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ステラ反抗す
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静まり返った研究塔の一室。
魔導機器の並ぶ壁際には、ステラが立っていた。
彼女の視線の先には、白衣を翻し、背を向けるライオネットの姿。
「先生。……どうして、ゴーレムを暴れさせたんですか?」
静かな声に、ライオネットは眉ひとつ動かさなかった。
ステラは歩を進め、続ける。
「……やっぱり、電次郎さんに関連しているのですか?」
その背中に、ようやく反応があった。ライオネットはゆっくりと振り向き、目を細めて言った。
「不甲斐ない助手に任せていては心許ないのでな」
「わたしの……せいなんですか? 生徒たちが怪我をしたのも、電次郎さんが攫われたのも……全部わたしのせい……ちがう……違います。わたしは電次郎さんを……」
ひどく取り乱すステラに、ライオネットは振り向き、睨むように言った。
「観察対象に対しての情が、どれほど危険なものか、あれほど説いたというのに……それとも、お前もあの男の力に魅入られたか? だとすれば話が早いのだがな。男(道具)の使い方を教える頃合いか?」
ライオネットは揶揄う様に笑った。
道具……この人は、自分以外の者を道具としかみていないのだろうか……。
ステラは俯き、ポケットの中のボイスレコーダーを握りしめた。
おばあちゃんへ掛ける優しい言葉。
子供たちに向ける、期待の心。
未来ある青年を導く、確かな言葉。
その全てを電次郎は”あとで消さないと”、そう言った。
それは、きっと彼のほんの些細な声なのだろう……だから振り返らない。
だから、きっと、本当の彼の言葉なのだ。
ステラは前を向き、はっきりと自分の言葉を声に出した。
「先生は、間違っています。人は道具じゃない。自分の研究のために誰かを傷付けるのは止めて下さい」
その声に、ライオネットの目が一瞬だけ細くなった。
「呆れるわね。あなた、誰のおかげでここに居られると思っているの? 私が間違っているということは、自分自身を否定しているということを理解している?」
「それでも、わたしは……」
ステラは、再び前髪で顔を隠した。
「人が進化するためには、犠牲が必要なのよ、ステラ。
誰もやらないなら、私がやる。ただそれだけのこと。
──あなたも、いつか分かる時が来るわ」
ライオネットもまた背を向け、会話を切った。
その瞬間、研究室の扉が開き、数人の騎士と神官らしき者が慌ただしく歩み入った。
「ライオネット教諭、あなたを複数の規律違反、及び誘拐未遂、実験体への過剰干渉により拘束します。同行願います」
ライオネットの眉がひくりと動いた。
神官の腕章に、見覚えがある。あれは査問委員会……生徒、教師問わず、この学園都市の法を管理する機関の者。
「……ステラ、お前……」
その目が、睨むようにステラを捉える。だがステラは、静かに首を振った。
「わ……わたしじゃありません」
査問委員会の後ろから、二人の生徒が顔を出した。
トレスとスイランだった。
「悪いな、ステラ。通報したのは俺たちだ」
トレスは悔しそうに口を結ぶ。
「電次郎さんとエネッタちゃんへの仕打ちを、見逃すわけにはいかないんだ」
スイランもライオネットを睨む。
「これで電次郎さんが帰ってくるわけじゃないけど……学校の“膿”は排除できる。今はそれで、充分だ」
スイランの淡々とした言葉に、ステラの顔が歪んだ。
「膿……先生を、そんなふうに……」
「ふん、小賢しい真似を」
ライオネットは最後に吐き捨てるように言い、白衣の裾を翻して連行されていく。
その背中を、ステラは震える唇を噛みながら見つめていた。
そして、最後に叫んだ。
「先生……! わたし、先生の優しさを……信じています。罪を償って、帰ってくるのを待っていますから……!」
ライオネットは一度も振り返らなかった。
魔導機器の並ぶ壁際には、ステラが立っていた。
彼女の視線の先には、白衣を翻し、背を向けるライオネットの姿。
「先生。……どうして、ゴーレムを暴れさせたんですか?」
静かな声に、ライオネットは眉ひとつ動かさなかった。
ステラは歩を進め、続ける。
「……やっぱり、電次郎さんに関連しているのですか?」
その背中に、ようやく反応があった。ライオネットはゆっくりと振り向き、目を細めて言った。
「不甲斐ない助手に任せていては心許ないのでな」
「わたしの……せいなんですか? 生徒たちが怪我をしたのも、電次郎さんが攫われたのも……全部わたしのせい……ちがう……違います。わたしは電次郎さんを……」
ひどく取り乱すステラに、ライオネットは振り向き、睨むように言った。
「観察対象に対しての情が、どれほど危険なものか、あれほど説いたというのに……それとも、お前もあの男の力に魅入られたか? だとすれば話が早いのだがな。男(道具)の使い方を教える頃合いか?」
ライオネットは揶揄う様に笑った。
道具……この人は、自分以外の者を道具としかみていないのだろうか……。
ステラは俯き、ポケットの中のボイスレコーダーを握りしめた。
おばあちゃんへ掛ける優しい言葉。
子供たちに向ける、期待の心。
未来ある青年を導く、確かな言葉。
その全てを電次郎は”あとで消さないと”、そう言った。
それは、きっと彼のほんの些細な声なのだろう……だから振り返らない。
だから、きっと、本当の彼の言葉なのだ。
ステラは前を向き、はっきりと自分の言葉を声に出した。
「先生は、間違っています。人は道具じゃない。自分の研究のために誰かを傷付けるのは止めて下さい」
その声に、ライオネットの目が一瞬だけ細くなった。
「呆れるわね。あなた、誰のおかげでここに居られると思っているの? 私が間違っているということは、自分自身を否定しているということを理解している?」
「それでも、わたしは……」
ステラは、再び前髪で顔を隠した。
「人が進化するためには、犠牲が必要なのよ、ステラ。
誰もやらないなら、私がやる。ただそれだけのこと。
──あなたも、いつか分かる時が来るわ」
ライオネットもまた背を向け、会話を切った。
その瞬間、研究室の扉が開き、数人の騎士と神官らしき者が慌ただしく歩み入った。
「ライオネット教諭、あなたを複数の規律違反、及び誘拐未遂、実験体への過剰干渉により拘束します。同行願います」
ライオネットの眉がひくりと動いた。
神官の腕章に、見覚えがある。あれは査問委員会……生徒、教師問わず、この学園都市の法を管理する機関の者。
「……ステラ、お前……」
その目が、睨むようにステラを捉える。だがステラは、静かに首を振った。
「わ……わたしじゃありません」
査問委員会の後ろから、二人の生徒が顔を出した。
トレスとスイランだった。
「悪いな、ステラ。通報したのは俺たちだ」
トレスは悔しそうに口を結ぶ。
「電次郎さんとエネッタちゃんへの仕打ちを、見逃すわけにはいかないんだ」
スイランもライオネットを睨む。
「これで電次郎さんが帰ってくるわけじゃないけど……学校の“膿”は排除できる。今はそれで、充分だ」
スイランの淡々とした言葉に、ステラの顔が歪んだ。
「膿……先生を、そんなふうに……」
「ふん、小賢しい真似を」
ライオネットは最後に吐き捨てるように言い、白衣の裾を翻して連行されていく。
その背中を、ステラは震える唇を噛みながら見つめていた。
そして、最後に叫んだ。
「先生……! わたし、先生の優しさを……信じています。罪を償って、帰ってくるのを待っていますから……!」
ライオネットは一度も振り返らなかった。
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