しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさん自戒す

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 「……すまねぇ、ルクス」
 俺は力なく膝をつき、額の汗を拭った。
 「乱戦で倒れた奴ら、全員を蘇生することはできなかった……。やっぱり心肺停止から八分以上経過しちまったら、この世界の住人でも手遅れになるらしい」
 声が震え、視界が滲む。
 くそう……家電召喚で、なんでもできると思ってた。救える命があったのに、俺は救えなかった。

 涙を拭えずにいると、隣でルクスが静かに首を振った。
 「……ありがとう。その気持ちだけで充分だ」
 そう言って彼女は俺の手を取り、優しく包み込む。
 「その力と、その優しさ……やはり貴方は私に必要な人だ」

 ルクスの綺麗な瞳が、じっと俺を見つめて来る。
 その真っ直ぐで真剣な眼差しに、目を逸らすことができない。
 そして、ルクスの顔がゆっくりと近づいてくる……。

 「お、おっさん……それに魔王様。みんなが見てるっつーの!」
 シービーが慌てて二人の間に割り込んだ。
 まるで誓いの口づけでもしそうな勢いだった俺たちは、思わず顔を逸らす。

 緊張した空気を裂くように、ステラの声が響いた。
 「電次郎さん、本当に先生は大丈夫なんですか!?」
 必死の表情。あいつにとって、ライオネットはそれほど大きな存在なんだ。

 「……ああ、たぶんショックで気を失っているだけだ。呼吸も落ち着いてるから、しばらくすれば目覚めると思う」
 俺の答えに、ステラは安堵の表情を浮かべた。肩の力が抜けるのが見て取れた。

 「それよりも……」俺は辺りを見回した。
 反乱を主導した幹部たちが、居心地悪そうに肩をすくめ、ソワソワと落ち着きを失っている。やつらがまた暴れ出したらと思うと……。
 「この状況、どうするつもりだ?」
 俺はルクスに尋ねた。
 ドルガスの持っていた、電子レンジ兵器はサンダルにぶっ壊してもらったけど、流石にこっちも皆、疲労が激しい。

 「……大丈夫かと問うなら、答えは否だ。しかし、兵器が破壊された今、我に効果的な攻撃を与えられる者は少ない」
 ルクスは凛々しい顔で呟いた。
 良かった、けど……。
 「こんなことを企てる奴等を城に置いといていいのか? 平和な世界を目指す以前の問題だと思うが」
 「代々続く悪しき習慣だ。魔物は元来、血の気が多い。力ある者が統治しなければならないといった伝統も相まって、このようなことは度々起こる」
 度々……大変なんだな魔物の世界も。
 「今回ばかりは、肝が冷えたがな」
 ルクスの表情には余裕が見える。
 本当に大丈夫そうだな。

 「俺のせいだな、訳のわからない研究に手を貸してしまっていたようだ」
 魔王領を復興させ、争いのない平和な国にするための研究だとばかり思っていたけど、やっぱり魔物も一枚岩じゃないってことが分かった。
 今後は、もっと警戒しなくちゃな。

 「そうだな、貴方の偉大なその力は、使い方を間違えれば兵器にも成り得る。だが、善きことに扱えば効果は絶大だ。今回の件で、それは確かなものとなった。魔法を使わずに蘇生を行う技術……それがあれば回復魔法が不得意な魔族の延命に繋がるだろう」
 魔物は回復魔法が下手なのか、まぁ見た目的にそうかもな。
 それに電化製品も使い方を間違えれば兵器になるってことも確かだ。
 戦争に使われる兵器だって、電力で動く物も多い。
 だけど、みんなを笑顔にして、命を助けられる医療器具だって電力が必要だ。
 
 今後は、むやみやたらに家電召喚するのは控えないとな、ドルガスみたいな奴に目を付けられたら、もっとヤバイ兵器にされそうだ。
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