しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさん挑戦す

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 「おめぇ調子に乗ってんじゃねぇぞ……ただのおっさんがよぉ」
 サンダルフォンって奴が顔を近づけて俺を睨んだ。
 その言葉に、クレアは驚いて間に割って入る。

 「まてまてサンダルフォン、電次郎と知り合いか?」
 知らない人です。

 「こいつはなぁ、最低な野郎なんだよ」
 「いや、待て。初対面でそんな言い方はないだろ。自分で言うのもアレだが、最高ではないにしても、最低ではないぞ俺は」
 「いいや、最低の誑し込み野郎だ」
 「誑し込みってなんだよ、俺が誰を何時たらしこんだ? 表でろぉい」

 どんなに屈強な相手だろうと、言い掛かりは許さんぞ。

 「いい度胸だ。今、ここで、引導を渡してやる」
 サンダルフォンは背中のバスターソードに手を掛けた。

 ……それの相手は、ちょっと……無理かな……一回謝るか。
 いや、俺は間違っちゃいねぇ、やってやる。

 そっちがバスターソードなら、こっちはスタンガンだ。最大出力でお見舞いしてやる……あの鋼の肉体に効くかは分からんが、特訓の成果を見せる時だ。

 「やめろ二人とも、ここは神聖な騎士団訓練場だぞ。私怨で剣を交える場所ではない」
 クレアの言う通りだ。ここではみんな一生懸命に自分を磨いている。

 だけど、言い掛かりをつけてきたのはソイツだ。人を誑し込み野郎などと……たらしこみ? こいつまさか……俺とクレアが仲良くしてるのを見て、嫉妬してる? いや、そんなわけ──いやでも、あの目……まさか、本当に?

 焦り始めたその時だった。

 「うおーい、電のじぃ。朗報じゃ朗報じゃ」
 軽やかな足音と共にミカが戻ってきた。
 その瞬間──

 「……!」
 サンダルフォンの顔が真っ赤に染まり、咄嗟にクレアの後ろに隠れた。
 なんだか、さっきまでの威勢も、怖いくらいの威圧感もない。どうしたんだコイツ。

 ミカ様は小さな手を腰に当て、堂々と胸を張って言い放った。
 「王より正式な許可が下りた。審議会を開く手はずが整ったぞ」

 「ま、まじか!? やったぁぁああ!」
 俺は反射的にミカ様を高々と抱き上げて、くるくると一回転──

 「ぬ、ぬぬぬ……や、やめい! わしはそんな軽々しく──あっ、腰が……」
 すぐさま地面に下ろすと、ミカ様は照れくさそうに咳払いをした。
 その様子を見ていたサンダルフォンが、鬼の形相で俺を睨んでいる。

 え? あ、こっち? まさかぁ。

 俺は、ミカの頭をポンポンした。
 「きえぇぇぇぇ」

 クレアの後ろから、小さな奇声が聞こえてくる。

 「なんじゃ、サンダル。帰ってきておったか、元気じゃったか?」
 サンダルフォンを見つけたミカ様が声を掛けた。ってかサンダルって呼ばれてんのか。縮こまってるし、なんだか可愛く見えてきたぞ。

 「ご、ご機嫌うるわしゅうございます。ミ、ミカ様……」
 サンダルは、天を仰ぎながら応えた。
 目も見れないってか?

 「そいでじゃ電のじ。早速じゃが明日から審議会を開いてくれるそうじゃ」
 「明日? 準備もなんもしてないけど……審議会ってどんなことやるんだ?」
 「実技、面談、戦闘技能の三項目じゃ」

 最初の二つはなんとなく分かるけど……。
 「最後の戦闘技能って、いる?」
 「なにをいうておる。ぬしの居た魔物もおらぬ平和な世界と一緒にするでない」

 魔物はいなかったけど、平和かといわれると。

 「自分の身も守れぬ奴に、国務は勤まらん。まぁといっても簡単な戦闘訓練じゃ、今のおぬしなら余裕じゃろ」
 「そ、そうなの?」
 なんか、そう言われると悪い気はしないな。結構頑張ったからな。

 「まぁ悪いようにはせんよ。この大魔導士様が味方じゃからの。大船に乗ったつもりでおれ」
 そう言ってミカ様は、クレアに目配せした気がした。

 まぁ良くわからんが、チャレンジし甲斐はありそうだ。
 明日に備えて、今日は早く寝るか。

 「ありがとなミカ様。やらせてくれるからには、頑張るよ」
 「おお、応援しておるぞ」
 「電さんなら、大丈夫だ。わたしも応援してる」
 クレアも親指を立てて背中を押してくれた。

 なんだか照れるな……後ろで、ものすっごい形相の人居るけど……。


♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦


 ミカもその場を去り、サンダルフォンとクレアが残った。

 電次郎の背中を睨みつけながらサンダルフォンが、クレアに呟いた。
 「戦闘技能の相手は騎士団が選ぶんだよな」
 「ああ、わたしがやろうと思う」

 クレアはミカとの目論見を実行するため、手はずを整えていた。

 「それじゃあ、不公平だろ」
 「いや、別になにかを企んでいるわけじゃないからな」

 クレアは目を泳がせる。

 「ちょっくら団長に頼み込んでくる」
 「え、あっ、ちょっと待ってくれ」

 サンダルフォンは、呼び止めるクレアを気にも留めずに立ち去った。

 「ミカちゃん……どうしよう……」
 クレアは、思い立ち、ミカの後を追った。


♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦


 そして、審議会当日。

 王都の中央庭園に設けられた仮設試験会場には、すでに多くの審査官たちが揃っていた。
 魔導士、技術官僚、貴族、兵站担当。

 玉座には王の姿。

 そして、その傍らに佇むひと際豪勢なドレスを身に纏う姫の姿もあった。
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