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最果ての森編
25. ここに住んだ訳
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「ウィル君、お待たせ!それじゃあ、本を読んでみようか!」
ジルとライが食事を終えて食器を片付けると、ライがテンション高めに本を並べ出す。
「まずはどの本がいいかなあ。あ、そういえばウィル君。この文字、読めるかい?」
そう言って一冊の本のタイトルを指差す。
「あうあう」
読めるよ、と頷く。
「ふふ、『言語理解』のスキルだね?ウィル君、いいスキルを貰ったね!」
「あうあう」
ほんと、ありがたいです。
ライが指差したのは、『薬草学』と書かれた本。他にも、『世界の歴史』とか、『魔物図鑑』とか、『スキル全集』とか、様々な分野の本がある。あ、『魔法詠唱集』もある。面白そうだ。···僕は詠唱しないよ?
さっきライが、自分が教えられそうだと言っていたけど、こんな色々な分野について詳しいのだろうか。思わず尊敬の目でライを見る。特大ライトの餌食にしようとして、ごめんなさい。
「それじゃあ、最初はこれかな」
ライが広げたのは、『世界地図』と書かれた本だ。
「この世界の地図だよ。いや、私達がいる大陸の地図、と言った方が正確かな」
そう言われて本を覗き込むと、ページの真ん中に大きな大陸が描かれている。横に長い楕円のような形だ。その周辺にいくつか島があり、さらに離れたところに、なんだか雑な大陸の図が描かれている。
「私達がいるここ以外で、他にも大陸は見つかっているんだけどね、海にも魔物はいるし、いかんせん遠くて渡るのが難しいんだ。だから正確な測量が出来ていなくて、大まかな図になっているんだ」
へえー、それは海の向こうの大陸に住む人達にとっても、同じ事なのだろう。
「それに向こうの大陸の住民とはあまり仲が良くないんだ。大陸が近ければ、戦争は避けられなかっただろうって言われてるくらいだよ」
えっ、何故に?
「その人達は魔族といってね、うーん、種族的な特徴なのかなあ。とにかく、高圧的で好戦的な人が多いんだよ。力こそ全て!みたいな感じで、種族的に力が弱めな人族のことを見下しているんだ。魔族以外の種族もいるのかもしれないけどね、こんな感じで交流がないから向こうの大陸のことはあまり分かっていないんだ」
おおう。大陸が遠くて良かった、と思った。でもジルやライなら、どこに行っても大丈夫な気がする。
「だから、とりあえずこれが世界地図だと思ってくれて大丈夫だよ。それでね、私達がいるのが、ここなんだ」
ジルが指差したのは、大陸の中心から少し東に進んだところ。
「ここは最果ての森と呼ばれていてね、ジルとウィル君の家は、その森の中でも最深部の近くにあるんだ」
僕の、家···!そうか、ここはジルの家でもあり、僕の家でもあるのだ。ふふん、だって親子だからね、と思わずニヤニヤしてしまう。
はっ!えっと、最果ての森の、最深部だっけ?響きがいちいち怖いのだが、もしかしてここは危険な場所なのでは?ドラゴンは、そんな危険なところに家を建てるのか?
「ジルはね、以前は一箇所に長く住むことはあまりなかったんだけどね。前にファムが遊びでこの辺りの木をたくさん切り倒しちゃったんだ。そしたら、ちょうどいいからここに住むって言って、ほんとに家を建てて住み始めたんだよ」
遊びで、たくさん木を切り倒す···?ちょっと意味が分からない。
この家の周りだけが妙に拓かれてるなと思っていたが、そんな経緯があったのか。
「住んでみると、静かでいいぞ」
「ふふふ、それはジルだからだよ」
うん、僕もそう思う。
「この辺りの森は、どこの国の領土でもないんだ。自国の領土だ!って主張する国はいくつかあるけどね。手を出そうにも、魔物が強くて入って来れないみたいだよ」
ほら!やっぱり!危険な場所じゃないか!
「ちなみに、今朝ウィル君が倒したマンティコアは、魔物の中ではかなり強い方だよ。この家の周りでは、うーん、真ん中くらいかな?」
めちゃくちゃ危険な場所じゃないか!!!
あの人面ライオンが真ん中なら、もっと強い魔物も近くにいるってことだ。こんな所に住むなんて、なんというドラゴンなんだ。いや、ドラゴンだからこんな所に住むのか?
僕は小さくてか弱い赤ん坊なのだ。そうだ、ジルに守ってもらおう。全力で頼るとしよう。
「今回マンティコアは全部売却しちゃったけど、魔物の中にはいい素材を持ってるのもいるんだ。そういう魔物を倒したときは、その素材だけ手元に残して売るといいよ。いい素材で武器や防具を作れば、攻撃力や防御力が大幅に上がるからね」
いいスパイラルに嵌まれば、どんどん強くなれるのだろう。
「この家の周りにも、結構いい素材があるよ。魔法をもっと練習したら、実地練習もいいかもね」
もはや魔物を素材と言い切っているライ。ああ、ライもドラゴンと仲が良いだけあるな、と思った。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、魔物が可哀想になった。
それにしても実地練習なんて、ライは非力な赤ん坊に何をさせる気なんだ。やっぱり、特大ライトを当てるべきだろうか。
ジルとライが食事を終えて食器を片付けると、ライがテンション高めに本を並べ出す。
「まずはどの本がいいかなあ。あ、そういえばウィル君。この文字、読めるかい?」
そう言って一冊の本のタイトルを指差す。
「あうあう」
読めるよ、と頷く。
「ふふ、『言語理解』のスキルだね?ウィル君、いいスキルを貰ったね!」
「あうあう」
ほんと、ありがたいです。
ライが指差したのは、『薬草学』と書かれた本。他にも、『世界の歴史』とか、『魔物図鑑』とか、『スキル全集』とか、様々な分野の本がある。あ、『魔法詠唱集』もある。面白そうだ。···僕は詠唱しないよ?
さっきライが、自分が教えられそうだと言っていたけど、こんな色々な分野について詳しいのだろうか。思わず尊敬の目でライを見る。特大ライトの餌食にしようとして、ごめんなさい。
「それじゃあ、最初はこれかな」
ライが広げたのは、『世界地図』と書かれた本だ。
「この世界の地図だよ。いや、私達がいる大陸の地図、と言った方が正確かな」
そう言われて本を覗き込むと、ページの真ん中に大きな大陸が描かれている。横に長い楕円のような形だ。その周辺にいくつか島があり、さらに離れたところに、なんだか雑な大陸の図が描かれている。
「私達がいるここ以外で、他にも大陸は見つかっているんだけどね、海にも魔物はいるし、いかんせん遠くて渡るのが難しいんだ。だから正確な測量が出来ていなくて、大まかな図になっているんだ」
へえー、それは海の向こうの大陸に住む人達にとっても、同じ事なのだろう。
「それに向こうの大陸の住民とはあまり仲が良くないんだ。大陸が近ければ、戦争は避けられなかっただろうって言われてるくらいだよ」
えっ、何故に?
「その人達は魔族といってね、うーん、種族的な特徴なのかなあ。とにかく、高圧的で好戦的な人が多いんだよ。力こそ全て!みたいな感じで、種族的に力が弱めな人族のことを見下しているんだ。魔族以外の種族もいるのかもしれないけどね、こんな感じで交流がないから向こうの大陸のことはあまり分かっていないんだ」
おおう。大陸が遠くて良かった、と思った。でもジルやライなら、どこに行っても大丈夫な気がする。
「だから、とりあえずこれが世界地図だと思ってくれて大丈夫だよ。それでね、私達がいるのが、ここなんだ」
ジルが指差したのは、大陸の中心から少し東に進んだところ。
「ここは最果ての森と呼ばれていてね、ジルとウィル君の家は、その森の中でも最深部の近くにあるんだ」
僕の、家···!そうか、ここはジルの家でもあり、僕の家でもあるのだ。ふふん、だって親子だからね、と思わずニヤニヤしてしまう。
はっ!えっと、最果ての森の、最深部だっけ?響きがいちいち怖いのだが、もしかしてここは危険な場所なのでは?ドラゴンは、そんな危険なところに家を建てるのか?
「ジルはね、以前は一箇所に長く住むことはあまりなかったんだけどね。前にファムが遊びでこの辺りの木をたくさん切り倒しちゃったんだ。そしたら、ちょうどいいからここに住むって言って、ほんとに家を建てて住み始めたんだよ」
遊びで、たくさん木を切り倒す···?ちょっと意味が分からない。
この家の周りだけが妙に拓かれてるなと思っていたが、そんな経緯があったのか。
「住んでみると、静かでいいぞ」
「ふふふ、それはジルだからだよ」
うん、僕もそう思う。
「この辺りの森は、どこの国の領土でもないんだ。自国の領土だ!って主張する国はいくつかあるけどね。手を出そうにも、魔物が強くて入って来れないみたいだよ」
ほら!やっぱり!危険な場所じゃないか!
「ちなみに、今朝ウィル君が倒したマンティコアは、魔物の中ではかなり強い方だよ。この家の周りでは、うーん、真ん中くらいかな?」
めちゃくちゃ危険な場所じゃないか!!!
あの人面ライオンが真ん中なら、もっと強い魔物も近くにいるってことだ。こんな所に住むなんて、なんというドラゴンなんだ。いや、ドラゴンだからこんな所に住むのか?
僕は小さくてか弱い赤ん坊なのだ。そうだ、ジルに守ってもらおう。全力で頼るとしよう。
「今回マンティコアは全部売却しちゃったけど、魔物の中にはいい素材を持ってるのもいるんだ。そういう魔物を倒したときは、その素材だけ手元に残して売るといいよ。いい素材で武器や防具を作れば、攻撃力や防御力が大幅に上がるからね」
いいスパイラルに嵌まれば、どんどん強くなれるのだろう。
「この家の周りにも、結構いい素材があるよ。魔法をもっと練習したら、実地練習もいいかもね」
もはや魔物を素材と言い切っているライ。ああ、ライもドラゴンと仲が良いだけあるな、と思った。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、魔物が可哀想になった。
それにしても実地練習なんて、ライは非力な赤ん坊に何をさせる気なんだ。やっぱり、特大ライトを当てるべきだろうか。
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