転生したらドラゴンに拾われた

hiro

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最果ての森編

35. 雷帝

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「うん?急にどうしたんだー、ライ?」

「ウィルくんのステータスに、何かあったのー?」

 ライの突然の奇声に、テムとファムが不思議そうにしている。

「あっ、えーっと、ウィル君のステータスにね、称号が追加されていたから驚いただけだよ。うん、ただそれだけ」

「へえー、何が追加されてたのー?」

「え、えーっとね、そう!私の愛弟子だって!いやあ、恥ずかしいねえ」

「ブハハ!ウィルはライの愛弟子なのか!」

「へえー、そうなんだー。···ねえねえウィルくん、ステータス見せてー!お願い!」

 そんなに可愛くおねだりされたら断れないではないか。
 ステータスって、人に見せられるのか。可視化するように、『ステータス』と念じてみる。「えっ、ちょっと待って!」とライが言った気がしたが、テムとファムの声にかき消される。

「ブハハ!なるほどな!」

「あはは!やっぱりー!ライ、何か隠してると思ったー!」

「だから恥ずかしいって言ったじゃないか!」

 ライの顔が真っ赤だ。なんでだ?

「ウィルくん、この雷帝ってね、ライのことなんだよー!」

 ファムが楽しそうに説明する。そうか、ライのことだったのか。分かって良かったけど、ライが赤面する理由はなんだろうか。

「この二つ名はね、ライの若い頃につけられたんだよー」

 今も若く見えるが。
 ライがしぶしぶといった様子で話し出す。

「···若造で、調子に乗っていたんだ。えっと、私の得意属性が風だという話はしたよね?風属性に、雷を操る魔法があるんだけどね、私はその当時はまだなかった雷の超級魔法を完成させたんだ」

 それは凄いじゃないか。

「それで嬉しくなって、その魔法を試したくなったんだ。理論を組み立てたら、あとは実践して検証したくなるものでしょう?」

 それはそうだ。今までになかった魔法なんだ。僕だったら、わくわくしてノリノリでやっちゃいそうだ。

「大規模な魔法になることは分かっていたから、念の為に海を渡って、人がいない小島でやったんだ」

 ほえー、超級魔法とは、それほどなのか。

「···それで、思ってたよりも制御が難しくてね、簡単に言うと、失敗しちゃったんだ」

「んで、ジルに助けられたんだよな!」

 え、そうなの?

「そうだね、あの時は本当に助かったよ。たくさんの雷が空から降ってきて、島だけじゃなく周囲の海にまで落ちて、あげく私も被弾して気絶しちゃったんだ」

 え、雷に打たれたの?

「そのとき偶々近くにいたジルが様子を見に来て、ライを見つけたんだっけー?」

「そうなんだ。私は気を失っていたし、その後の数日は記憶が曖昧なんだけどね、いつの間にか雷帝って呼ばれるようになっちゃって···」

「ブハハ!ライの雷はこの大陸からも見えたらしくてな、海の近くにいたヤツらが、天変地異か!?って大騒ぎしたんだと!んで、しばらくするとライの雷を受けた魚が大量に海に浮いてよ、その中には危険な魔物もいたらしくてな、漁師がライを拝めたのが始まりらしーぜ!」

「そんな感謝のされ方、恥ずかしいじゃないか。雷帝だって、調子に乗ったあげく失敗して、さらに自分の魔法で気絶しているうちについた呼び名だからね」

「気絶うんぬんはジルが上手く誤魔化してくれたんだろ?知ってるヤツはほとんどいねーから、いいんじゃねーの?」

「あはは!だから余計に恥ずかしいんじゃないのー?」

「そう、そうなんだよ。全く知られていないなら、開き直れるかもしれないけどね。はあ、ほんと、もっと魔力制御が上手くなってからやれば良かったって、今でも思うよ···」

 力無く肩を落とすライ。真面目で努力家のイメージのライに、そんな過去があったのか。人によっては、「やっちゃったー、テヘペロ」くらいの出来事かもしれないが。真面目だからこその恥ずかしい過去なのだろうか。

「まあ、そのおかげでジルと知り合えたんだけどね。ふふ、最初の出会いが気絶って、締まらないよね」

 それが初めての出会いだったのか!もっとこう、強い奴がいるぞ、みたいな感じで出会ったのかと思ってた。

「それからジルが魔法の練習を手伝ってくれてね、安定してその超級魔法を放てるようになったんだよ」

 おお!さすがライだ。口では軽く言ってるけど、きっと相当な努力をしたのだろう。そしてやっぱりジルは優しい。

「ライはよ、雷帝って呼び名、広めないようにしてたんだろ?」

「うん、そうなんだ。そう呼ばれるとどうしても自分の失態を思い出して、恥ずかしいからね。でもステータスに表示されるなんてね。いつの間にか周知されていたみたいだね」

「あはは!ぼくはかっこいいと思うよー!二つ名!ぼくも欲しいなー」

「お、いいな!オレも欲しいぜ!カッコイイのがいいよな!」

 テムとファムには二つ名はないのか。

「テムは、何だろうねー?『希少な属性使いの妖精さん』とかどうかなー?」

 可愛い二つ名だな。

「うーん、なんか響きがカッコよくないぞ。それに長くないか?」

「えー、じゃあ、『希少な妖精さん』?」

 テムの要素がぐっと減った。

「うん?うーむ、オレ、もっとカッコイイのがいいぜ!『最強の男』とか、『最強の妖精』とか、『最強の魔法使い』とか!」

 テムにとっては、『最強』が付くとカッコイイらしい。

「ふふ、二人とも、有名になれば自然と二つ名ができると思うよ」

「あはは、それならテムは難しいかもねー!恥ずかしがり屋さんだもんねー!」

「くっ···オレだって、人前に出れるんだぜ!今日もちゃんと隠れずに出たしよ!」

「あはは!オーガの前に出ちゃったんだよねー!」

「ふふふ、なるほど。そんな流れだったんだね」

 ライはゴブリン狩りまでの経緯を完全に把握したようだ。

「出来たぞ」

 テムがライの笑みにビクッとしたとき、ちょうど良くジルが声をかけてきた。

「おお!ジル!待ってたぜ!」

 両手を上げて喜ぶテム。

「今日はみんな揃っているし···天気もいいから、外で食べないか?」

 ジルが持って来たのは大きなお皿。たくさんのサンドイッチが盛られている。色んな種類があって、美味しそうだ!

「お外で食べるのー?楽しそー!」

「いいなそれ!行こーぜ!」

 元気組は早速外に出る。

「ふふ、ピクニックみたいで面白そうだね。ウィル君、私達も行こうか」

 大皿を持っているジルに代わり、ライが僕を抱えてくれる。僕、歩けるんだけどね?甘えさせてくれるなら、存分に甘えさせてもらおう。

 ライに抱えられて外に出る。ふと視界の隅に動くものがあったので目を向けると、それはそそくさとオーガを隠そうとしているテムとファムの姿だった。
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