祠を直しただけなのにっ!? 妖怪喫茶「こくり家」へようこそ!

琴葉 刀火

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🍳それぞれのお仕事🍞

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 さて、おやつで糖分とカフェインを補給したら、すっきりした頭で午後の作戦会議です。

 最初に口を開いたのは、この家の経済事情を把握した藤葛です。


「まず、状況ですが。再来月末に最初の返済日が来ます。支払えなければ借金です。これは避けたいところです」

「うむ。そうじゃな」


 紅珠が同意し、兵太郎も神妙な面持ちで頷きました。

 既に借金まみれの兵太郎。この状況でお金を貸してくれるのは、不動産屋と一緒に来た怪しい業者くらいです。

 自分一人ならともかく、奥さんと家来を路頭に迷わせるわけにはいきません。


「なので、一刻も早くお店を開けましょう。来週保健所の検査が入ります。検査自体は問題なく終了すると思いますので、この後許可証が発行され次第開店です」


 誰も何も言いません。ただ静かに頷きました。

 兵太郎だけなら、いつになるかわからなかったお店のオープン。藤葛が示した具体的な日程は、全員の気持ちを引き締めました。


「うむ。ではそれまでの優先事項じゃな。ホームページと各SNSは儂が準備を行う。パスワードは共有するので、何かあれば各々上げてほしいのじゃ」


 これにも全員が頷きます。

 山の奥にある喫茶店。ネット上での広告が生命線となるのは間違いありません。


「あと儂が優先すべきは道じゃな。新しい道を作るのは色々許可が必要な上時間が掛かる。とてもオープンには間に合わん。そこで私道を補強して広げることにするのじゃ。ついては古い知り合いを尋ねるので、近く一度家を空けるぞ。クロよ、共をせい。ついでにお前が儂の家族であることを山のモノに知らしめるのじゃ」

「畏まりました、紅様」


 誇らしさいっぱいで、クロは紅珠に頭を下げました。

 植物や虫、それに物の怪たちは、紅珠の姿を見るだけでテンションが上がり、山は豊かになります。クロが代理人として認識されたなら、効果は一層高まることでしょう。


「それと、クロよ。お前は隙間時間に、変化の練習をするのじゃ。別の姿、もう少しでかい姿に化けられるようにの。今のままの姿だけでは表側の仕事はできぬぞ」

「こ、心得ました」


 流石は紅珠。痛いところを突かれてしまいました。

 変身術の未熟さはクロも痛感していたところ。お仕事ができないのは大問題です。しっかり練習に励まなくてはと気合を入れます。

 でもそれはそれとして。


 …………。
 …………。
 …………。


「ねえ、その件って紅さんは大丈夫なのかな」


 流石兵太郎、みんなが思っていたことを、よくぞ聞いてくれました。


「ん? 儂か? 儂はギリ成人で通るじゃろ?」


 すらっとぼけていますがギリとか言っちゃってるあたり、紅珠も自分でも少々無理があるのはわかっているようです。

 ひとには得手不得手があります。何でもできる紅珠も、自分の姿を変えるのは少々苦手なのでした。


「苦手とかじゃないし。その気になれば行けるけど、ホラ、妖力の回復のアレとかで、余計な力を通のはアレじゃし、そもそもこの姿で問題ぜんっっっぜんないし」


 全然をおもいっきり強調する紅珠に、やれやれと藤葛はため息をつきました。


「もう。珍しくシリアスにお話が進んでおりましたのに。まあポンポン別の姿になられても私のアイデンティティーに関わりますから構いませんけどね」


 成人してると言うに少々無理がある紅珠の姿ですが、世の中には妖怪のような人間もいますから、言い張れば通じなくはないかもしれません。

 そもそも紅珠は童顔で体が小さいだけ。実年齢は千歳を超えているので、法律的にも倫理的にも何の問題もありません。

 幼く「見える」だけを理由に、諸々を規制してはいけないのです。

 必要であれば身分証明書なんかは問題なく(?)用意できますし。

 さてお仕事の確認、紅珠の次は藤葛です。

「私は家の中を。兵太郎、設備や調理器具に不足があれば言ってください。優先的に作成します。あとはテラス席の設置を考えています。駐車場側に喫煙可能な席、反対側にペット同伴可能な席を作ろうかと」

「なるほどのう。喫煙にペットか。この辺りに他に店はない。知れれば立ち寄る者もいるかもしれんの」

「たばこの煙は苦手なのですけどね。体につかないようにしないと。紅さん、ホームページにペットと煙草の件、記載お願いします」

「わかったのじゃ」


 オープンまでにみんなのやることが決まっていき、最後に残ったのは兵太郎です。

 本当は一人で全部やるつもりだった兵太郎ですが、それは無理なこと、必要でないことはもうわかり切っています。

 じゃあ今、何をするのが一番いいのでしょうか。考えるふりをしてみたところで、当然兵太郎にはわかりません。

 そんな時にはわかっている人に聞いてみるのが一番です。


「僕は何をすればいいかな?」


 兵太郎の質問に、頼りになる二人の奥さんは、ふふっと優しく笑いました。


「兵太郎はもちろん、お料理のことに集中してくださいませ」

「それでいいの?」

「仕入れ先も手に入るものも限られた中で、何ができるかずっと試行錯誤していたのでしょう? 残り短い期間ですいませんが形にしてくださいな」

 つまりは、喫茶店の通常グランドメニューの作成。

 それは確かに兵太郎がこの一月の間、家の修理と並行して進めてきたことでした。その間もずっと、藤葛は兵太郎のことを見守っていたのです。


「うむ。それは兵太郎にしかできないことじゃ。ただしお前様、出かける時は必ずクロを連れて行くのじゃ。良いな、クロよ。能々よくよく兵太郎を守るのじゃぞ」

「はい、紅様!」


「あとはその、おいしいご飯とおやつは期待しておるのじゃ」


 上目づかいの千年妖怪に、今度は兵太郎が笑います。


「ありがとう、紅さん、藤さん。美味しいの作るからね」

「うむ。各々やることは決まったの。では早速取り掛かるとするか」
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