しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

文字の大きさ
107 / 130

ライオネット発狂す

しおりを挟む
♦-/-/-//-/-魔王城/--/-/-/--/♦

 ゴウゴウと唸る工場扇が、反乱軍の魔物たちを押しとどめていた。
 強風に、巨体のオーガすら膝を折る。
 放たれる魔法も風に押し流されるように消えていく。

 「いけるぞコレ、完全に相手の動きを封じ込めている」
 「けどよ、おっさん。この後どうすんだ?」
 ルクスの傍でシービーが冷静に呟いた。

 この後……。確かに、今は工場扇のおかげで相手は身動き取れないが、決定打にはなっていない。
 すぐさま次の打開策を講じて来るかもしれないし、想定外の出力で動いている工場扇が熱で壊れてしまうかも……いや、壊れたら、また新しい物を取り出せばいいんだけど。

 そのとき、冷たい声が割り込んだ。
 「これ以上、魔物同士で争うのは無意味だ」

 振り返ると、インスーラが片腕を上げて立っていた。
 眼鏡の奥の瞳は氷のように澄んでいて、風に乱れる黒髪も意に介さない。
 「我らは血の気の多い魔物、衝突は避けがたい……だが、だからこそここで収めねばならん。命を賭すに値する戦いは、別にあるはずだ」
 インスーラは、真っ直ぐに相手方を見据えて、声を荒げてそう言った。

 まさかこいつが、この場を収める立場を取るなんて……でも、部外者の言葉よりも聞いてくれるかもしれない……なんだか良いところを持っていかれたような気もするけど、ここは見守るのもありか。
 ルクスに視線を移すと、彼女もまた小さく頷いた。

 俺は、ゆっくりと工場扇への電力供給を弱めた。
 でも、気を抜くのは危険だ。そよ風のままにていつでも最大出力を出せるようにスタンバっておこう。

 「あん? なんだよ、もう終わりか?」
 サンダルが不満そうに呟いた。
 「お前もだいぶ疲労がきているだろう? ここは当事者同士に任せてみよう」
 クレアが額の汗拭って、サンダルの肩に手を添えた。
 「俺様は、まだやれるっての……」
 そうは言ったが、サンダルはバスターブレードを地面に突き立て、小さく体を預けた。

 ステラもジェダくんも、大きく息を吐いた。
 
 ──そのときだった。

 「……資料だけでは足りない」
 乾いた女の声が背筋を走らせた。
 柱の陰から現れたのは、ライオネットだった。
 長いパーマがそよ風に踊り、紅い唇が不敵に歪む。

 「研究の最後のピースには、その魔道具が必要だ」
 視線の先には、ドルガスが居た。
 ライオネットはフラフラとおぼつかない足で、ドルガスに掴みかかった。
 その顔は狂気に満ちていて、とても正気には見えない。

 「なんじゃ! お主、また行方を眩ませたと思っておったが……」
 ドルガスの顔が一気に引き攣る。
 あんな顔で迫られたら、流石のやつでもビビるか。 

 「それを渡せば、この場から消えてやるっ」
 ライオネットは、ドルガスの持つ改造電子レンジに手を掛けた。
 「なっ、これは唯一の成功機じゃ、まだ渡せん」
 電子レンジを必死に抱え込むドルガス──改造に成功したのは、持っているやつだけか……あんな殺人兵器を量産されたら、大変なことになるぞ。

 「私が……私ならばソレをさらに素晴らしい兵器(モノ)に変えてあげられる。黙って渡せ」
 ライオネットの声は、冷酷でありながらどこか陶酔めいていた。
 「ふざけるなっ、これはワシのじゃ、お前になど扱えぬわ」
 ドルガスは必死にライオネットを振り払おうともがく。

 周囲も息を呑み、見守るしかない。
 インスーラですら、眉をひそめて一歩退いた。

 「渡せぇぇぇぇ」
 「来るなぁぁぁっ!」
 ドルガスが絶叫し、電子レンジを振り回した。
 次の瞬間、レンジが起動したのか、眩い光が放たれて、思わず目が眩む。

 「先生っ!!」
 悲鳴が聞こえた。
 ステラだ。彼女がライオネットに駆け寄っている。
 まさか、レンジの光線がライオネットに当たってしまったのか?

 ライオネットは膝を折り、その場で崩れ落ちてしまった。

 「……なんだい、こんな所まで来て……」
 ステラの姿を確認したライオネットが掠れた声で喋っているが、よく聞こえない。

 「もうお前に教えることはなにもないよ……どことなりへと行きな……」
 「先生……私は、知っています。先生が電力を使ってしたいこと……それに、私はただ……先生と一緒に居たいだけ……」
 
 ステラが叫び、涙を流し、必死にライオネットの体を支えようとする。

 「……嫌いだよ、勘のいい子はね……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...