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証拠隠滅 7
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「俺たちが乗り込んだら、すぐに出せ!」
トーマスの声が聞こえたと思ったら、すぐに私が乗せられた馬車にトーマスとゲイルが乗り込んできた。
御者はノインとボランにやらせるらしい。
「なんだ、もう着替え終わったのか。」
そう言って、トーマスがまた舌打ちをする。
( 誰があんたたちの前で着替えたりするもんですか!)
さっき服を渡されてから、1分も経っていない。
下手をすれば、今この瞬間に2人がかりで襲われていたかもしれない。
身の毛がよだつ。
女物の服にこだわるトーマスが気持ち悪くて、スキル幻術で、着ているのが先ほどトーマスが持ってきた服に見えるように、着ている服に魔法をかけてみたのだ。
( ドラゴンに飲み込まれそうになってからのぶっつけ本番は怖いからね。)
『あと10分程の辛抱です、ニナ様。』
( うん、ありがとう、ナビちゃん。でも、兵士を目撃者にできるなら、この2人必要?魔法で眠らせちゃだめ?)
『…眠らせること自体はまったく問題ございませんが、城門を通るまでは、その者たちが必要です。それまでなんとか耐えてください。』
( 城門を通るまで?)
『はい。この堅城を出るためには、相応の理由が必要となります。この者たちが王命であることを伝えねば、ここから出ることができません。』
( 分かった。)
『城門を出たら闇魔法で昏睡させてください。2人とも状態異常耐性の魔道具を身に着けていますので、ただの催眠だと効果がありません。』
( 状態異常耐性って、そんなものが必要だなんて、異世界恐っ。)
『ピロン♪』
『スキル状態異常耐性を取得しました。』
今にも襲い掛かってきそうなトーマスとゲイルから、できるだけ離れて座る。
( 城門を出るまでも、何かしてきそうで怖い。)
怖くて体の震えが大きくなってくる。
不安で不安で、2人から視線を外さずに、自分の膝を強く抱えることしかできない。
2人はすぐにでも私を襲うことができる余裕からか、怯えて距離を取ろうとする私を、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、舐めまわすように見ている。
( 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い )
『ピロン♪』
『精神的苦痛耐性を取得しました。』
走り出した馬車は1~2分ですぐに止まり、後ろ側の幌が捲り上げられた。
「こんな時間にどうした?」
「陛下の勅命だ。例の儀式が失敗してな。その後始末だ。」
「ああ、命令がさっき届いてたな。どれ、」
幌を捲りあげたのは、城門の門番のようだ。
門番は私の姿を見つけると、嫌らしい目で舐めるように見てくる。
( この国の男は、こんなやつしかいないの!?)
「黒目黒髪の異世界の女か。羨ましいなぁ。任務、代わってやろうか?」
「ほざけ。王命で魔の森に捨てに行くんだ。命がけだぞ?」
「でも、上手くやれば、そのまま逃げられるじゃないか。それに、魔の森までたっぷり楽しめるだろ?」
そう言って、また私を見る。
( 気持ち悪い!!)
「まぁな。なぁ、いい加減にしてくれないか?急いでるんだ。早くしないと陛下に殺されちまう。無駄口叩いてないで、通してくれよ。」
「なんだよ。少しぐらい味見させてくれてもいいのに。まぁ、俺も陛下の勅命の妨害をしたからって、殺されたくないからな。」
そう言ってまた私をねっとりとした目で見てから、門番の男は馬車から離れていった。
「開けろ!」「開けろ!」「開けろ!」
命令を伝達しているのだろう、大きな声が聞こえる。
ギギィッ・・・と耳を抑えたくなるような嫌な音がし始めた。
同時に鎖をガシャンガシャンと鳴らすような音と、歯車が回るような音がして、ドッスン!!!!!!と重い物が落ちる音がした。
外は見えないけれど、門の外は跳ね橋になっているようだ。
手入れがされていない堀があるのだろう。腐った水の臭いがしてきた。
馬車が門を抜け、ギィギィと変な音がする橋を渡りきると、またガシャンガシャンと大きな音がして、跳ね橋が上げられ、門が閉められた。
トーマスの声が聞こえたと思ったら、すぐに私が乗せられた馬車にトーマスとゲイルが乗り込んできた。
御者はノインとボランにやらせるらしい。
「なんだ、もう着替え終わったのか。」
そう言って、トーマスがまた舌打ちをする。
( 誰があんたたちの前で着替えたりするもんですか!)
さっき服を渡されてから、1分も経っていない。
下手をすれば、今この瞬間に2人がかりで襲われていたかもしれない。
身の毛がよだつ。
女物の服にこだわるトーマスが気持ち悪くて、スキル幻術で、着ているのが先ほどトーマスが持ってきた服に見えるように、着ている服に魔法をかけてみたのだ。
( ドラゴンに飲み込まれそうになってからのぶっつけ本番は怖いからね。)
『あと10分程の辛抱です、ニナ様。』
( うん、ありがとう、ナビちゃん。でも、兵士を目撃者にできるなら、この2人必要?魔法で眠らせちゃだめ?)
『…眠らせること自体はまったく問題ございませんが、城門を通るまでは、その者たちが必要です。それまでなんとか耐えてください。』
( 城門を通るまで?)
『はい。この堅城を出るためには、相応の理由が必要となります。この者たちが王命であることを伝えねば、ここから出ることができません。』
( 分かった。)
『城門を出たら闇魔法で昏睡させてください。2人とも状態異常耐性の魔道具を身に着けていますので、ただの催眠だと効果がありません。』
( 状態異常耐性って、そんなものが必要だなんて、異世界恐っ。)
『ピロン♪』
『スキル状態異常耐性を取得しました。』
今にも襲い掛かってきそうなトーマスとゲイルから、できるだけ離れて座る。
( 城門を出るまでも、何かしてきそうで怖い。)
怖くて体の震えが大きくなってくる。
不安で不安で、2人から視線を外さずに、自分の膝を強く抱えることしかできない。
2人はすぐにでも私を襲うことができる余裕からか、怯えて距離を取ろうとする私を、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、舐めまわすように見ている。
( 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い )
『ピロン♪』
『精神的苦痛耐性を取得しました。』
走り出した馬車は1~2分ですぐに止まり、後ろ側の幌が捲り上げられた。
「こんな時間にどうした?」
「陛下の勅命だ。例の儀式が失敗してな。その後始末だ。」
「ああ、命令がさっき届いてたな。どれ、」
幌を捲りあげたのは、城門の門番のようだ。
門番は私の姿を見つけると、嫌らしい目で舐めるように見てくる。
( この国の男は、こんなやつしかいないの!?)
「黒目黒髪の異世界の女か。羨ましいなぁ。任務、代わってやろうか?」
「ほざけ。王命で魔の森に捨てに行くんだ。命がけだぞ?」
「でも、上手くやれば、そのまま逃げられるじゃないか。それに、魔の森までたっぷり楽しめるだろ?」
そう言って、また私を見る。
( 気持ち悪い!!)
「まぁな。なぁ、いい加減にしてくれないか?急いでるんだ。早くしないと陛下に殺されちまう。無駄口叩いてないで、通してくれよ。」
「なんだよ。少しぐらい味見させてくれてもいいのに。まぁ、俺も陛下の勅命の妨害をしたからって、殺されたくないからな。」
そう言ってまた私をねっとりとした目で見てから、門番の男は馬車から離れていった。
「開けろ!」「開けろ!」「開けろ!」
命令を伝達しているのだろう、大きな声が聞こえる。
ギギィッ・・・と耳を抑えたくなるような嫌な音がし始めた。
同時に鎖をガシャンガシャンと鳴らすような音と、歯車が回るような音がして、ドッスン!!!!!!と重い物が落ちる音がした。
外は見えないけれど、門の外は跳ね橋になっているようだ。
手入れがされていない堀があるのだろう。腐った水の臭いがしてきた。
馬車が門を抜け、ギィギィと変な音がする橋を渡りきると、またガシャンガシャンと大きな音がして、跳ね橋が上げられ、門が閉められた。
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