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8.朝食はスクランブルエッグでした
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「おやおや...朝から刺激が強いね」
首のあたりをつつ、と触られている気がする
朝の光と、誰かの声がする、と感じて自分の意識が浮上していると気付いた。
「ん~?...あさ...」
くすぐったくて誰かの指先を払い除けながら寝返りをうち、ふと、誰が触ってるのか気になった。
誰か?
昨日、誰といた?
全ての記憶を鮮明に思い出して目をカッ!と開くと同時に払い除けた指先の主を見る、光を反射した金髪を揺らすぐらい笑いながら、こちらを覗き込むバルトロメオがいた。
いつも纏めている髪を未だゆるく流しているため、少々幼く見えた。
「...バルト~」
アルデじゃなくて一気に緊張がとけ、浮き上がらせた頭を枕にぼふっ!と戻した。
「兄さんは少し前に王宮に行ったよ、サナンを起こしに行けって言われたから何で?と思ったら...なるほどねぇ~~~」
仰向けに寝ているサナンの上に覆いかぶさるようにして圧迫してくる、重い、と思ったら何やらふすふす息がかかる。
「くすぐったいよ~...やめろ~...」
「いやらしいねぇ~...兄さんの使うワリンの香りがする...後で腰をマッサージしようか?」
「...必要ない」
ワリンは森林のような爽やかな香りの奥に仄かにミルクの様な甘い香りを含んだハーブ、アルデがいつも纏わせている香りだ。
何やら見たことあるな、とは思っていたがどうやらエメロード邸にあるアルデの寝室に寝かされていたようだった。
部屋の主に会わなくてちょっと安心したのに、目覚めた時に近くにいなかった寂しさがちょっとあった。
なんか女々しいな、と恥ずかしくなってしまった所でバルトを押しのけて一気に起き上がる。
「いろいろ聞きたい事があるけど、それは美味しい酒を用意してる夜に聞くとして、先にサナンのおねだりから聞こうかな?」
「おねだりって...アルデ...」
一緒に説得してくれると約束したのに何で私のおねだりという話になっているのか...。
「兄さんの事、これから呼び捨てで呼ぶの?」
つい昨日の名残で兄さんと付けるのを忘れてしまった事を悔やみながら、ほんのり赤くした顔でにんまり笑っているバルトを睨んで枕を全力で投げつけた。
***
事情はほとんどアルデから聞いていた様で多くを語らずとも言いたい事は理解しているようだった、相談した張本人が寝こけていたなんて不甲斐ない。
そう思ってもきっと彼は気にするな、と微笑んで許してくれるのだろうな...と顔を思い浮かべたら昨夜の事もぼんやり思い出して慌てて頭を振って朝食に意識を戻した。
「正直なところギルバーン殿下が仰っているのだからあまり断る事は宜しく無いからね、【聖女】はエメロード邸で預かる事にするよ」
「ありがとう、彼女の調査もあるから私も訪問が増えると思うがいいだろうか?」
「もちろん、サナンは出入り自由にすると伝えておくよ」
思いの外バルトが拒否の姿勢をとらなかった事に安堵したら朝食も格別に美味しく感じた、いち早く殿下に色良い返事を届けようと身なりを整えて出ていこうとしたら、バルトが共に玄関まで来た。
珍しく外出かな?と思ったら肩を抱かれると同時に背後から執事の「行ってらっしゃいませ」の言葉と静かに礼をする姿が見える。
「さ!行こうか!」
「え?えっ!?」
「言ったろ、兄さんは王宮に行ったって!サナンはこれから俺とデートだ!」
確かに聞いたけど、返事を殿下に伝えに言ったとは聞いてない!!
突然のお出掛け宣言に抗議をする暇も無く、馬車に乗せられてしまったため諦めて上質の座り心地に身を任せた。
首のあたりをつつ、と触られている気がする
朝の光と、誰かの声がする、と感じて自分の意識が浮上していると気付いた。
「ん~?...あさ...」
くすぐったくて誰かの指先を払い除けながら寝返りをうち、ふと、誰が触ってるのか気になった。
誰か?
昨日、誰といた?
全ての記憶を鮮明に思い出して目をカッ!と開くと同時に払い除けた指先の主を見る、光を反射した金髪を揺らすぐらい笑いながら、こちらを覗き込むバルトロメオがいた。
いつも纏めている髪を未だゆるく流しているため、少々幼く見えた。
「...バルト~」
アルデじゃなくて一気に緊張がとけ、浮き上がらせた頭を枕にぼふっ!と戻した。
「兄さんは少し前に王宮に行ったよ、サナンを起こしに行けって言われたから何で?と思ったら...なるほどねぇ~~~」
仰向けに寝ているサナンの上に覆いかぶさるようにして圧迫してくる、重い、と思ったら何やらふすふす息がかかる。
「くすぐったいよ~...やめろ~...」
「いやらしいねぇ~...兄さんの使うワリンの香りがする...後で腰をマッサージしようか?」
「...必要ない」
ワリンは森林のような爽やかな香りの奥に仄かにミルクの様な甘い香りを含んだハーブ、アルデがいつも纏わせている香りだ。
何やら見たことあるな、とは思っていたがどうやらエメロード邸にあるアルデの寝室に寝かされていたようだった。
部屋の主に会わなくてちょっと安心したのに、目覚めた時に近くにいなかった寂しさがちょっとあった。
なんか女々しいな、と恥ずかしくなってしまった所でバルトを押しのけて一気に起き上がる。
「いろいろ聞きたい事があるけど、それは美味しい酒を用意してる夜に聞くとして、先にサナンのおねだりから聞こうかな?」
「おねだりって...アルデ...」
一緒に説得してくれると約束したのに何で私のおねだりという話になっているのか...。
「兄さんの事、これから呼び捨てで呼ぶの?」
つい昨日の名残で兄さんと付けるのを忘れてしまった事を悔やみながら、ほんのり赤くした顔でにんまり笑っているバルトを睨んで枕を全力で投げつけた。
***
事情はほとんどアルデから聞いていた様で多くを語らずとも言いたい事は理解しているようだった、相談した張本人が寝こけていたなんて不甲斐ない。
そう思ってもきっと彼は気にするな、と微笑んで許してくれるのだろうな...と顔を思い浮かべたら昨夜の事もぼんやり思い出して慌てて頭を振って朝食に意識を戻した。
「正直なところギルバーン殿下が仰っているのだからあまり断る事は宜しく無いからね、【聖女】はエメロード邸で預かる事にするよ」
「ありがとう、彼女の調査もあるから私も訪問が増えると思うがいいだろうか?」
「もちろん、サナンは出入り自由にすると伝えておくよ」
思いの外バルトが拒否の姿勢をとらなかった事に安堵したら朝食も格別に美味しく感じた、いち早く殿下に色良い返事を届けようと身なりを整えて出ていこうとしたら、バルトが共に玄関まで来た。
珍しく外出かな?と思ったら肩を抱かれると同時に背後から執事の「行ってらっしゃいませ」の言葉と静かに礼をする姿が見える。
「さ!行こうか!」
「え?えっ!?」
「言ったろ、兄さんは王宮に行ったって!サナンはこれから俺とデートだ!」
確かに聞いたけど、返事を殿下に伝えに言ったとは聞いてない!!
突然のお出掛け宣言に抗議をする暇も無く、馬車に乗せられてしまったため諦めて上質の座り心地に身を任せた。
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