽くす。
エリアーナは、浴びせられる好奇と侮蔑の視線に臆することなく、壇上の中央に進み出た。
そして、深々と一礼する。
「ご紹介に預かりました、エリアーナ・フォン・クレスメントと申します」
落ち着いた、澄んだ声だった。
「本日は皆様に、私が天より授かった知識――『遠見の水晶板』をお披露目いたします」
彼女は、侍従が運んできた二つの黒い板を手に取った。
磨き上げられた黒曜石のようにも見える、何の変哲もない薄い板だ。
「これは『天命石』を核とし、『流電』の力を利用して、遠く離れた場所の光景と音声を、瞬時に伝え合うことができる道具です」
広間から、失笑が漏れた。
「光で話す石、か。聞いたことがあるぞ。王太子殿下が婚約を破棄された原因だとか」
「やはり戯言だったな。カイウス公も、とうとう狂ったか」
「女の色香に迷わされたか。情けない」
アルフォンスは、その声を聞いて僅かに安堵した。
そうだ、やはりあれは戯言なのだ。自分の判断は間違っていなかった。
エリアーナはただの空想狂いで、カイウスはそれに踊らされている愚か者に過ぎない。
だが、エリアーナの表情は変わらなかった。
彼女は静かに、壇上に置かれた一つの水晶板に触れる。
「では、ご覧ください。世界の、夜明けを」
彼女が指先で板の表面をなぞると、信じられないことが起こった。
それまでただの黒い石板にしか見えなかったものが、内側から淡い光を発し始めたのだ。
光は瞬く間に板全体に広がり、やがて、そこに一つの映像を映し出した。
広間が、水を打ったように静まり返る。
水晶板に映っていたのは、見慣れない工房の内部だった。そして、画面の中央には、頑固そうな顔つきのドワーフが一人、腕を組んで立っている。
貴族たちが息を呑む。
魔法の水晶玉を使えば、遠くの景色をぼんやりと映すことはできる。だが、これほど鮮明に、まるで窓の向こうを見ているかのように映し出すことなど、不可能だ。それは魔術の域を超えていた。
カイウスが、その静寂を破るように、ゆっくりと口を開いた。
「諸君。今、君たちの目の前に映し出されているのは、ここから早馬で三日を要する、北の山岳地帯にある我がヴァルヘイムの工房だ」
ざわめきが、再び広間を揺らした。
そして、次の瞬間、彼らの常識は完全に破壊された。
『――聞こえるか、お嬢様! こっちは準備万端だぜ!』
水晶板から、ドワーフのしゃがれた声が、はっきりと響き渡ったのだ。
映像だけではない。音声も、だ。
数百キロは離れているであろう場所から、遅延もなく、リアルタイムで。
「ば、馬鹿な……」
誰かが、呻くように呟いた。
「これは……何の魔術だ……いや、魔術ではない……!」
アルフォンスは、全身を刺し貫くような悪寒に襲われた。
これは、既存の魔術とは全く異なる、異質な理(ことわり)に基づく技術だ。魔術とは、マナを操作し、自然の摂理を捻じ曲げるもの。
だが、目の前の現象は、まるで世界に新たな法則が書き加えられたかのように、完璧に、そして平然とそこに現出していた。
彼のプライド。彼が信じてきた世界の全てが、ガラガラと音を立てて崩れ去る。
それは「理解不能」という驚きを超え、「存在を許してはならないもの」を目の当たりにしたような、根源的な知的パニックだった。
エリアーナは、壇上の水晶板に向かって微笑みかける。
「はい、ギデオン。こちらも問題ありません。皆様にご挨拶を」
『おう! 大陸中の偉いさん方! これがヴァルヘイムの、いや、エリアーナお嬢様が創り出した奇跡だ! 目に焼き付けやがれ!』
映像の中のギデオンが、にかりと笑って手を振る。その背後では、若い技術者たちが歓声を上げていた。
もはや、誰も言葉を発することができなかった。貴族たちは、目の前で起きている奇跡に、ただ呆然と立ち尽くす。
早馬で数日かかる距離の相手と、顔を見ながら、今まさに会話をしている。そんなこと、神話の中にしか存在しないはずだった。
アルフォンスは、自分の席で全身が氷漬けになるのを感じていた。
流れる雷。光で話す石。
かつてエリアーナが、その瞳を輝かせながら彼に語った言葉が、脳内で炸裂する雷鳴のように轟いた。
あれは、空想ではなかった。戯言ではなかった。
自分が『空想癖の役立たず』と断じ、無慈悲に切り捨てた令嬢が語っていたのは、世界の理を根底から覆す、本物の『天命』だったのだ。
顔から、急速に血の気が失せていく。
自分が捨てたのは、ただの女ではない。この大陸の未来そのもの。
そして、その未来を、あの女と共に創り上げる「栄誉」までも。
彼女の隣に立ち、世界の夜明けを告げるという、誰よりも眩い場所を、自らの手で投げ捨てていたのだ。
愚かだったのは、空想に耽溺していたのは、エリアーナではない。
目の前の真実を『児戯』と断じ、耳を塞いだ、自分自身だったのだ。
どれほど計り知れない価値を持つ至宝を、自らの手でドブに投げ捨てたのか。
そして、その至宝を、誰よりも忌み嫌うはずのカイウス・ヴァルヘイムが、満面の笑みで抱きしめているという現実。
彼の脳裏に、かつてエリアーナが熱弁していた『流電』の原理が、今さら鮮明に蘇る。
理解できなかったのではない。理解しようとしなかったのだ。傲慢が、真実から目を背けさせたのだ。
遅れて、広間に嵐のような拍手と喝采が湧き起こった。驚愕は、やがて怒濤の熱狂へと変わる。
ある将軍は、この技術を軍事転用する可能性に即座に気づき、その顔に野心的な光を宿した。
大陸屈指の大商人は、この新たな流通手段がもたらすであろう莫大な富を計算し始め、恍惚とした笑みを浮かべる。
そして、ライバル国の使者たちは、自国の劣勢とヴァルヘイムの圧倒的な優位を悟り、恐怖で顔を引きつらせた。
誰もがこの新技術の持つ無限の可能性――軍事、商業、政治、その全てを革新する力を悟ったのだ。
その熱狂の只中で、カイウスが誇らしげにエリアーナの肩を抱き寄せた。
「これが、新しい時代の幕開けだ」
彼の宣言が、旧時代の終わりの狼煙のように、世界に響き渡った。
エリアーナは、自分を信じ続けてくれた唯一無二の男性の隣で、静かに微笑んでいた。
ただ一人、アルフォンスだけが、その熱狂の輪から置き去りにされ、顔面蒼白のまま、忘れ去られた過去の遺物のように、立ち尽くしていた。
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