しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさん疑念す

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 最近、なんだかミカ様とクレアの様子がおかしい。

 「そう根詰めてやると体を壊すぞ電次郎、茶を淹れたから一緒にどうじゃ?」

 「電次郎どの、きょうの特訓はお菓子作りです。魔道具も使っていいですよ」

 「今日はわしの奢りじゃ、ぬしの“おにぎり”には負けるが、ここらじゃ最高級品の肉料理でも食べて精を出すのじゃ」

 「電次郎……家事以外の趣味ってあるんですか? いえいえ、深い意味はありません。ちょっと気になっただけです」

 「この国におれば魔力の制御なぞ気にせんでもええぞ、なんならエルナとやらを国に呼び寄せよ、ともにここで暮らすとよい」

 「電次郎さん、子供は何人くらい欲しいですか? いえいえ、深い意味はありませんよ。今後の人生設計におけるヒントを探しているだけですから」

 「電次郎」「電次郎さん」「電のじ」「電さん」

 やたらと俺に声をかけてくるし、呼び方もやけに馴れ馴れしくなってきた……いや、気にかけてくれるのはありがてぇんだけどよ、なんだかこそばゆいんだよな。

 「電のじよ、おぬしに相談がある」
 騎士団での特訓中に、ミカ様が改まって呼び止めた。
 なんだ? またマッサージか?

 「おぬしの元居た世界のことじゃが」
 「おお、今頃信じてくれたか?」
 誰に話しても、地球のことを信じてくれなかったからな。なんなら俺が夢でも見てたんじゃないかとさえ思ってたよ。

 「珍妙な夢物語じゃが」
 珍妙な夢って言い方は嫌だな。

 「おぬしの職には思うところがある」
 「職? 電気屋のことか?」
 「うむ、家電とかいう様々な魔道具をもって、人々に幸を振りまく素晴らしい考えには興味があるでな」
 「いや、まぁ素晴らしいって言ってもらえるのはありがてぇんだが、ちゃんと金は受け取ってたから、そんなたいそうなこってもねぇよ。人が喜ぶ顔は金よりもいいもんだけどな」
 「ぬしがその職に信念をもっておるなら、この国でそれを実現してみたいとは思わぬか?」
 「……それって、ここで電気屋をやれってこと?」
 寝耳に水とはこのことだ。でも、それができるなら──まさに人生の再出発ってやつだな。

 「うむ、名前は魔道具管理局じゃが」
 「魔道具管理局? ずいぶん取っ付き難い名前だな」
 「ボルトリア国の管理下におかれる部署じゃからな」
 「国の管理?」

 国営の電気屋なんて聞いたことねぇな、電力会社じゃないのか……まぁ、やらせてくれるっていうんなら、やってみたい気もする。

 「悪いようにはせん、ぬしの思惑と合致する妙案じゃと思ったのじゃ」
 「妙案? ってことはまだ本決まりじゃねぇってことだな」
 「うむ、国王と審議会の決議が必要じゃ」
 王様か、そういや同じ城の中に居るのに会ったことないな。

 「魔力の訓練とはいえ、働きもせずに居候ばっかじゃかっこつかねぇって思ってたとこだ。挑戦させてくれ」
 「よい返事じゃ。さっそく進めるとしよう」
 「ありがてぇぜミカ様、よろしくな」

 なんだか特訓にも身が入る気分だぜ。
 最初は慣れなかった西洋の剣も、今じゃ自由に振れるようになったしな。

 「おっ、良い太刀筋だな電さん」
 クレアも、こっちに来た。相変わらず清々しいまでのべっぴんさんだ。

 「なんか良いことでもあったか……ミカちゃん様が来ているということは」
 「うむ、了承を得た。これからわしが王に謁見してくる。ここで待っておれ」
 「頑張れよ、電さん」
 なんだよ、クレアも知ってたのか、人が悪いな。
 ミカ様はなんだか足取り軽く城内へ消えて行った。

 「よう、クレア。元気だったか?」
 っつ、デカっ。こわっ。
 クレアに声を掛けてきた男に、俺は腰を抜かしそうになった。

 「サンダルフォンっ、なんだ遠征から帰っていたのか。お前も元気そうだな」
 クレアの知り合いか? それにしてもデカい男だな。二メートルは余裕であるだろ。
 背中の剣もスゲーし、たしかバスターソードっていうんだよな、かっこええ。
 ライオンみたいな髪型だし、顔の傷も歴戦の猛者って感じだ。

 「ああ、魔物の巣窟を二、三ヶ所ほどぶっ潰してきた」
 「一人でか?」
 「もちろんだ」
 「騎士団を辞めなければ、わたしも手伝ったのに」
 「堅っ苦しいのは苦手だって、知ってるだろ? よくお前は我慢できるよな」
 「だが、国に仕えないと騎士王の称号はもらえんぞ」
 クレア、楽しそうに話してるな。

 「国を守ることに称号など不要。俺は強さを求めるのみ」
 マジかよ、さすが異世界、勇者って感じだ?
 というか、この二人、めっちゃお似合いだな。もしかして付き合ってるのか?

 美人騎士と荒くれ者の勇者……うん、絵になるな。

 「こいつは?」
 勇者が俺に興味を示したようだ。
 世のため人のための心持ちは同じ、ぜひともお近づきになっておきたい。

 「初めまして、轟 電次郎と申します。前は電気屋を営んでおりましたが、わけあってこの世界にお世話になっております。モットーは、あなたの心に寄り添う電気屋さん、ですっ」
 自分で言っといてアレだが、長ったらしいな。名刺があれば、こんなこと言わずにすむのに。

 「デンジロウ……こいつが、あのデンジロウか」

 勇者の顔が鬼の形相へと変わった。

 あれ? おれ、なんかしました?
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