しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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副団長困惑す

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♦-/-/-//-/-ボルトリア騎士団:副団長クレア・ヴォルト視点/--/-/-/--/♦

 コイルの村に到着した時点で、私はある程度の予測を立てていた。

 それは、コイルの村から発せられる魔力の渦にある。
 フリッツもそうだが、鍛錬を怠っている者、魔力に精通していない者には感知できないかもしれないが、これだけ強大な魔力を制御もせず垂れ流していれば、危険この上ない。
 おそらく、あの魔道具を使ったのも、そいつだろう。

 一体どんな奴なんだ?
 まさか、魔物か?
 いや、もしかすると──もう既に、コイルの村は魔物によって……。

 「急ぐぞ、フリッツ!」
 「へ? どうかしたんですか?」
 「村が魔物の危険に晒されている可能性がある。あるいは魔王軍の残党かもしれん……」
 「魔王軍? 勇者ジオ・ヒューズの制圧で、あいつら大人しくしてるはずじゃ?」
 「大人しくなっているだけだ。またいつ動き出すか分からん。用心するに越したことはない」
 この嫌な予感が、ただの杞憂であればいいが……。

 村に着いた私は、愕然とした。

 「まったくもって平和そうですね、副団長」
 フリッツの皮肉めいた声が耳に付いた。

 確かに、村は平和そのもの。いや、むしろ他の村よりも活気に満ちている。
 どうしてだ?

 「おいコラ、ガキどもぉー、エルナん家を汚すんじゃないよー。まったく……。まぁ楽しいのは良いことなんだけどさぁ、掃除する身にもなってくれよなぁ」

 そんな嘆きが聞こえた方に目を向けると、一人の男が魔法を使った。
 しかも、かなり高度な召喚魔法だ。

 何もない空間から現れた“それ”は、子供たちが汚した家の前のウッドデッキを、みるみるうちに綺麗にしていく。
 まるで、泥を吸い取るように──いや、実際に吸っていた。

 素晴らしい魔道具だ……家に一台欲しいくらいだ。
 ──いや、感心している場合ではない。

 あいつだ。
 魔力を垂れ流している張本人。

 「失礼、あなたはこの村の住人ですか?」
 角が立たないように、静かに尋ねる。

 「へ? 俺……違うけど」

 男の年齢は、中年よりやや若く見える。かつて鍛えていた名残か、がっしりした肩幅に、やや緩みのある体型。  顎には整えられた髭。柔らかな目元には、不思議と安心感がある。  まるで、どこかで会ったことがあるような。そう、例えるなら近所のおじさんのような懐かしさすら感じさせた。

 「では、どこから来た」
 魔物が人間に化けている可能性もある。返答次第では、この場で──。

 「えーと、地球ってとこから来たけど……わかんねぇよな。俺だってまだよく分かってねぇんだよ。すまねーな、ねーちゃん」

 チキュウ? 聞いたことのない地名だ。
 嘘をついているようには見えない。少なくとも、魔王領ではなさそうだ。

 「ここで何をしている?」
 「何って、飯食って、働いて、寝てるだけだよ。あ、そうだ。おにぎり余ってるけど、食うか? ってあれ? ねーちゃん誰だっけ? 会ってない村の人、まだいたんだな」

 おにぎり? この白いふわふわした物体を食べるというのか?

 「おっちゃん、それ俺が食べるー!」

 近くで遊んでいた子供が、おにぎりを奪って口に放り込んだ。
 実に美味しそうに食べている。大丈夫なのか……?

 ぐぅぅ~。
 ──しまった。王都を出てから、まだ何も口にしていなかった。

 「……まだあるぞ、ねーちゃん。どうだ? うめーぞ、俺の塩にぎりは」

 くっ、なんという香り……。
 粒の一つ一つが艶やかで、宝石のように輝いている。
 子供が食べても平気そうだ。ならば……。

 「かたじけない」

 「おいおい、大丈夫かよ副団長……ったく不用心なとこあるよな~」

 フリッツの小言を無視した。
 私は人間だ。そして空腹では、いざというときに動けない。
 おにぎりとやらを、恐る恐る口に運んだ。

 「うっ……」
 「どうだ? うめぇだろ?」

 ──なんという味だ。
 これまでの人生で味わったことのない、美味。
 口いっぱいに広がる甘み、そして後からじんわりくる塩気。
 それらが見事に調和し、私の味覚は崩壊していく。

 この男、一体何者なのだ。
 
 汚れを一瞬で一掃し、信じられないほど美味しい料理を作り出す。
 ……こんな男が私の伴侶なら、家のことを任せて、私は騎士道に専念できる──

 いかん、副団長としてあるまじき妄想だ。
 私の心を乱す不届き者め。

 「きゃああああっ!」

 ──そのとき、村の奥から悲鳴が響いた。

 仲間がいたか? 正体を現したな、魔物め──!
 


______________________

お読みいただき、ありがとうございます。
みなさまの応援やブックマークが、電次郎のやる気スイッチに直結しております。
これからも、さまざまな家電を駆使して活躍する電次郎を、どうぞよろしくお願いいたします。

【追記】あちらの世界でも企業案件、随時承り中です。
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