しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさん習得す

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 「へぇ、この世界って……思ったより“テンプレ”なんだな」

 エルナとの会話練習もずいぶん板についてきたある日、俺はぽつりとそう漏らした。

 聞けば、ここは『ボルトリア王国』という中規模の王国で、いま俺が暮らしている村はその北部、山間の外れにある『コイルの村』という場所らしい。

 生活は農業と狩猟が中心で、貨幣は銅貨・銀貨・金貨の三種類。
 流通もあるにはあるが、街まではかなり遠いらしく、村人のほとんどは自給自足に近い生活をしている。

 「ここの人たち、優しいよな。……ま、最初は警戒もされてたけど」

 「うん。でも、電のおじちゃん、道具いっぱい直してくれたし、みんな感謝してるよ」

 エルナは笑顔で言うが、俺の方はむしろ村の人たちに助けられてばっかだ。

 炊事は不慣れな俺に代わって世話してくれるし、動けなかった頃は、交代で見舞いにまで来てくれた。
 
 「ほんと、ありがてぇよな……」

 エルナと話していると、この世界のことが少しずつわかってきた。

 たとえば──この世界には、魔法がある。

 火、水、風、雷、光、闇、召喚の七系統。
 ただし、誰でも使えるわけじゃない。

 例えば、回復魔法は“神官”と呼ばれる神に仕える者しか使えない。神を信じる心が魔法の源になるんだと。
 攻撃系の魔法も、属性ごとに魔力の質が違うから、基本的には一系統しか扱えない。

 「へぇ……ってことは、俺の“雷っぽい電気”と、“レンジ召喚”って、けっこう珍しいどころじゃないのか?」

 「うん。雷魔法を使える人はとても少ないし、召喚魔法なんて、村では見たことないよ」

 ──やっぱり、俺の能力は、この世界でもちょっとイレギュラーらしい。

 どうやら家電は、俺が実際に使ったことのある物なら、この世界に持ってこれるっぽい。
 試しにドライヤーやシェーバーなんかを召喚してみたら、見事に成功した。

 しかも、戻すことも可能だ。収納する感覚で、“しまう”ことができる。
 出し入れ自由の家電なんて、某猫型ロボットもびっくりだ。

 ただし──電力の供給は俺がやらないとダメらしい。
 電池やバッテリーが入っていても、この世界の空気というか、何かが干渉しているのか、まったく動かなかった。

 便利なんだか不便なんだか、よくわからん魔法だ。
 あんまり派手に出し入れすると、村の人たちに不審がられるし、今は控えておくことにした。

 召喚魔法っていうより、俺の場合は“家電限定の物品召喚”だが……。
 
 召喚できるのは、自分が構造をちゃんと理解してる家電だけ。適当に形を思い浮かべてもダメらしい。
 もちろん壊れたら電力を送っても、ただのゴミと化す。でも、魔力さえ残っていれば、また同じものを呼び出すことはできる。

 つまり、“魔力=電力供給”。魔法と電気が、俺の中でつながってるらしい。

 「それ、すごい能力だよ。電のおじちゃん、ほんとに特別なんだね!」

 「やめろって……そういうの、照れるだろ……」

 顔を赤らめながら頭をかく俺に、エルナはくすっと笑った。

 魔法だけじゃない。この世界には“魔物”もいる。

 ゴブリンみたいな小型のやつから、空を飛ぶドラゴンまで。
 魔物が多く出る地域では、冒険者や傭兵が雇われて村を守っているらしい。

 「魔王ってのも、ほんとにいるのか?」

 「いるよ。すっごく遠い場所だけど、そこから魔物があふれてるって」

 魔王の名前を出すと、エルナの表情が少し曇った。

 「……コイルの村はまだ平和だけど、近くの村は何度か魔物に襲われたことがあるんだって。だから、外に出るときは、気をつけてね」

 「そっか……気をつける」

 ──俺がゴブリン3匹にボコられたことは、もう忘れてくれ。

 でも、俺の“電力供給”と“家電召喚”が役に立つなら──
 いや、役に立たせたい。

 なんだかんだ言って、ここの人たちが、俺を受け入れてくれたんだ。

 その恩返し、少しずつでもしていかねぇとな。
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