しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさん決心す

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 「ゴブリンだー、ゴブリンの群れが襲ってきたぞー」
 村の奥から響いた悲鳴に、俺は一瞬で血の気が引いた。
 まさか、あの時のやつらか? いや、今度は仲間を引き連れてきた?

 「くっそ、どうする……どうする……!」

 俺は自室に駆け戻り、思考を巡らせる。
 また電子レンジを呼んで、一斉に爆発させるか? いや、あれは危険すぎる。
 村人にも被害が出ちまう。

 じゃあ……掃除機で吸ってみる?
 いや、吸ってどうする。消化する機能なんてない。
 吸ったところで、どこに吐き出すんだよ。

 「うーん、うーん……!」
 どうしよう。どうすれば、みんなを助けられる。  頭を抱えたまま、俺はふと、自分の手を見た。  ここから流れる電力──いや、魔力。  なんか適当な棒にでも魔法を込めれば電気を帯びた武器になるんじゃないか? 昔アニメで観たことあるぜ、サンダーブレードってやつだ。

 「なら根性見せてやる!」
 俺は“吸引力の衰えない頑丈な掃除機”を召喚し、柄の部分をしっかり握り、魔力を込めた……なにも起こらなかった。

 「くそう、どうにでもなれ、いくぞぉぉぉぉおおおおっ!」
 叫びながら村の広場へ駆け出すと、そこには十体以上のゴブリンたちがうごめいていた。
 村人たちは避難を始めている。

 俺は掃除機の柄をぶん回し、ゴブリンの一匹に突撃した──

 「加勢する!」

 次の瞬間、鮮やかな金色の影が俺の前に躍り出た。  剣を手にしたねーちゃんだ。  風のように駆け、雷のように斬る。  その動きは、まさに“戦場の華”。

 「す、すげぇ……」

 俺が呆然と見ている間にも、次々とゴブリンたちが地面に倒れていく。
 その一撃一撃が、的確すぎて逆に怖い。

 続いてやってきたのは、ねーちゃんの連れの若いにちゃん。  なんだか厳つい鎧に似つかわしくないチャラさを感じるが、構えは無駄がなく、鋭い。剣道やってたから分かる。このにーちゃんも強いぞ。

 「へいへい、こっちは通行止めだぜ!」
 軽く跳ねるように間合いを取って、敵の注意を集めながら剣を突き出す。  その剣がゴブリンの肩や足を的確に貫き、動きを封じる。

 動きが鈍ったゴブリンにねーちゃんがトドメを差していく。完璧な連携だ。

 あっという間に、ゴブリンの群れは壊滅寸前になっていた。
 「……強すぎだろ、ハリウッド俳優かよ」
 まるで映画を観ているかのような華麗な立ち回りだった。

 やがて、残った数体のゴブリンたちは、悲鳴を上げながら森へ逃げ込んでいった。 

 よかったぁ、村は守られた。
 なんもできなかったけど、ほんと良かった。

 「おねーちゃんっ!」
 駆け寄ってきたエルナが、ねーちゃんに抱きついた。  ねーちゃんは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにやさしく抱き返した。

 「エルナ! 元気だったか?」
 なんだ、二人は知り合いなのか? でも、なんだかねーちゃんは心配そうな顔をしているな。

 「うん、あのね、ほんとは元気なかったんだけど、電のおじちゃんが来てくれてね。おじちゃんは凄いんだよ、ゴブリンから私を助けてくれたし、美味しいおにぎりも作ってくれるし、お掃除も上手なんだ」

 おいおい、エルナさん、あんまり褒めてくれるなよ。照れるじゃねーか……今回は全然活躍できなかったけどな。

 「二人は、知り合いなのか?」
 「……ああ。昔、ゴブリンが村の近くまで来たときな。私も騎士団の一員として、戦ったんだ……だが、彼女の父親を守ることができなかった……すまなかったなエルナ」
 そうか、そんときの……辛かったろうなぁ、くそう、エルナのことを考えると、こっちまで泣きそうだぜ。



 「もう、大丈夫だよクレナおねーちゃん。わたし、本当に元気になったんだから」
 そう言ってエルナは俺の元に駆け寄り、手を握った。



 「そうか、貴殿、まだ名前を聞いていなかったな」 
 ねーちゃんがゆっくりとこちらに歩いてきた。近くで見ると本当にべっぴんさんだ。

 「えっと、轟 電次郎っていいます。独身です」
 思わずかしこまってしまった。なんで独身って情報が出るんだよ、下心丸見えじゃねか、バカか俺は。

 「そうか、では電次郎どの、即刻この村から出て行ってもらおうか」
 「は? えええええ? なんでよ」
 全然意味が分からなかった。これが俗に言う、追放ってやつかとも思った。


 「すまない、言い方が悪かった。ゴブリンがこの村を襲ったのは、お前のせいだ。早くここから出て行ってくれ」
 いやいや、もっと悪くなってるし。エルナも困惑している。

 「いきなり訪ねてきて、その言い方はないだろ? ゴブリンを蹴散らしてくれたのは感謝するけど、俺だってなぁ村のために頑張ってんだ。出てかないぞ、なぁエルナ」
 子供を味方に付ければ、こっちのもんだ。

 「クレアおねーちゃんが言うなら……」
 って、おーい、味方居なくなっちったよ。

 「でも、電おじちゃん……」
 ほらぁ、泣きそうになった。あーあ、エルナ泣かしたら村のみんなも黙っちゃいないぞ。

 「よく聞いてくれエルナ、この電次郎というおじさんは、魔力が高い。それは評価できる。なぞの便利道具もなかなかのものだ。独身ってのも選択肢に入る……いや、それは忘れてくれ。とにかく、魔力が高いゆえに外部からのサーチに脆いのだ」

 「どういうこと?」
 ちゃんとした説明を聞いて、少し納得した。

 どうやら俺は魔力ってやつをコントロールできていないらしい。そらそうだ、転生して間もないし、説明してくれる女神やらも居なかった。川の流れのように、流されるまま、今にいたるのだからな。とにかく、目に見えない魔力ってやつは訓練された強者からは、もろバレらしくて、たぶんゴブリンのボスが、ここに攻めろって命令したとかなんとか……王都の周りの村々には、大魔導士ってすげー奴の結界が張られてて、普通は魔物に見つからないようになってるんだとかも言ってた……とにかく、俺のせいで村のみんなを危険に晒しているってことだった。

 納得はいかないけど、真面目な顔のねーちゃんがエルナや村のみんなを守りたいって気持ちが伝わってきて、信じるほかないって結論だ。


 「だから、王都で学べ、訓練して自分の力を制御できるようになるんだ」
 ねーちゃんの言葉に、俺は「ちょっと考えさせてくれ」って返した。

 エルナもなんだか、元気がなくなったようだ。
 ちきしょうめ、俺が不甲斐ないばかりに……。

 エルナと一緒に家に帰り、エルナの母ちゃんとテーブルを囲んで、今後のことを静かに話した。

 「……おじちゃん」
 いつもの元気が嘘みたいに小さな声。
 エルナは下を向いて、テーブルの端を指でなぞっていた。

 「俺は行くよエルナ。でもな、俺は帰ってくる。絶対にだ」
 ぶっちゃけ、またゴブリン達が襲ってきたら、俺だけでなんとかできるハズがねぇのは分かってる。みんなの役に立ちたいのに、逆に迷惑かけてたんじゃ世話ねぇよ。
 大丈夫だ。電気屋が傾いた時だって死に物狂いで頑張ってきた。魔力のコントロールなんて、それに比べれば、どおってこたぁねぇだろさ。

 俯くエルナの頭を撫でると、ぎゅっと目をつむって──それでも、顔を上げて言った。
 「わたしも、がんばる。おじちゃんがいなくても、泣かないようにする。だから……おじちゃんも、がんばってね」

 「……ああ。ぜってぇ強くなって、帰ってくる。今度は、“おにぎりだけじゃないヒーロー”になってな」
 エルナが、少しだけ笑った。

 その笑顔が、まるで春の光みたいに胸にしみて、俺は心の中で小さく誓った。

 ──必ず帰ってくるさ。
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