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2.売られた喧嘩は買う主義
しおりを挟むお互い大人になって自然と関わりが少なくなっていき、今回の面会で何ヶ月ぶりかな?もしくは一年以上たってたっけ?ぐらいだ。
我ながら単純すぎる理由でよくもまあ難解と言われるクリエイターとなれたな・・・としみじみ思いながらアルデ様の執務室でお茶をすする。
多忙な御方なので今回の面会も良く許可されたな、と思いながらお茶請けに出されたお菓子にも手を出そうかと考えているが、斜め後ろから突き刺さる視線が痛くてどうにも迷う。
おそらくアルデ様の部下なのだろう、騎士の制服をお召の若い青年。
これは、あれか?
視線で気付けよアピールなのか?
自分でも察しが良い方とは言えないのでそういう回りくどい事は好きではないのだが・・・。
言いたいことははっきり言ってほしい、と思いながらお菓子の誘惑には勝てずにつまんで頬ばり、口の中にじんわり広がる甘みを堪能する。
「・・・・ふん、図々しい奴」
言えるじゃん、ちゃんと
良かった、そう思いながら彼に目線を移し
「そういう貴方は躾がなって無いですね」
と返しておいた。
ほら、無視は悲しいから
顔を真っ赤にしてさらに睨まれたが、先に言ってきたのはそちらですよね?と思いながら目の前のお茶とお菓子に目線を戻す。
騎士の彼は何かを言おうとした様だったが、そこで部屋の主が入ってきたために中断となる。
「待たせたな」
いくつになっても彼の瞳は輝きを失わない
騎士団長となり自信と冷静さが溢れる姿は、全て瞳の美しさに現れている。
「いいえ、彼が美味しいお茶とお菓子を用意してくれましたので」
彼、と呼ばれた青年騎士はビクッ!と肩を震わせて斜め下ばかり見ている。
あきらかに何かを隠している態度に素直すぎる子だなぁ...と微笑ましくなる。
「ルーベン、悪いが席をはずしてくれ」
「は、いや、しかし...」
「サナンは大丈夫だ、話が終われば呼ぶ」
有無を言わさずルーベンと言う名の騎士を追い出しにかかる、しぶしぶながらも団長の命をしっかり聞いて退出するあたりやはり素直だな、と見送った。
「さてサナンよ、ルーベンはまだ21歳だ。遊ばないでやってくれないか」
「何の事かさっぱりですディアルデ様、私は事実だけを申しただけです」
「・・・。」
「・・・アルデ兄さん」
強面の彼が目元を和らげた所でようやく本題に入る
「申請内容に記載したとおり、私をアルデ兄さんの研究チームに入れて頂けませんか?」
「大歓迎ではあるが、一つ確認したい、なぜ今回の研究にはそこまで乗り気なのだ?」
レディエラリアでは平民、貴族、騎士、子供、あらゆる地位と年齢にこだわり無く研究を行う事を推奨している。
芽吹く才能は、あるべき場所へ
それがこの国に生きる者の最低限の務め
もちろん騎士団長は過去いくつもの研究テーマを生み出し、その結果を世に残している中で、サナンが名乗りを上げたのは今回が初となる。
もし、過去に戻りコアの謎の糸口を見つけられるなら?
未来は、コアが無い人々が増えているかも?
「私はどうしても知りたい...そのためには時間という未知の魔法を使って手を尽くしたいのです。」
膝の上に置いた手をきつく握り思いを正直に打ち明けたら、目の前に座るかれがふ、とため息をついたのが分かった、諦めの悪い奴だと思われたのかもしれない。
「分かった、ではさっそく明日から頼む」
「え?」
「何も変わってないようで安心したぞ、コアを探すのだろう?当然協力する」
「い、いいのですか?私の個人的な思惑なのに...アルデ兄さんの研究の邪魔になるかも」
「ははっ!それは無いよ、なんでかって私が時間系統魔法について研究を始めたのは、とある悩めるクリエイターの助けになるかもと思ってはじめた事だからな」
昔から情に暑い方だと、思ってはいたが...。
何も変わってないのは貴方もだ。
本当に、彼には敵わない。
多忙である騎士団長ディアルデにそこまでさせたのだ、少しでも確実に謎を明るみに出して最高の魔法も作り出してみせる!
「必ず見つけ出します」
力強くお互いの目線を交わし頷きあった
「ちなみに私の家に泊まり込みでやってもらうからな」
なんでーー!?!?
と叫んだらなかなか呼ばれないとソワソワしていたルーベンが何事かと突入してきた。
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