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シービー話す
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魔王領に来てから、やっと少し落ち着いた気がする。
豪華すぎる部屋で飲む紅茶も悪くない。
目の前では、シービーがちょこんとソファに座り、膝を抱えてカップを傾けていた。
相変わらずツンケンしてるけど、さっきよりも顔が穏やかだ。
「なあ、ちょっと聞いていいか?」
俺は、目の前でちょこんとソファに座り、膝を抱えてカップを傾けているシービーに尋ねた。
「ん? なんだよ。……あ、おかわり? 自分で注げ」
相変わらずなツンケン態度だけど、出会った直後よりも顔は穏やかだ……紅茶のせいか?
「いや、紅茶じゃなくて。ルクスのこと、少し聞きたくて」
シービーの動きがピタリと止まった。
「てめぇおっさん、魔王様を呼び捨てにすんじゃねぇぞ」
めっちゃキレた。人望が厚いんだな魔王は。
「すまん。けど、ルクス様はどう見ても“魔王”って感じに見えないんだよな、美人さんだし、おしとやかっつーか、大人しいとゆうか。喋り方も無理してるよな?」
「……なんだよ、おっさん、なかなか見る目あんだな」
シービーは少し嬉しそうな顔をした後、カップをテーブルに置くと小さくため息をついた。
「今の魔王様は七十八代目で、先代魔王様の一番下の子なんだ」
「へぇ、それって珍しいんじゃないのか? 俺のいたとこでも、跡継ぎは長男って相場だったからな」
俺みたいな不甲斐ない長男もいるけど……ああ、今頃、轟電気店どうなってんのかな。跡取りもいねぇし、俺が居なくなって大騒ぎしてんじゃ……近所のおばあちゃんとか、なんか困ってないかな……急に心配になってきた。
「まぁ普通そうだな、先代魔王様には五人の兄妹がいたんだけど、姉ちゃんは嫁いで、男三人は素行が悪くて勘当されたり、他種族の女と駆け落ちして失踪したり、戦死したりで誰も居なくなったんだよ。それでルクス様が急死した先代魔王様の遺言通りに後を継いだって感じだ」
「なるほど、だから喋り方も練習してる最中とかなんだな」
「まぁそうだな、ルクス様……無理しなくてもいいのによ、幹部の野郎どもが威厳だの尊厳だのと、うるせぇらしんだ」
やっぱり無理して演じているのか、魔王にも色々事情があるんだな。
けど、同情はしないぜ。魔王軍の悪行はミカちゃんの書斎の本や、学園で習った歴史で、よく知っているからな。
「それで? そのルクス様は、なんで俺をここへ連れてきたんだ?」
「なんだよ、知らねぇで来たのかよ」
そりゃ誘拐されてきたようなもんだからな。
シービーはゆっくりと立ち上がり、窓のカーテンを軽くめくる。
遠く、魔王城の城壁の外。バンボルトに掴まって空を飛んでいるときも気になっていたけど、魔王城を中心に荒れ果てた灰色の土地が広がっていた。砂漠とも違う、まるで大地が死んでいるみたいな、そんな感じ。
「魔王領の外区。昔は農園も市場もあったんだ。でも魔力の枯渇と、外からの侵略とかで今はこのありさまだ」
「魔力の枯渇?」
魔力って枯れるものなのか? 初耳だな。
「魔王領はな、昔はもっと魔力が濃くて、みんな“力こそすべて”って風潮だったんだ。だけど原因不明な魔力の枯渇が始まってから、作物は育たなくなり、雨は降らず、資源は減る一方でよ、他の種族との争いもままならなくなってよ」
「それで、研究者を集めて打開策を練っていると?」
「そういうことだな、特にルクス様の代になってからは、それが顕著になった……ルクス様はなにがなんでも魔王領を立て直すって頑張ってんだ。力だけじゃダメだってこともしきりに言ってる」
そうなのか、魔王も苦労してんだな──
「けどな、誘拐はダメだろ」
「……たぶんルクス様は研究者を攫ってきてることを知らない」
「そうなのか?」
「幹部連中の勝手な判断だと思う。もちろん、自分から協力したいって研究者も居ることは居るんだけど、稀だよな」
まぁ研究熱心な人なら……って思ったけど、魔物が跋扈する魔王領に自ら赴くなんて物好きはいねぇわな。
「ルクス様は、本気で“みんなのために”って思ってるんだぜ? 強くなるより、知識を集めて、世界を立て直したいって」
「じゃあ、こんなこと止めさせるべきだろ。ルクス様に教えてやんなきゃ」
「そんな事したら幹部連中に殺される……それにあたいなんかの言葉じゃダメだ。頭のいい幹部連中に言い負かされるに決まってる」
なるほどな、元凶は幹部連中ってことか、だんだん分かってきたぞ。
豪華すぎる部屋で飲む紅茶も悪くない。
目の前では、シービーがちょこんとソファに座り、膝を抱えてカップを傾けていた。
相変わらずツンケンしてるけど、さっきよりも顔が穏やかだ。
「なあ、ちょっと聞いていいか?」
俺は、目の前でちょこんとソファに座り、膝を抱えてカップを傾けているシービーに尋ねた。
「ん? なんだよ。……あ、おかわり? 自分で注げ」
相変わらずなツンケン態度だけど、出会った直後よりも顔は穏やかだ……紅茶のせいか?
「いや、紅茶じゃなくて。ルクスのこと、少し聞きたくて」
シービーの動きがピタリと止まった。
「てめぇおっさん、魔王様を呼び捨てにすんじゃねぇぞ」
めっちゃキレた。人望が厚いんだな魔王は。
「すまん。けど、ルクス様はどう見ても“魔王”って感じに見えないんだよな、美人さんだし、おしとやかっつーか、大人しいとゆうか。喋り方も無理してるよな?」
「……なんだよ、おっさん、なかなか見る目あんだな」
シービーは少し嬉しそうな顔をした後、カップをテーブルに置くと小さくため息をついた。
「今の魔王様は七十八代目で、先代魔王様の一番下の子なんだ」
「へぇ、それって珍しいんじゃないのか? 俺のいたとこでも、跡継ぎは長男って相場だったからな」
俺みたいな不甲斐ない長男もいるけど……ああ、今頃、轟電気店どうなってんのかな。跡取りもいねぇし、俺が居なくなって大騒ぎしてんじゃ……近所のおばあちゃんとか、なんか困ってないかな……急に心配になってきた。
「まぁ普通そうだな、先代魔王様には五人の兄妹がいたんだけど、姉ちゃんは嫁いで、男三人は素行が悪くて勘当されたり、他種族の女と駆け落ちして失踪したり、戦死したりで誰も居なくなったんだよ。それでルクス様が急死した先代魔王様の遺言通りに後を継いだって感じだ」
「なるほど、だから喋り方も練習してる最中とかなんだな」
「まぁそうだな、ルクス様……無理しなくてもいいのによ、幹部の野郎どもが威厳だの尊厳だのと、うるせぇらしんだ」
やっぱり無理して演じているのか、魔王にも色々事情があるんだな。
けど、同情はしないぜ。魔王軍の悪行はミカちゃんの書斎の本や、学園で習った歴史で、よく知っているからな。
「それで? そのルクス様は、なんで俺をここへ連れてきたんだ?」
「なんだよ、知らねぇで来たのかよ」
そりゃ誘拐されてきたようなもんだからな。
シービーはゆっくりと立ち上がり、窓のカーテンを軽くめくる。
遠く、魔王城の城壁の外。バンボルトに掴まって空を飛んでいるときも気になっていたけど、魔王城を中心に荒れ果てた灰色の土地が広がっていた。砂漠とも違う、まるで大地が死んでいるみたいな、そんな感じ。
「魔王領の外区。昔は農園も市場もあったんだ。でも魔力の枯渇と、外からの侵略とかで今はこのありさまだ」
「魔力の枯渇?」
魔力って枯れるものなのか? 初耳だな。
「魔王領はな、昔はもっと魔力が濃くて、みんな“力こそすべて”って風潮だったんだ。だけど原因不明な魔力の枯渇が始まってから、作物は育たなくなり、雨は降らず、資源は減る一方でよ、他の種族との争いもままならなくなってよ」
「それで、研究者を集めて打開策を練っていると?」
「そういうことだな、特にルクス様の代になってからは、それが顕著になった……ルクス様はなにがなんでも魔王領を立て直すって頑張ってんだ。力だけじゃダメだってこともしきりに言ってる」
そうなのか、魔王も苦労してんだな──
「けどな、誘拐はダメだろ」
「……たぶんルクス様は研究者を攫ってきてることを知らない」
「そうなのか?」
「幹部連中の勝手な判断だと思う。もちろん、自分から協力したいって研究者も居ることは居るんだけど、稀だよな」
まぁ研究熱心な人なら……って思ったけど、魔物が跋扈する魔王領に自ら赴くなんて物好きはいねぇわな。
「ルクス様は、本気で“みんなのために”って思ってるんだぜ? 強くなるより、知識を集めて、世界を立て直したいって」
「じゃあ、こんなこと止めさせるべきだろ。ルクス様に教えてやんなきゃ」
「そんな事したら幹部連中に殺される……それにあたいなんかの言葉じゃダメだ。頭のいい幹部連中に言い負かされるに決まってる」
なるほどな、元凶は幹部連中ってことか、だんだん分かってきたぞ。
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