しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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攻撃方法発見す

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 ジェダとサンダルが帰って来たのは翌日の事だった。

 「……戻ったか」
 王様の低い声に、サンダルは膝を折り報告を始める。

 「ドラゴンの里と魔王領の中間地点。蠢く巨大な闇の物体を確認しました。あれが“厄災の獣”で間違いないでしょう」
 サンダルは城の外に居る異形が、この城よりも大きくなった存在だと付け加えた。
 ……そんなバケモン、どうやって止めるんだよ。
 俺の心配は、ジェダくんの言葉で露になった。

 「俺の仲間にも会いました。みんなで応戦したけど、どんな魔法も刃も通じなかった。竜の炎ですら、奴の皮膚を揺らしもしなかった」
 広間に息を呑む音が響く。
 俺は背筋が冷えるのを感じた。魔法が効かない相手。あれだけ誇り高いサンダルが声を震わせるほどの存在……。

 「それだけではない……」
 サンダルが続けた。
 「ここだけじゃなかった。学園都市エルグラッドでも結界が縮み始めている。西の同盟国も同じだ。恐らく世界中で……同じ現象が起きている」
 その言葉で、王の顔から血の気が引いた。
 姫様は思わず口元を押さえ、ミカは眉を寄せて黙り込んだ。

 学園が……ライミ、スイラン、トレス……他のクラスメイトや先生たちは大丈夫だろうか……それに他の国でも、って……。
 俺は拳を握った。だが頭の中は真っ白だった。
 どうやって立ち向かえっていうんだ。
 魔法が効かない? ドラゴン族すら通じない? 人間に何ができる……?

 「魔王様のもとへ戻らなきゃ……」
 低く、震えるシービー声が響いた。
 小さな身体を精一杯に伸ばし、潤んだ瞳で王を見据えている。
 「無謀だ。魔王城に辿り着く前に死ぬぞ」
 サンダルの声は、立ち上がり苛立っている様に見える。

 「で、でも……魔王様は、あたいの……無謀でも、一人でも帰るからな」
 シービーは瞳を潤ませて強がった。
 俺は、震えるシービーの肩に手を乗せて「待ってろ、俺も行く」と呟いた。
 サンダルや、ドラゴン族でも止められないバケモノ……俺が行ってどうこうできる問題じゃないのは分かっているが、それでもここで立ち止まっているよりはマシだ。

 「すまないジェダくん、俺とシービーを……」
 そう言いかけた時だった。

 「魔法が効かないのなら……」
 エネッタの声だった。
 何かに気付いたような、そんな明るい声色でジェダくんを見た。
 「そうか、アレなら」
 ジェダくんも同じ考えを思いついたのだろうか?

 「おじさま、学園での戦い、覚えておられますか?」
 「学園での……?」
 「魔力を吸収するゴーレムに、電次郎さんが放った攻撃です。ほとんど魔力を込めずに撃ちましたよね」
 ゴーレム? あの時の感覚が蘇る。
 スタンガンを使った攻撃……そういえば、ほとんど魔力を込めずに放った攻撃だったな、確かにゴーレムは“超電磁砲”で沈んだ。

 「魔法ではなく……電力で攻撃したというのか?」
 隣でミカちゃんが小さく呟いた。驚きと戸惑いが混じる声だった。
 「なるほど、エネルギーだと考えれば、攻撃への転用も可能か……」
 ミカちゃんは怪訝な顔をした。
 俺も電化製品を攻撃手段にはしたくなかった。
 けど、誰かを守る為には必要なんだ。

 「……試す価値はありそうじゃな」
 王様が俺の肩に手を乗せ、城の外で蠢く異形に視線をやった。

 俺は深呼吸し、空間からスタンガンやバッテリーパックを取り出した。学園でゴーレムを撃ち抜いた“あの方法”を再現する。

 だが一人の力じゃ足りない。あのときも仲間が魔力を通して助けてくれた。
 「ミカちゃん、サンダル、クレア、ジェダ、エネッタ……そして王様。少しだけでいい、力を貸してほしい」
 皆が頷いた。迷いはなかった。
 俺はスタンガンを複数並べて配線を繋ぎ、バッテリーに接続する。銃身代わりの金属筒を中央に据え、放電を一点に集中させる仕組みだ。

 「この中に、手を重ねてください」
 俺が指示すると、ミカが最初に手を置き、続けてサンダル、クレア、ジェダ、エネッタ、そして王様も静かに掌を重ねた。

 「ほんの少しでいい。力を絞り取るつもりはない。ただ、電気と繋げる“導線”になってくれ」
 俺の言葉に皆が頷いた。緊張が空気を張りつめる。

 スイッチを入れると、唸るような音が響いた。スタンガンが青白く火花を散らし、魔力が脈動のように伝わってきた。
 ……重くはない。むしろ驚くほど滑らかだ。

 「奴等を活性化させぬよう、魔力は少量でじゃぞ……」ミカが息を呑む。
 俺も頷いた。この方法は、ほんの僅かな魔力が加わるだけで、電力が何倍にも増幅されることが分かっている。

 「行くぞッ!」
 俺は銃身を異形の群れに向け、引き金代わりのスイッチを押し込んだ。

 轟音。
 白熱の光条が一直線に走り、夜明け前の闇を切り裂いた。

 群れの中央にいた異形が、悲鳴を上げる間もなく消し飛ぶ。残滓は煙にさえならず、影ごと焼き払われた。
 地面が震え、風が巻き起こる。皆が目を見開いた。

 「効いた……!」クレアが叫ぶ。
 「確かに通じる、すげぇぞ」サンダルが驚き俺の背中を叩いた。
 王様も静かに頷いた。

 だが、安堵は束の間だった。消えた影の背後から、新たな異形が這い出してくる。穴を埋めるように、次から次へと。
 「くっ、きりがねぇ……!」俺は奥歯を噛み締めた。

 「けれど……」ミカちゃんが息を整え、群れを見据える。
 「本体を絶てば、これらも消える可能性はある……」
 ジェダが低く唸る。
 「つまり、奴の巣に切り込むしかない」

 俺は超電磁砲の銃身を見下ろした。
 仲間と繋がり、少量の魔力を借りるだけで、ここまでの威力を引き出せる。──この力なら、獣の本体に届くかもしれない。

 「なら決まりだ」俺は息を吐き、皆を振り返った。
 「城の外で群れと遊んでる暇はねぇ。本体をぶっ倒しに行く。……魔王城まで」
 皆の瞳に決意が宿る。恐怖は消えない。けど、前に進むしかない。

 異形がまた群れを成し、結界を蝕む音が遠くで響く。
 その中心で蠢く“厄災の獣”。
 そこに全てをぶつけるため、俺たちは再び立ち上がった。
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