俺の羽の下にいて!~他の奴に抱かれないで~

sakura2025

文字の大きさ
11 / 16
俺の羽の下にいて!  9

9  離れないことに決めた

しおりを挟む
連絡が取れずに自然消滅的に仕事を失うことになるがツアーガイドを辞めるなら、構わないと思った。


 類、実家に戻り、櫂とふたり暮し(両親がカナダから戻るまでの間)



 類は櫂に
「しばらくこのままここに居てもいいかな」と言うと 
 櫂は
《もちろんだよ。ここは兄さんの家でもあるんだから、誰にも遠慮はいらないよ。》

 類はハルが帰国している間に上京することにした。

 櫂は類の東京行きに合わせて出勤することにして、往復同行し、ランチはハルも一緒に3人でとった。

 櫂が仕事をしている間に 類はハルに「休業してしばらく実家で過ごす」と伝えた。ハルも賛成してくれた。
 この上なく美しい息子を前にハルは 美しいことイコール リスキーであり、厄災を引き寄せてしまうことに複雑なおもいだった。 

 櫂は類と離れないことに決めていた。

 眠っている兄の裸身に初めてくちづけたあの夜、寝がえりをうった類と向き合ったとき、 俺を見つめる類の瞳は驚きで大きく見開いていた。思わず「ごめん」と誤った俺を類は抱きしめてくれた。それまで、恐る恐る触れていたが、類から抱きしめられたことで 俺のタガは外れた。

 類は櫂が兄弟以上の感情を抱いていることに 薄々気付いていた。櫂を傷つけずにどうしたらいいか悩んでいたが、血の繋がらない兄弟と分かり、櫂の気持ちを受け入れて構わない、むしろ類も兄弟以上の感情があることに気付いた。

櫂の力強い抱擁、密着してくるしなやかな肢体、すべてが若々しく溢れる新鮮さが類を圧倒した。櫂が触れてくる 櫂がくちづける 全部が快楽ボタンを押されたように体が反応した。こんなに感じたのは初めてだった。櫂が入ってきたとき、類は思わず 櫂にしがみついていた。

櫂は類の肌に触れただけで行きそうだったが、学生のころから使っているシングルベッドで、予想をはるかに超えて類が身悶えて動きまわるので、ベッドから落ちないように 片腕でしっかりと類を抱き、もう片方の腕を支柱にしてベッドの中央に抱き合ったまま移動させていた。万が一転げ落ちても 自分が下になるが、衝撃を和らげられるよう上掛けを床に落としておいた。ベッドを買い換える必要があると現実的な事と類を抱いているこの世のならぬ快楽とが行きかって早漏を避けることが出来た。

 櫂は貯っていた有給を取り、類と一緒に過ごすことにした。

 類が東京の山角出版に就職したから、東京の大学を選んだのに、櫂が大学入学の時、すでに類は山角出版を退職して バルセロナの大神のところに居た。大学の夏休みに スペインの類を訪ねて一緒にイギリスを旅行した。イギリス観光では定番のコッツウォルズやウインダミア湖、ロンドンでは大英博物館等、ゆっくりまわった。

 イギリス旅行の次には 櫂が大学2年の冬休みのエジプト旅行も約束してくれた。

 エジプト旅行は夏は気温が高すぎて日中の観光を避け、朝夕で巡るが、それでは、午前3時前に起きて4時ごろのフライトで観光地に向かうことになり、体調を崩すツアー参加者が多いとのこと。
類は櫂を連れてのエジプト旅行は、ナイル川クルーズで大半の遺跡を巡り、アブシンベル神殿のあるアスワンへは飛行機で行くつもりと話してくれた。
エジプトの遺跡はナイル川沿いに点在し、ギザのピラミッド創建当時は、ピラミッドにナイル川から船を横付けることが出来たようだ。

 櫂 大学2年の冬休み、実際カイロからエジプト旅行を始めたが、観光ポスターで見慣れた砂漠に建つギザのピラミッドのひとつの石さえ、5階建てビル?ほどの巨大さに驚いたが、振り向くと砂漠のピラミッドに相対してマクドナルドがあり、カイロの街並みが拡がっているのには もっと驚いた。
ナイル川クルーズはホテルのツインルームに泊まったまま部屋ごと移動しているようなもので、実に快適だった。船室にはバスタブも付いていた。それにリバークルーズは揺れないので、船酔いとも無縁で、眠っている間に次の目的地に到着し、桟橋まで、馬車が迎えに来ているところもあった。

 櫂は兄と同じ部屋で眠り、兄が櫂を気にすることなく着替たり入浴したりするのを見つめないようにするのに苦労したが、触れられるくらい近くでずっと過ごせる幸せに浸った。

 櫂が大学3年就活 4年卒論、卒業後就職と忙くなり、類もフリーのツアーガイドとして南米ツアー添乗まで引き受け多忙で、ほとんど会えずに 3,4年過ぎてしまった。久々の再会が花冷えの夜だった。

 花冷えの夜、類を俺が拾ってから2週間になる。子供の時のように類と同じ家で暮らしている。違うのは互いに兄弟ではなく恋愛対象として認めたことだ。
類を抱いた翌日、類から本当は両親も大神も揃ったところで、話すべきことだが、親たちも櫂の成人に合わせて話すつもりだったが、実現しないうちに俺たちの関係が変化した。俺は18歳の誕生日過ぎてから浮名父と大神から聞いたことを 櫂に言うべきだと思う。と前置きして、
「櫂、俺たちは血が繋がっていない。俺は養子で、実の父は大神明彦なんだ」類が生まれると同時に実母が亡くなったことも 養子になった経緯もすべて櫂に話した。実父が現れても父は浮名父ひとりであるとの想いも。

櫂は類がハルと呼ぶ父の親友で自分たちの遠い親戚に嫉妬していた。類とハルが親し気で類が頼りにして
いるようだったから。今、実の父と聞いて納得がいった。
 自分たちの血が繋がっていないことをもっと早く知らせて欲しかった。実の兄弟だと思うから、恋愛感情を抑え込んで肉体関係を持たないように必死だったのに。

 櫂は類を拾い、類を抱いて、血縁関係にないことを聞いて、いままで抑えてきた類への欲情は本流となり連日類を抱きしめた。有給休暇のほとんどを類と肌を合わせて過ごした。リモートワークで在宅中はまだしも、出勤で 類の居る家を空けるのも嫌だった。
類も失業中なので、これからのことを話し合った。

それに 今は輸入雑貨の仕事の関係で、カナダに長期滞在中の浮名夫妻も冬には戻ってくる。出店にあたり浮名夫妻はモントリオールの旧市街地の雰囲気、街並みを気に入ったが厳寒の冬に恐れをなし、あらためて比較的温暖なバンクーバーを考えているとのことで、今冬帰って来るのは確実だった。
モントリオールはヨーロッパを思わせる落ち着いた雰囲気の美しい街だが、9月ごろから雪がちらつきはじめ、真冬には氷点下40度前後まで気温が下がる。地下街入口の真上に居住するのが人気なのもわかる。古い街なので、二階建て、外階段のアパートも多く、滑らない靴との宣伝文句につられて買ったのに シーズン中、何度か階段を滑り落ちることになる。外出ともなれば、分厚いコート、ブーツ、帽子、手袋と防寒対策するが、オフィスに着けば上着も要らないほど暖房が効いているので、コートを脱ぐだけでなく、靴も履き替え、スキーウェアをビジネススーツに着替えることになる。街路でのウインドーショッピングは夏だけの事だ。街がそっくり地下に移動したのかとまごうほど地下街が発達している。浮名夫妻と知り合った日本人現地ガイドも臨時雇でも失業保険まで入れてくれて労働環境がよいのだが、観光客の来ない極寒の数ヶ月は家に籠って過ごすことになるし。買い物等必要な外出もたいてい凍った階段、凍った道で転倒する。で、日本に帰るとのことだった。

 両親が帰国して同居に戻れば、櫂と類の夜の営みを いままで通りはまずい。ベッドの軋みがわずかとはいえ家を揺らしているからだ。櫂はリモートワークなのに東京にわざわざ部屋を借りるのも不自然だし、類の東京の住まいは、大神の住まいでもある。浮名が借りたままの部屋は星川と同じマンションなので論外だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...