しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

文字の大きさ
90 / 130

おっさんゲームす

しおりを挟む
 魔王城に来て五日ほどが経った。
 この数日で、シービーの様子が少し大人しくなったように思う。きっとエンペアが姿を消したせいだろう。どこへ行ったのか周囲に尋ねても、返ってくるのは曖昧な答えばかり。
 シービー自身も「ヘマしたら、あたいも……」と怯えた声を漏らすことがある。俺が「気にしすぎじゃないか」と声を掛けても、反応は上の空だ。その姿を見るたびに、なんとなく胸の奥にモヤモヤが残った。

 こんな時、電気屋としてどうするべきか。
 答えはひとつ──娯楽だ。

 俺は休憩室の片隅に立ち、召喚の手を広げた。現れたのは、どでかい百インチのスクリーンと家庭用ゲーム機。ケーブルを繋ぎ、電源を入れる。鮮やかな映像が壁一面に広がった。
 この家電召喚の理屈はいまだ分からない。使ったことのある家電しか召喚できないし、異世界のマナとやらが絡んでいるのかもしれない。だがそんな細かいことは今はどうでもいい。重要なのは、この場の空気を変えることだ。

 「……な、なんだその魔道具は!?」
 さっそくシービーが食いついた。
 「これはプロジェクターとマジカルパーティDXっていうゲームだ!」
 「ゲーム?」
 スクリーンに躍るカラフルなキャラクターたちに、シービーは思わず目を細める。
 「このコントローラーでキャラを操作して、色んな競技で勝負するんだ。四人から八人まで同時に遊べる。やってみれば分かるさ」

 コントローラーを渡すと、シービーは恐る恐る親指を動かした。
 「……おお、動いた!」
 画面のキャラが跳ね回る。若いだけあって、飲み込みが早い。

 その様子に、遠巻きに見ていたメイドや研究者たちがざわざわと集まってくる。
 「これは一体……?」
 「うるさい、今いいところなんだ!」
 シービーは舌を出し、すっかり夢中になっていた。

 ゲームは単純だ。タイミングよくボタンを押したり、ひたすら連打したり。誰でも気軽に参加できるが、白熱すると立派な戦場になる。

 「うおおお! わしのキャラが転落したぁ!」
 「シービー、やめろ! コントローラーで殴るな!」
 「勝つためなら手段を選ばないのが、魔物の誇りです!」
 「誇りの使い方間違ってるぞ!」

 最初は戸惑っていた魔物たちも、数ターン後には全員が本気モード。ミニゲームが始まるたびに歓声が飛び交う。
 樽の上でバランスを取る競技では、研究者が足をもつれさせて大惨敗。爆弾をパスし合うゲームでは、メイド同士の火花散る応酬に他の魔物たちが息を呑む。シービーは相変わらず物理的妨害を繰り返し、ライバルのメイドはそれを見逃さずわめき散らす。

 「くっ……次こそは必ずや勝利してみせる!」
 「やれるものならやってみなさい!」

 退屈と緊張に沈んでいた控え室に、笑い声と叫び声が響き渡った。

 そして最終ターン。トップはシービー、二位に老研究員、三位が俺という展開。
 最後のミニゲームは、丸太を転がしてゴールを目指す競争だ。
 「うおおお、待てぇ!」
 「ははは、若造には負けんぞ!」
 シービーが先行するも、最後の直線で研究員が奇跡の逆転。優勝が決まった瞬間、広間は大歓声に包まれた。

 「やった……これが人生初の一位か」
 老研究員の目には涙さえ光っていた。
 「な? たまにはこうやって笑った方がいいだろ」
 俺はコントローラーを置き、にやりと笑った。

 「おっさん、やっぱスゲーんだな。こんな楽しい城内初めてだ」
 シービーも頬を紅潮させて笑っている。その姿に、俺も胸をなで下ろした。

 「明日は、もっと人を集めて大会にしようぜ!」
 俺の提案に、魔物たちは口々に賛同した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...