カノジョの秘密は俺だけが知っていればいい。

カノジョの秘密

時々見かけていた。
それだけではあったが、最初から気になっていた。

軽くウエーブ掛かった腰辺りまである長い髪は栗色で、いつでも笑顔を絶やさないでいる。

その彼女（莉乃－リノ－）を、俺の目の前で口説いているのは友人である裕志－ユウシ－だった。
その様子をひたすら見守る事になる俺は惶伽－コウガ－。

裕志の相手を笑顔でしていたが、いつの間にか表情が曇った莉乃。
そんな事には気づかぬ様子で裕志は莉乃に話しかけている。
莉乃の返事が無いなと、俺が思った時には、莉乃が席を立ち涙目で店を飛び出していた。
裕志がその後を追った為、俺も店の外に出る。


店の外、裕志に向かって左足を見せるように、スカートの裾をそっと捲くる莉乃の姿を捉える。
「義足なの」
涙を零しながら話す莉乃に驚いて
「あぁ、そうだったんだ」
そっけなく店内に戻っていく裕志。

その間も、莉乃の姿に目を奪われていた俺は、裕志とは対照的に莉乃に近づいていた。