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ドルガス凶行す
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魔王ルクスとの結婚生活を妄想しだしたら、いつの間にか朝になっていた。
そういえばドルガスが「研究成果を見せるから、明日もシービーを連れて会議に参加しろ」って言ってたな。俺の家電が魔王領復興用にどんな魔改造されたか楽しみではあるが……嫌な予感も拭いきれない。
会議の場に着くと黒曜石の円卓に幹部どもが並び、ドルガスが立ち上がった。
「さて、皆の者。待たせたの」
大声で笑うその姿を見ただけで、背筋に嫌な汗が流れる。
「魔王様の御命により、異界の家電を研究してみたが……これは実におもしろい代物じゃ!」
興奮気味のドルガスに、ルクスが静かに言葉を挟む。
「電次郎の家電とマナと融合させ、日常を豊かにする魔道具……それが実現できたのなら皆も私の結婚を祝福してくれよう」
魔法と家電の融合か……冷蔵庫にマナを通して魔法の氷が出せるとか、洗濯機で汚れを一瞬で分解するとか、そういうのは単純にワクワクするけど……今は結婚生活のことで頭がいっぱいだ。
「もちろんじゃとも!」
ドルガスは両手を広げ、背後に居たライオネットに目配せをした。
「じゃがのう魔王さまよ、日常よりもまず大事なのは軍事力じゃて」
ライオネットがすらりと前へ出て、テーブルの上に金属の箱を置いた。
あれは、電子レンジ? いや、なんかちょっと違うな、扉が無い……。
「軍事力だと‼ ドルガス、貴様、約束を違えたか」
ドルガスは、ルクスの叫びを無視してその家電に手を乗せた。
「これは、マイクロ波とマナを融合させて……物質の中からマナを強制的に消滅させる兵器でございます」
ライオネットが言い放った瞬間、背筋が凍った。
ちょっと待て……兵器? レンジでチンするあの便利家電を、よりにもよって兵器にしただと?
機械が低く唸りを上げる。嫌な音だ。まるで俺に「もう元には戻れねぇぞ」って突きつけてくるみたいだ。
ドルガスが指を鳴らすと、誰かが前に出された。
「試してみようではないか。おい、そこの小娘を狙え!」
小娘? そう呼ばれて押し出されたのは、シービーだった。
「え……」
彼女の体が小刻みに震え、俺の袖を必死に掴む。
「ちょ、待て待て待て! なんでシービーなんだ!」
思わず叫ぶ俺に、ドルガスは歯をむき出しにして高笑いする。
「決まっておるわ! あやつは魔王様の“クローン”。替えはいくらでも利く。犠牲にしても誰も困らぬわ! むしろ、生命体にも効くと証明するには格好の実験台よ!」
「てめぇ……!」
血が逆流するような怒りが込み上げて、思わず立ち上がった。
ルクスの眉がかすかに動いた。
「……ドルガス、ライオネット。私は生活に役立つ道具を望んだはず。それを兵器に変えるとは……」
だがライオネットは薄笑いを崩さず、涼しい顔で言い放った。
「魔王様。綺麗事だけでは魔王領は生き残れません。力こそが秩序。電力とマナの融合は、戦のためにこそ価値があるのです」
その言葉と同時に、レンジから放たれた光がシービーを狙った。
空気がビリビリ震え、彼女の輪郭が揺らぎ始める。
「やめろぉぉぉぉ!」
俺は叫んで、シービーを抱き寄せた。
何が起こったのか分からない。ただ一つ分かったのは──家電が、笑顔を奪うための道具にされているってことだ。
ドルガスの高笑いが、耳をつんざくように響いた。
「この通り! 人も物も、すべての存在からマナを消し去り、無力化する……究極の兵器よ!」
そういえばドルガスが「研究成果を見せるから、明日もシービーを連れて会議に参加しろ」って言ってたな。俺の家電が魔王領復興用にどんな魔改造されたか楽しみではあるが……嫌な予感も拭いきれない。
会議の場に着くと黒曜石の円卓に幹部どもが並び、ドルガスが立ち上がった。
「さて、皆の者。待たせたの」
大声で笑うその姿を見ただけで、背筋に嫌な汗が流れる。
「魔王様の御命により、異界の家電を研究してみたが……これは実におもしろい代物じゃ!」
興奮気味のドルガスに、ルクスが静かに言葉を挟む。
「電次郎の家電とマナと融合させ、日常を豊かにする魔道具……それが実現できたのなら皆も私の結婚を祝福してくれよう」
魔法と家電の融合か……冷蔵庫にマナを通して魔法の氷が出せるとか、洗濯機で汚れを一瞬で分解するとか、そういうのは単純にワクワクするけど……今は結婚生活のことで頭がいっぱいだ。
「もちろんじゃとも!」
ドルガスは両手を広げ、背後に居たライオネットに目配せをした。
「じゃがのう魔王さまよ、日常よりもまず大事なのは軍事力じゃて」
ライオネットがすらりと前へ出て、テーブルの上に金属の箱を置いた。
あれは、電子レンジ? いや、なんかちょっと違うな、扉が無い……。
「軍事力だと‼ ドルガス、貴様、約束を違えたか」
ドルガスは、ルクスの叫びを無視してその家電に手を乗せた。
「これは、マイクロ波とマナを融合させて……物質の中からマナを強制的に消滅させる兵器でございます」
ライオネットが言い放った瞬間、背筋が凍った。
ちょっと待て……兵器? レンジでチンするあの便利家電を、よりにもよって兵器にしただと?
機械が低く唸りを上げる。嫌な音だ。まるで俺に「もう元には戻れねぇぞ」って突きつけてくるみたいだ。
ドルガスが指を鳴らすと、誰かが前に出された。
「試してみようではないか。おい、そこの小娘を狙え!」
小娘? そう呼ばれて押し出されたのは、シービーだった。
「え……」
彼女の体が小刻みに震え、俺の袖を必死に掴む。
「ちょ、待て待て待て! なんでシービーなんだ!」
思わず叫ぶ俺に、ドルガスは歯をむき出しにして高笑いする。
「決まっておるわ! あやつは魔王様の“クローン”。替えはいくらでも利く。犠牲にしても誰も困らぬわ! むしろ、生命体にも効くと証明するには格好の実験台よ!」
「てめぇ……!」
血が逆流するような怒りが込み上げて、思わず立ち上がった。
ルクスの眉がかすかに動いた。
「……ドルガス、ライオネット。私は生活に役立つ道具を望んだはず。それを兵器に変えるとは……」
だがライオネットは薄笑いを崩さず、涼しい顔で言い放った。
「魔王様。綺麗事だけでは魔王領は生き残れません。力こそが秩序。電力とマナの融合は、戦のためにこそ価値があるのです」
その言葉と同時に、レンジから放たれた光がシービーを狙った。
空気がビリビリ震え、彼女の輪郭が揺らぎ始める。
「やめろぉぉぉぉ!」
俺は叫んで、シービーを抱き寄せた。
何が起こったのか分からない。ただ一つ分かったのは──家電が、笑顔を奪うための道具にされているってことだ。
ドルガスの高笑いが、耳をつんざくように響いた。
「この通り! 人も物も、すべての存在からマナを消し去り、無力化する……究極の兵器よ!」
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