105 / 130
おっさん思い出す
しおりを挟む
「ぐっ……!」
クレアの苦悶の声が耳に届いた。彼女の剣先は鈍り、額には汗が滲んでいる。
サンダルも息を荒げ、振るう大剣が重たそうだ。あの馬鹿力でさえも、幹部どもの無尽蔵な魔法攻撃を受けきれなくなってきている。
「くそ……これじゃ埒があかねぇ」
俺は歯を食いしばりながら、電子レンジの扉を盾に魔弾を防いだ。だが、衝撃が腕を通じて痺れる。扉が割れたら、それで終わりだ。
横目で見ると、ステラの結界はすでにヒビだらけだった。
「はぁっ……くっ……!」
小柄な体で必死に耐えてるが、声が震えてる。あと数発持ちこたえられるかどうかも怪しい。
ジェダもオークの姿を保ったまま、息を荒げて前に立ち続けている。肩で呼吸しながら魔弾を叩き落としていたが、その動きは目に見えて鈍っていた。
「電次郎さん……長くは……!」
ステラの声はか細い。俺の胸がぎゅっと締めつけられる。
……これじゃあ駄目だ。
ただ守ってるだけじゃ、誰かが倒れる。犠牲になる魔物がどんどん増えてる。床にはすでに、魔王を庇って力尽きた連中が何体も転がっている。
「どうすりゃいい……!」
俺は頭を抱えたくなる。だがそんな暇すらない。次の光線が飛んでくる、扉で受け止める、痺れる、倒れそうになる。繰り返しだ。
この乱戦を終わらせるには……
その瞬間、ふと昔のことを思い出した。
近所の工場に修理に呼ばれた、あのバカでかい機械……。
人間よりもでけぇ羽根が唸りをあげて、作業場の埃を全部吹き飛ばす。あの轟音、暴風……。
──そうだ、アレなら!
取り出せるか?
いや……
「……やるしかねぇ」
俺は息を吸い込み、震える手を宙に伸ばした。
「来いっ!」
空間から現れたのは、鈍色の巨体だった。
ゴウン、と玉座の間の床が震える。幅二メートルはあろうかという鉄製の筐体に、ぐるぐる回転する巨大なファン。産業用送風機──熱気むんむんの工場に風を送り込む怪物だ。
「な、なんだ……?」
幹部どもの顔が一斉にこちらを向いた。
バンボルトが鼻で笑う。
「はっ、なんだよそれは。ぶかっこうな鉄の塊じゃないか」
「……笑っていられるのも今の内だぜ」
俺は低く吐き捨てる。
「出力によっては、人気をも吹き飛ばす代物だ……それに俺の力が加われば!」
俺は全身の力を込めて、電力を流し込んだ。
次の瞬間──
ゴォォォォォォッ‼
鼓膜を破るような轟音が玉座の間に響き渡る。
暴風が一気に広がり、幹部たちのローブをはためかせ、床の瓦礫や血の匂いまで吹き飛ばした。
「ぐぉっ!?」
「馬鹿な、立っていられん……!」
幹部どもが次々と膝をつき、足を踏ん張るのがやっとになる。
「くっ、詠唱が……!」
骸骨が杖を掲げようとしたが、口にした呪文は風にかき消される。
魔力の粒子そのものが暴風に散らされ、魔法の形を成す前に空気へ霧散していた。
「……マナが……消える……!?」
幹部たちが叫ぶ。
俺は叫び返した。
「こりゃいいぜ、魔法もマナもまとめて全部吹き飛ばせっ」
俺の髪もシービーの銀髪もめちゃくちゃに舞い上がる。
クレアが驚きの声を上げた。
「これほどの風圧……風の魔法でも見たことがないぞ」
ステラの結界が揺れ、風に削られながらも、その顔には驚きと喜びが浮かんでいた。
「電次郎さん……! これなら……!」
幹部どもはもはや、まともに詠唱もできず、暴風に煽られて互いにぶつかり合っていた。
それでも、ドルガスはなお兵器を構えようと踏みとどまる。
「ぬ、ぬかすなああっ!」
奴の声も風に掻き消され、まともに届かない。
「これで……全部めちゃくちゃにしてやる!」
俺は産業用送風機にさらに電力を叩き込み、暴風を極限まで高めた。
魔王城の玉座の間が、嵐そのものに変わる。
クレアの苦悶の声が耳に届いた。彼女の剣先は鈍り、額には汗が滲んでいる。
サンダルも息を荒げ、振るう大剣が重たそうだ。あの馬鹿力でさえも、幹部どもの無尽蔵な魔法攻撃を受けきれなくなってきている。
「くそ……これじゃ埒があかねぇ」
俺は歯を食いしばりながら、電子レンジの扉を盾に魔弾を防いだ。だが、衝撃が腕を通じて痺れる。扉が割れたら、それで終わりだ。
横目で見ると、ステラの結界はすでにヒビだらけだった。
「はぁっ……くっ……!」
小柄な体で必死に耐えてるが、声が震えてる。あと数発持ちこたえられるかどうかも怪しい。
ジェダもオークの姿を保ったまま、息を荒げて前に立ち続けている。肩で呼吸しながら魔弾を叩き落としていたが、その動きは目に見えて鈍っていた。
「電次郎さん……長くは……!」
ステラの声はか細い。俺の胸がぎゅっと締めつけられる。
……これじゃあ駄目だ。
ただ守ってるだけじゃ、誰かが倒れる。犠牲になる魔物がどんどん増えてる。床にはすでに、魔王を庇って力尽きた連中が何体も転がっている。
「どうすりゃいい……!」
俺は頭を抱えたくなる。だがそんな暇すらない。次の光線が飛んでくる、扉で受け止める、痺れる、倒れそうになる。繰り返しだ。
この乱戦を終わらせるには……
その瞬間、ふと昔のことを思い出した。
近所の工場に修理に呼ばれた、あのバカでかい機械……。
人間よりもでけぇ羽根が唸りをあげて、作業場の埃を全部吹き飛ばす。あの轟音、暴風……。
──そうだ、アレなら!
取り出せるか?
いや……
「……やるしかねぇ」
俺は息を吸い込み、震える手を宙に伸ばした。
「来いっ!」
空間から現れたのは、鈍色の巨体だった。
ゴウン、と玉座の間の床が震える。幅二メートルはあろうかという鉄製の筐体に、ぐるぐる回転する巨大なファン。産業用送風機──熱気むんむんの工場に風を送り込む怪物だ。
「な、なんだ……?」
幹部どもの顔が一斉にこちらを向いた。
バンボルトが鼻で笑う。
「はっ、なんだよそれは。ぶかっこうな鉄の塊じゃないか」
「……笑っていられるのも今の内だぜ」
俺は低く吐き捨てる。
「出力によっては、人気をも吹き飛ばす代物だ……それに俺の力が加われば!」
俺は全身の力を込めて、電力を流し込んだ。
次の瞬間──
ゴォォォォォォッ‼
鼓膜を破るような轟音が玉座の間に響き渡る。
暴風が一気に広がり、幹部たちのローブをはためかせ、床の瓦礫や血の匂いまで吹き飛ばした。
「ぐぉっ!?」
「馬鹿な、立っていられん……!」
幹部どもが次々と膝をつき、足を踏ん張るのがやっとになる。
「くっ、詠唱が……!」
骸骨が杖を掲げようとしたが、口にした呪文は風にかき消される。
魔力の粒子そのものが暴風に散らされ、魔法の形を成す前に空気へ霧散していた。
「……マナが……消える……!?」
幹部たちが叫ぶ。
俺は叫び返した。
「こりゃいいぜ、魔法もマナもまとめて全部吹き飛ばせっ」
俺の髪もシービーの銀髪もめちゃくちゃに舞い上がる。
クレアが驚きの声を上げた。
「これほどの風圧……風の魔法でも見たことがないぞ」
ステラの結界が揺れ、風に削られながらも、その顔には驚きと喜びが浮かんでいた。
「電次郎さん……! これなら……!」
幹部どもはもはや、まともに詠唱もできず、暴風に煽られて互いにぶつかり合っていた。
それでも、ドルガスはなお兵器を構えようと踏みとどまる。
「ぬ、ぬかすなああっ!」
奴の声も風に掻き消され、まともに届かない。
「これで……全部めちゃくちゃにしてやる!」
俺は産業用送風機にさらに電力を叩き込み、暴風を極限まで高めた。
魔王城の玉座の間が、嵐そのものに変わる。
10
あなたにおすすめの小説
神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~
於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。
現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!
の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては……
(カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています)
(イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる