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XVIII 光ある者の眠る場所
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ルーカスは、去っていく吸血鬼の背をぼんやりと見送っていた。金髪の美少年と、黒髪の“美しい女性”。その残像が脳裏に焼き付いている。
床には、血の痕が残っていた。ルーカスはまだ、どこか実感のない顔でその場を見つめていた。
「あいつら、逃げおおせたのか……」
誰にともなく呟いた声に、すぐ近くで誰かが鼻で笑った。
「厚かましいなあ、あの吸血鬼ども。何しに来たんだか」
遠くで弾の補充をしていた若いスレイヤーの一人が、わざとらしく言った。
「次来たら絶対に捕まえて、陽光で焼いてやる。今度は逃がさない」
ルーカスはその声に何も言えなかった。
すぐ近くにいたメイヴが、縄で拘束されて俯いているエレオノーラを一瞥し、皮肉っぽく肩をすくめる。
「……あいつら、結局この子を置いていったわね」
「見殺しにしたのか」
「そうね。でも……あの顔」
メイヴは小さく息をついた。
「ああいう表情、吸血鬼がするとは思わなかったわ」
ルーカスの中に、妙なわだかまりが残っていた。
先ほどの黒髪の吸血鬼が、最後にこちらを振り返ったときの顔——。
涙も、叫びもなかった。けれど、心を抉られるような痛みがそこにはあった。
「あれが演技だとしても、俺は……ちょっと、やりきれない」
「情けは禁物よ」
メイヴの口調は淡々としていたが、どこか響くものがあった。
「でもまあ……あんなに若い吸血鬼同士で、ああやって命を張って庇い合うのを見ると、さすがにいたたまれなくなるわ。まるで私たちのほうが悪いことしてるみたいじゃない。ただでさえ若い吸血鬼を狩るのは胸糞なのに」
「珍しいな、あんたがそんなこと言うなんて」
ルーカスがそう投げると、メイヴは遠い目をした。
「……若い吸血鬼を退治する度に、小さいうちに死んだ子供たちを思い出すのよ。ジェイミーの兄と姉……あんたも、知ってるでしょ」
ジェイミーはメイヴの次男だった。既に若いスレイヤーとして闘っている。労働者階級出身の戦争未亡人であるメイヴには多くの子供がいる。だが多産多死の時代、見送ってきた子供たちもいた。
「ああ……。悪かった。忘れてたわけじゃない」
2人の間にしばしの沈黙が流れた。ふと、ルーカスがこう切り出す。
「……それにしても、あの二人の吸血鬼は何なんだ。俺たちの銀弾にかすりもしなかった」
思わず漏らした問いに、メイヴが鼻を鳴らした。
「どっちもそんなに長く生きてるとは思えないけどね。2人とも肺が上下してたもの」
吸血鬼にとって呼吸は必要ないものだった。しかし、若い吸血鬼は人間だった頃の習慣で呼吸をしている者が多い。
「特に金髪の方はかなり若いと思うわ。黒髪の方もせいぜい80歳前後ってとこ。なのに、あの身のこなし。吸血鬼の中でも、ああいうのは……選ばれた個体よ。適性が違うの。ああいうのを仕留め損ねると、百年後には手がつけられなくなる」
「……選ばれた?」
「……それはそうと、あんた。さっき何をぼうっとしてたの?」
「いや……あの黒髪の方、すごく綺麗だなと思って……つい」
メイヴは深いため息をついた。
「……あれ、男よ」
ルーカスは言葉を失った。そして針でつつかれたような妙な痛みを感じた。綺麗だと思ってしまった——あれが、男だった?
「……なんだよ、俺……」
ルーカスが何か不味いものを食べたような表情になる。メイヴは彼の表情を見て、肩をすくめた。
「無理もないわね。立ち方も目線も仕草も、完璧に“女性”として仕上げてたもの。きっと人間時代から作り込んでたのよ。あのレベルになると、性別なんて意味をなさない。あれは自分の美しさをよく理解してるわ。でも私にはわかる。私は何より"動き”を見るから」
ルーカスはまだ信じきれない顔で、視線を宙に漂わせたままだった。
「動き……?」
「私は“目”がいいのよ。剣より先に動きと重心を見る癖がある。あの歩き方と体幹のバランス、声帯の動きまで見れば——“女性にしか見えない”のは演技と外見の作り込み。彼は狙ってやってる」
メイヴの動体視力は常人の5倍。時速100kmで飛んできたナイフの回転数まで見抜けるほどであった。並のスレイヤーでは目で追えない吸血鬼の動きも、彼女にはスローモーションだった。元々、田舎の猟師の家系に生まれた彼女は、幼い頃から獲物の微細な動きを捉え、一瞬の判断で仕留める術を叩き込まれていたのである。
「すごいな……で、もう一人の金髪のほうは? とんでもなく美形の男だったが」
ルーカスは少し口ごもり、やがて気まずそうに続けた。
「いや、まさか……あっちも“あれは女”なんて言わないよな?」
メイヴは肩をすくめて、当然のように言った。
「その“まさか”よ」
ルーカスは口を半開きにしたまま固まった。
そして、メイヴの口元がわずかに引き締まる。
「ただ、あれは……不気味だった」
「不気味?」
「所作も目も、完全に男。あの目、見たでしょ。感情を殺すことに慣れた冷たい目。でも……体つきがね。細すぎるの。筋肉と関節の柔らかさ、背骨の角度、首の傾き——あれはどう見ても女の骨格よ。なのに、動きは兵士そのもの」
「なんて二人だよ……」
メイヴはしばらく黙った後、ぽつりと呟いた。
「理解できない相手ってのが、一番厄介なのよ。ああいう奴らとは戦いたくないわ」
聖マルグリット教会の北側、苔むした墓石の隙間に、古い柱が一本だけそびえていた。処刑された罪人が埋葬される場所――今、そこに少女の姿をした吸血鬼が、ぐったりと身体をもたれかけていた。
夜明け前の空気は冷たく、湿っていた。エレオノーラは柱に背を預けたまま、虚ろな目で東の空を見つめていた。
その傍らで、ルーカスは祈りの文句を低く唱えながら、一本の鎖を聖水で浄めていた。儀式の形式に則る意味で、鎖は必要だった。たとえこの吸血鬼の少女が、縄すら破れぬほど弱くとも。
「……君は、まだ子供なんだろ?」
手を止めて問いかけるルーカスに、エレオノーラはゆっくりと視線を向けた。
「見た目で決めないでよ。人間じゃないんだから。20はとうに過ぎてる。でも……本当に大人になれたことはないわ」
ルーカスはしばらく言葉を失い、目を伏せた。そして、突如として鎖を石畳に叩きつけ、苛立ちを露わにした。
「……なんで、吸血鬼になんかなったんだ!」
その声は、怒りよりも悲しみに近かった。彼女のような少女が、どうしてこんな運命に巻き込まれたのか。
エレオノーラは少しだけ口元を緩めた。それは笑みとは違う、どこか遠い記憶をなぞるような表情だった。
「生きたかったの。生きられるなら人間じゃなくなってもいいと思ったの。そのときは。ちっともいい思いをしてないのに、死にたくなかったの」
ルーカスは言葉を失い、再び祈りを唱え始める。やがて、鎖を手に、エレオノーラの細い体にそれを巻きつけていった。決まりだと自分に言い聞かせながらも、その手は震えていた。
夜が明ける少し前。教会の前で、石段にしゃがみこんでいたルーカスの前に、あの金髪の美少年――ネルが現れた。
「もうすぐ夜明けだ。俺は何も見てないから、逃げた方がいいぞ」
低い声。静かな怒りと哀しみが混じっていた。だが、ネルは一瞥もせずにエレオノーラの元へ向かう。
「ネル……来ちゃだめ。やめて、もうすぐ日が昇るわ。ネルまで燃えちゃう!!」
エレオノーラが叫ぶが、ネルは構わず鎖に手をかけた。途端、皮膚が焼けるように爛れ、血が滲んだ。それでもネルはやめなかった。
「君まで……っ!」
ルーカスがたまらず走り出そうとした、そのときだった。
風を切る音と共に、夜明けの空を裂くように一筋の影が飛び込んできた。ヴァネッサだった。黒い外套を翻しながらネルを後ろから抱きかかえ、陽光の方向とは逆へと一気に跳躍する。
「ばか!!あんたまで死にたいの!?」
ヴァネッサが叫ぶ。ネルはもがきながら、手を伸ばして叫んだ。
「エレオノーラァァァ!!」
ルーカスは、それを呆然と見送った。やがて、空が明るみ始める。最初の光が、柱に縛られた小さな体を照らした。
『君の髪は朝焼けみたいに綺麗じゃないか』
久しぶりに見ることができた夜明けの空の美しさにエレオノーラはネルの言葉を思い出す。
「私、朝焼けになれるかしら……」
エレオノーラの髪が、まるで金糸のように発光し、次の瞬間には炎となって包まれる。皮膚が、骨が、内臓が――何もかもが音もなく燃え上がり、灰へと還っていく。
ルーカスは歩み寄り、その灰の残る場所に膝をついた。そして、陽光の中で崩れ落ちる残骸をそっと抱きしめた。陽光の炎は吸血鬼にとっては死だが、人間にはただ温かいだけだった。
「……エレオノーラって君の名前か? 実は、俺の母さんも同じ名前だったんだ。『光ある者』って意味なんだろ。……いい名前だよな」
ルーカスの声は震えていた。
「次こそは……光ある人生を……」
そう言いながら、彼は焼け残った灰の中に、微かに残る温もりを抱き締め続けた。
***
薄暗い部屋の中。揺れる燭光のもと、ネルは床に膝を抱え、焦点の定まらない目で虚空を見つめていた。
「僕のこと庇って、背中に聖水かかってたろ? お前も僕の血を飲まなくていいのか?」
「俺の事なら大丈夫。あの後、ヴァネッサが血を飲ませてくれたんだ」
2人ともまるで読んでいるかのような口調だった。ルシアンは黙って近づき、膝をつく。爪で手首を裂き、じわりと滲む血をネルの両手に垂らす。爛れた皮膚が徐々に癒えていく。ネルはその間、無抵抗に身を任せていた。
部屋の中はひたすら静かだった。どこか居心地の悪い沈黙。ネルはふと、顔を上げてルシアンを見た。
「……ルシアン。お前、霊感あるんだろ?」
ルシアンは瞬きを一つする。ネルの声は驚くほど落ち着いていた。
「……エレオノーラの声を、聞いてくれ。お前のその力で……お願いだ」
しばらく沈黙があった。ルシアンは何度か目を伏せ、空中に何かを探すように目を凝らす。けれど――
「……何も聞こえない。……見えない……っ」
ぽつりと落ちた声は、まるで首の皮一枚で繋がっていた精神の糸がぷつりと切れる音のようだった。
「なんでだよ……俺、いつもなら……うるさいくらい死人の声が聞こえてくるのに……こんなときに限って……」
そのまま、膝を抱えてうずくまるルシアン。ネルは何も言わずその頭を抱きしめる。しばらく、そうしていた。
けれど、震える指先が、ルシアンの首筋をなぞったとき――ネルは気づく。ルシアンもまた、自分と同じだ。涙が出せない。叫べない。ただ、誰かの中に沈んでいくしかない。
ふと、ネルは自分の華奢な手を眺める。先程まで焼けただれていた手。だが今はルシアンの血に癒され、元の白く綺麗な手に戻っていた。
「……ありがとう、ルシアン。これで、やりやすくなる」
ルシアンが怪訝な顔をするよりも早く、ネルは自分の指を口の奥へ突っ込み、喉を掻きむしるようにして吐こうとする。だが、込み上げるのは唾液だけ。何も出ない。
「……くっ……」
嗚咽にも似た吐息とともに、ネルの喉がひくつく。その姿を見て、ルシアンはそっと自分の指をネルの口元に持っていく。
「手伝うよ。俺のもして、ね?」
ネルの指を自分の喉へ、そして自分の指をネルの喉奥へ。吸血鬼たちの奇妙で歪な共感。けれど、吐きたい想いとは裏腹に、どちらの身体も何一つ反応を返さない。
「っ……あは、あははっ、はははっ……」
突然、ルシアンが笑い出した。高く、乾いた笑い。堰を切ったように、椅子にもたれかかって笑い転げる。ネルはしばらく呆けたようにその様子を眺めていたが、やがて、誘われるように吹き出す。
「はは……っ、なんだよ……なにこれ……っ、ははっ……!」
壊れたように笑い合うふたり。そこには涙も、悲しみの表現もない。ただ、感情を吐き出すことすらできない哀れな吸血鬼たちの、惨めな慰めがあった。
そして――その笑い声を、ヴァネッサは扉の外で聞いていた。目を閉じ、顔を伏せる。
ヴァネッサは何も言わず踵を返し、外へ出る。夜の風が冷たい。感情を切り替えるように息を吐き、目を細める。
「……せめて、灰くらいは拾ってあげなきゃね」
今朝、エレオノーラが消えた聖マルグリット教会――夜の墓地。枯葉と土の匂いの中、人影が地面に膝をついていた。
――ルーカスだった。
手で掘った小さな穴に、布に包んだ灰をそっと納めている。目元は赤く、鼻をすする音が、冷えた空気の中にかすかに響いた。
「……あんな幼い姿のまま……吸血鬼になるなんて………なんという不幸だ……本当に……」
掠れた声のなかに、堪えても滲み出る悲しみがあった。
肩が震えていた。月明かりに照らされた頬を、幾筋もの涙が伝って落ちていく。
まるで――彼自身が、この子の人生を奪った張本人であるかのように。
「……代わりに泣いてくれてるの?」
背後から、女の声。ハッとして振り返ると、そこにいたのは黒衣の女。
ヴァネッサだった。石像のように静かに、しかしその瞳には深いものを湛えて、立っていた。
「驚いたわ。スレイヤーでも、吸血鬼のために涙を流すのね」
ルーカスが着ている黒のロングコートからヴァネッサはすぐに彼がスレイヤーだと気づいたのだ。
「……違う。俺は……別に……」
弁解しようとした声は、途中で詰まった。何かを言い訳にしたくなるが、何も浮かばない。彼女の眼差しが、全てを見透かしているようだったから。
「……本当は、スレイヤーなんてしたくないんじゃないかしら?」
その言葉が、心に静かに刺さる。ルーカスは答えない。ただそのまま、俯いていた顔を上げ、ヴァネッサを見た。
その目は鋭いのに、どこか――誰よりも「分かってくれる」ような色をしていた。
――この女、何者なんだ。
どこか、人間とは違う雰囲気。月明かりの中に浮かぶ白い肌と、夜に溶け込むような存在感。普通の人間じゃない。
もしかすると――
「……君は」
言いかけて、ルーカスは言葉を飲み込んだ。その先を言ってしまえば、すべてが崩れる気がした。何かが変わってしまう気がして――怖かった。代わりに、問いを変える。
「名前、教えてくれるか?」
ヴァネッサはすぐには答えなかったが、やがて少し笑って、静かに言った。
「……ヴァネッサ。あなたは?」
「ルーカス。ルーカス・ファーリー」
「……そう。覚えておくわ」
それだけを言って、彼女はゆっくり背を向けた。その背中を、ルーカスはしばらく黙って見送る。吸血鬼なのかもしれない。けれど、今はそれを確かめたくなかった。
――今、彼女を殺せるか?
答えは、すでに心の奥で決まっていた。
床には、血の痕が残っていた。ルーカスはまだ、どこか実感のない顔でその場を見つめていた。
「あいつら、逃げおおせたのか……」
誰にともなく呟いた声に、すぐ近くで誰かが鼻で笑った。
「厚かましいなあ、あの吸血鬼ども。何しに来たんだか」
遠くで弾の補充をしていた若いスレイヤーの一人が、わざとらしく言った。
「次来たら絶対に捕まえて、陽光で焼いてやる。今度は逃がさない」
ルーカスはその声に何も言えなかった。
すぐ近くにいたメイヴが、縄で拘束されて俯いているエレオノーラを一瞥し、皮肉っぽく肩をすくめる。
「……あいつら、結局この子を置いていったわね」
「見殺しにしたのか」
「そうね。でも……あの顔」
メイヴは小さく息をついた。
「ああいう表情、吸血鬼がするとは思わなかったわ」
ルーカスの中に、妙なわだかまりが残っていた。
先ほどの黒髪の吸血鬼が、最後にこちらを振り返ったときの顔——。
涙も、叫びもなかった。けれど、心を抉られるような痛みがそこにはあった。
「あれが演技だとしても、俺は……ちょっと、やりきれない」
「情けは禁物よ」
メイヴの口調は淡々としていたが、どこか響くものがあった。
「でもまあ……あんなに若い吸血鬼同士で、ああやって命を張って庇い合うのを見ると、さすがにいたたまれなくなるわ。まるで私たちのほうが悪いことしてるみたいじゃない。ただでさえ若い吸血鬼を狩るのは胸糞なのに」
「珍しいな、あんたがそんなこと言うなんて」
ルーカスがそう投げると、メイヴは遠い目をした。
「……若い吸血鬼を退治する度に、小さいうちに死んだ子供たちを思い出すのよ。ジェイミーの兄と姉……あんたも、知ってるでしょ」
ジェイミーはメイヴの次男だった。既に若いスレイヤーとして闘っている。労働者階級出身の戦争未亡人であるメイヴには多くの子供がいる。だが多産多死の時代、見送ってきた子供たちもいた。
「ああ……。悪かった。忘れてたわけじゃない」
2人の間にしばしの沈黙が流れた。ふと、ルーカスがこう切り出す。
「……それにしても、あの二人の吸血鬼は何なんだ。俺たちの銀弾にかすりもしなかった」
思わず漏らした問いに、メイヴが鼻を鳴らした。
「どっちもそんなに長く生きてるとは思えないけどね。2人とも肺が上下してたもの」
吸血鬼にとって呼吸は必要ないものだった。しかし、若い吸血鬼は人間だった頃の習慣で呼吸をしている者が多い。
「特に金髪の方はかなり若いと思うわ。黒髪の方もせいぜい80歳前後ってとこ。なのに、あの身のこなし。吸血鬼の中でも、ああいうのは……選ばれた個体よ。適性が違うの。ああいうのを仕留め損ねると、百年後には手がつけられなくなる」
「……選ばれた?」
「……それはそうと、あんた。さっき何をぼうっとしてたの?」
「いや……あの黒髪の方、すごく綺麗だなと思って……つい」
メイヴは深いため息をついた。
「……あれ、男よ」
ルーカスは言葉を失った。そして針でつつかれたような妙な痛みを感じた。綺麗だと思ってしまった——あれが、男だった?
「……なんだよ、俺……」
ルーカスが何か不味いものを食べたような表情になる。メイヴは彼の表情を見て、肩をすくめた。
「無理もないわね。立ち方も目線も仕草も、完璧に“女性”として仕上げてたもの。きっと人間時代から作り込んでたのよ。あのレベルになると、性別なんて意味をなさない。あれは自分の美しさをよく理解してるわ。でも私にはわかる。私は何より"動き”を見るから」
ルーカスはまだ信じきれない顔で、視線を宙に漂わせたままだった。
「動き……?」
「私は“目”がいいのよ。剣より先に動きと重心を見る癖がある。あの歩き方と体幹のバランス、声帯の動きまで見れば——“女性にしか見えない”のは演技と外見の作り込み。彼は狙ってやってる」
メイヴの動体視力は常人の5倍。時速100kmで飛んできたナイフの回転数まで見抜けるほどであった。並のスレイヤーでは目で追えない吸血鬼の動きも、彼女にはスローモーションだった。元々、田舎の猟師の家系に生まれた彼女は、幼い頃から獲物の微細な動きを捉え、一瞬の判断で仕留める術を叩き込まれていたのである。
「すごいな……で、もう一人の金髪のほうは? とんでもなく美形の男だったが」
ルーカスは少し口ごもり、やがて気まずそうに続けた。
「いや、まさか……あっちも“あれは女”なんて言わないよな?」
メイヴは肩をすくめて、当然のように言った。
「その“まさか”よ」
ルーカスは口を半開きにしたまま固まった。
そして、メイヴの口元がわずかに引き締まる。
「ただ、あれは……不気味だった」
「不気味?」
「所作も目も、完全に男。あの目、見たでしょ。感情を殺すことに慣れた冷たい目。でも……体つきがね。細すぎるの。筋肉と関節の柔らかさ、背骨の角度、首の傾き——あれはどう見ても女の骨格よ。なのに、動きは兵士そのもの」
「なんて二人だよ……」
メイヴはしばらく黙った後、ぽつりと呟いた。
「理解できない相手ってのが、一番厄介なのよ。ああいう奴らとは戦いたくないわ」
聖マルグリット教会の北側、苔むした墓石の隙間に、古い柱が一本だけそびえていた。処刑された罪人が埋葬される場所――今、そこに少女の姿をした吸血鬼が、ぐったりと身体をもたれかけていた。
夜明け前の空気は冷たく、湿っていた。エレオノーラは柱に背を預けたまま、虚ろな目で東の空を見つめていた。
その傍らで、ルーカスは祈りの文句を低く唱えながら、一本の鎖を聖水で浄めていた。儀式の形式に則る意味で、鎖は必要だった。たとえこの吸血鬼の少女が、縄すら破れぬほど弱くとも。
「……君は、まだ子供なんだろ?」
手を止めて問いかけるルーカスに、エレオノーラはゆっくりと視線を向けた。
「見た目で決めないでよ。人間じゃないんだから。20はとうに過ぎてる。でも……本当に大人になれたことはないわ」
ルーカスはしばらく言葉を失い、目を伏せた。そして、突如として鎖を石畳に叩きつけ、苛立ちを露わにした。
「……なんで、吸血鬼になんかなったんだ!」
その声は、怒りよりも悲しみに近かった。彼女のような少女が、どうしてこんな運命に巻き込まれたのか。
エレオノーラは少しだけ口元を緩めた。それは笑みとは違う、どこか遠い記憶をなぞるような表情だった。
「生きたかったの。生きられるなら人間じゃなくなってもいいと思ったの。そのときは。ちっともいい思いをしてないのに、死にたくなかったの」
ルーカスは言葉を失い、再び祈りを唱え始める。やがて、鎖を手に、エレオノーラの細い体にそれを巻きつけていった。決まりだと自分に言い聞かせながらも、その手は震えていた。
夜が明ける少し前。教会の前で、石段にしゃがみこんでいたルーカスの前に、あの金髪の美少年――ネルが現れた。
「もうすぐ夜明けだ。俺は何も見てないから、逃げた方がいいぞ」
低い声。静かな怒りと哀しみが混じっていた。だが、ネルは一瞥もせずにエレオノーラの元へ向かう。
「ネル……来ちゃだめ。やめて、もうすぐ日が昇るわ。ネルまで燃えちゃう!!」
エレオノーラが叫ぶが、ネルは構わず鎖に手をかけた。途端、皮膚が焼けるように爛れ、血が滲んだ。それでもネルはやめなかった。
「君まで……っ!」
ルーカスがたまらず走り出そうとした、そのときだった。
風を切る音と共に、夜明けの空を裂くように一筋の影が飛び込んできた。ヴァネッサだった。黒い外套を翻しながらネルを後ろから抱きかかえ、陽光の方向とは逆へと一気に跳躍する。
「ばか!!あんたまで死にたいの!?」
ヴァネッサが叫ぶ。ネルはもがきながら、手を伸ばして叫んだ。
「エレオノーラァァァ!!」
ルーカスは、それを呆然と見送った。やがて、空が明るみ始める。最初の光が、柱に縛られた小さな体を照らした。
『君の髪は朝焼けみたいに綺麗じゃないか』
久しぶりに見ることができた夜明けの空の美しさにエレオノーラはネルの言葉を思い出す。
「私、朝焼けになれるかしら……」
エレオノーラの髪が、まるで金糸のように発光し、次の瞬間には炎となって包まれる。皮膚が、骨が、内臓が――何もかもが音もなく燃え上がり、灰へと還っていく。
ルーカスは歩み寄り、その灰の残る場所に膝をついた。そして、陽光の中で崩れ落ちる残骸をそっと抱きしめた。陽光の炎は吸血鬼にとっては死だが、人間にはただ温かいだけだった。
「……エレオノーラって君の名前か? 実は、俺の母さんも同じ名前だったんだ。『光ある者』って意味なんだろ。……いい名前だよな」
ルーカスの声は震えていた。
「次こそは……光ある人生を……」
そう言いながら、彼は焼け残った灰の中に、微かに残る温もりを抱き締め続けた。
***
薄暗い部屋の中。揺れる燭光のもと、ネルは床に膝を抱え、焦点の定まらない目で虚空を見つめていた。
「僕のこと庇って、背中に聖水かかってたろ? お前も僕の血を飲まなくていいのか?」
「俺の事なら大丈夫。あの後、ヴァネッサが血を飲ませてくれたんだ」
2人ともまるで読んでいるかのような口調だった。ルシアンは黙って近づき、膝をつく。爪で手首を裂き、じわりと滲む血をネルの両手に垂らす。爛れた皮膚が徐々に癒えていく。ネルはその間、無抵抗に身を任せていた。
部屋の中はひたすら静かだった。どこか居心地の悪い沈黙。ネルはふと、顔を上げてルシアンを見た。
「……ルシアン。お前、霊感あるんだろ?」
ルシアンは瞬きを一つする。ネルの声は驚くほど落ち着いていた。
「……エレオノーラの声を、聞いてくれ。お前のその力で……お願いだ」
しばらく沈黙があった。ルシアンは何度か目を伏せ、空中に何かを探すように目を凝らす。けれど――
「……何も聞こえない。……見えない……っ」
ぽつりと落ちた声は、まるで首の皮一枚で繋がっていた精神の糸がぷつりと切れる音のようだった。
「なんでだよ……俺、いつもなら……うるさいくらい死人の声が聞こえてくるのに……こんなときに限って……」
そのまま、膝を抱えてうずくまるルシアン。ネルは何も言わずその頭を抱きしめる。しばらく、そうしていた。
けれど、震える指先が、ルシアンの首筋をなぞったとき――ネルは気づく。ルシアンもまた、自分と同じだ。涙が出せない。叫べない。ただ、誰かの中に沈んでいくしかない。
ふと、ネルは自分の華奢な手を眺める。先程まで焼けただれていた手。だが今はルシアンの血に癒され、元の白く綺麗な手に戻っていた。
「……ありがとう、ルシアン。これで、やりやすくなる」
ルシアンが怪訝な顔をするよりも早く、ネルは自分の指を口の奥へ突っ込み、喉を掻きむしるようにして吐こうとする。だが、込み上げるのは唾液だけ。何も出ない。
「……くっ……」
嗚咽にも似た吐息とともに、ネルの喉がひくつく。その姿を見て、ルシアンはそっと自分の指をネルの口元に持っていく。
「手伝うよ。俺のもして、ね?」
ネルの指を自分の喉へ、そして自分の指をネルの喉奥へ。吸血鬼たちの奇妙で歪な共感。けれど、吐きたい想いとは裏腹に、どちらの身体も何一つ反応を返さない。
「っ……あは、あははっ、はははっ……」
突然、ルシアンが笑い出した。高く、乾いた笑い。堰を切ったように、椅子にもたれかかって笑い転げる。ネルはしばらく呆けたようにその様子を眺めていたが、やがて、誘われるように吹き出す。
「はは……っ、なんだよ……なにこれ……っ、ははっ……!」
壊れたように笑い合うふたり。そこには涙も、悲しみの表現もない。ただ、感情を吐き出すことすらできない哀れな吸血鬼たちの、惨めな慰めがあった。
そして――その笑い声を、ヴァネッサは扉の外で聞いていた。目を閉じ、顔を伏せる。
ヴァネッサは何も言わず踵を返し、外へ出る。夜の風が冷たい。感情を切り替えるように息を吐き、目を細める。
「……せめて、灰くらいは拾ってあげなきゃね」
今朝、エレオノーラが消えた聖マルグリット教会――夜の墓地。枯葉と土の匂いの中、人影が地面に膝をついていた。
――ルーカスだった。
手で掘った小さな穴に、布に包んだ灰をそっと納めている。目元は赤く、鼻をすする音が、冷えた空気の中にかすかに響いた。
「……あんな幼い姿のまま……吸血鬼になるなんて………なんという不幸だ……本当に……」
掠れた声のなかに、堪えても滲み出る悲しみがあった。
肩が震えていた。月明かりに照らされた頬を、幾筋もの涙が伝って落ちていく。
まるで――彼自身が、この子の人生を奪った張本人であるかのように。
「……代わりに泣いてくれてるの?」
背後から、女の声。ハッとして振り返ると、そこにいたのは黒衣の女。
ヴァネッサだった。石像のように静かに、しかしその瞳には深いものを湛えて、立っていた。
「驚いたわ。スレイヤーでも、吸血鬼のために涙を流すのね」
ルーカスが着ている黒のロングコートからヴァネッサはすぐに彼がスレイヤーだと気づいたのだ。
「……違う。俺は……別に……」
弁解しようとした声は、途中で詰まった。何かを言い訳にしたくなるが、何も浮かばない。彼女の眼差しが、全てを見透かしているようだったから。
「……本当は、スレイヤーなんてしたくないんじゃないかしら?」
その言葉が、心に静かに刺さる。ルーカスは答えない。ただそのまま、俯いていた顔を上げ、ヴァネッサを見た。
その目は鋭いのに、どこか――誰よりも「分かってくれる」ような色をしていた。
――この女、何者なんだ。
どこか、人間とは違う雰囲気。月明かりの中に浮かぶ白い肌と、夜に溶け込むような存在感。普通の人間じゃない。
もしかすると――
「……君は」
言いかけて、ルーカスは言葉を飲み込んだ。その先を言ってしまえば、すべてが崩れる気がした。何かが変わってしまう気がして――怖かった。代わりに、問いを変える。
「名前、教えてくれるか?」
ヴァネッサはすぐには答えなかったが、やがて少し笑って、静かに言った。
「……ヴァネッサ。あなたは?」
「ルーカス。ルーカス・ファーリー」
「……そう。覚えておくわ」
それだけを言って、彼女はゆっくり背を向けた。その背中を、ルーカスはしばらく黙って見送る。吸血鬼なのかもしれない。けれど、今はそれを確かめたくなかった。
――今、彼女を殺せるか?
答えは、すでに心の奥で決まっていた。
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