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23 リッカのニケ
二日後の早朝
「レイ、二日後にもどる」
とソードが布団から起き上がりどこか見ながら口を動かした。俺はロキと離れるきっかけとなった、あの時のソードと同じ雰囲気を感じた。まだ頭は眠っていたが、あの時より顔色が悪いか?
「おぃ、どこいくんだ?」
「リッカ」
「は!?急いでも往復だと4日はかかるぞ」
リッカはヒューズとウェザーの間にある街でここから北西に位置する。
「必ず二日後には戻る」
「俺も行く」
「いい、1人でいく」
そう言ってソードはフードだけ持ってすぐに出ていってしまった。
「なんだってんだ…」
「必ず戻る」といったソードを追えず、もう一度眠ることもできずただ部屋にいた。
俺は一昨日レオに教えてもらった冒険依頼所に来ていたが、ソードの事が気になってそれどころじゃなかった。モヤモヤした気持ちを拭いたくて、昼過ぎにレオに会いに行く事にした。
□□□
「なるほどな」
急に来たのにも関わらずレオは快く部屋に俺を招き入れてくれた。そして、今朝起きたソードの話をした。
「今までそんな感じは一度も見せたこと無いからな~参考になるか分からないが、リッカに行くってゆうなら心当たりがある。1つはリッカはソードの実家がある。2つ目はリッカに友人がいる。俺もよく知った奴だ」
「そうか」
「滅多に実家に帰らないからな、何かあったのかもな。うーん、でも帰らないと思うけど、どうだろな~2つ目ならそんな顔はしないからな~」
「ソードの実家何かあるのか?」
「あ~家族仲悪いからな、特に親父と。家でて冒険者になったのもそれが理由だしな~俺がソードのいない所で内容まで話していいかはわからないからな。また、それは折を見て話すよ」
「わかった」
「一応、ニケの話もするか?」
「頼む」
ニケとは二ドル=ケーシー。二人の間では通称ニケと呼ぶほどの仲だった。同じ剣術戦科に入ったがソードと同じく1年で移動して書士科に行ったらしい。別々になった二人だが、会えばお互い挨拶をする仲だったらしい。レオが気づいたらいつの間にか卒業する頃にはレオよりも仲が良くなったと言っていた。
修学と同時に結婚をして翌年子供も産まれ、最近二人目が産まれた事をソードから聞いたらしい。ガルシアから地元のリッカへ就職して幸せに暮らしてるそうだ。
俺にはどちらも大事な情報だった。レオに感謝を言うとソードのいない部屋に帰った。
ソードが必ず帰ると言って出たなら待つ以外ない。俺もレオと同じで実家で何かあったのだと考えた。レオが詳しい話をしなかったのは、まだ信用に足らなかったからか?また、折をみて話すか…
明後日まで長いな…
□□□
二日後の約束の日、ソードを夜まで待ったがまだ帰らない。深夜を過ぎ、辺りが明るくなりかけていた。もし、朝までに来なかったらレオに話して探しに行くか…と思ったその時、静かにドアがカチャと開いた。
「ソード!」
俺は思わず駆けよりソードの肩を掴んだ。俯いたソードは小さな声で言った。
「ニケが……魔病になった」
『魔病』は不治の病で治ることは決してない。一度病気になれば瞬く間に広がり体を蝕む。薬も魔術も効果は薄い。死に至る病の代表で、3年は生きれないと言われている。その未知の病は魔の森から名前をとって魔病と呼ばれている。
俺は必死に言葉を探したが、あまり浮かばなかった。せいぜい出たのが
「ニケって同級生のか?」
だった。
何で知ってるんだといった顔で俺を見た。顔色は悪く隈が酷かった。おそらく飲まず食わずで寝ることもなく強行したんだと容易にわかった。
無茶しやがって、片道2日をどうやって往復3日で帰ってこれたんだよ!
そして、ソードはその場で力尽きて寝た。
先ずは休ませる以外選択肢はないな。俺が居なかったらこのままここでぶっ倒れてたんだろうな…。
フードを外しソードをベッドまで運ぼうと横抱きをしたら全体がひんやり冷たい。恐らく途中で雨にでも降られたのだろう。
濡れてんのか…んとにこいつは…
レイはすぐに風呂を沸かし直し、服を脱がせゆっくりとお湯に浸からせた。そのままの湯船に浸からせ、頭と体を洗いあげた。泡風呂のようになった浴槽からソードを抱き上げ、最後にシャワーをかけてタオルに包んでベッドに運んだ。
ソードを服のまま洗い上げたため自分も濡れたレイはシャワーを軽く浴びた。仰向けで寝ているソードのベッドに入りしばらくぼーっと顔を見た。
帰りにでも泣いたんだろうか、目の辺りが少し赤くなっていた。
「はぁ…良かった」
何よりも戻って来てくれた安堵で思わず声が出た。目尻を軽く触りそこにキスをした。そして、唇にも。
外は明るく、1日の始まる音がした。レイはソードを包むように抱きしめて深く眠りについた。
レイが起きてもソードはまだ寝ていた。一応、生きているか寝息を確認したが大丈夫だった。飲み物を取りに行きベッドにまた戻る、ソードが起きるまでずっと横にいた。
それから、ソードが起きたのは夕刻から夜になり始めた頃だった。
ゆっくりとソードは目を開けてすぐに謝った。
「…二日後に必ず帰るって言ったのに悪かった」
「ん、帰って来ただろ」
「……。」
「お風呂も入れてくれたのか、ありがと」
「濡れてたし、あのままだと風邪引くしな」
ソードは立ち上がると普段と変わらない様子で着替えを終え、昨日濡らしたフードなどを探した。
「服なら洗って風呂で乾かしてる」
「そっか、ありがとう」
飲み物を取りにいったら、レイに呼ばれた。
「ソード、こっちに来いよ」
優しい声に素直にしたがい、ベッドの上に座るレイの横にソードも座った。
明け方自分の世話をしてくれたレイにソードは甘えたくなかった。この先レイの甘さに頼ってしまう事はレイへの依存だと怖く感じたのだった。
ソードはレイと目を合わせない。そんなソードの横顔をレイは見つめていた。
「お前甘えないんだな」
レイはお見通しだった。
「甘えていいんだぞ」
「依存したくない」
「俺は全然構わないけどな、してもらって」
顔色一つ変えないソードにレイは後ろから抱きついた。ソードはそんなレイの行動に酔わされそうになる。レイは話を続けた。
「ソード、お前本当ならリッカにもっと残りたかったんだよな?それを俺の為に戻って来たんだろ?ありがとな」
「……。」
「できない約束はしないタイプだろ」
「……。」
「だから、起きてすぐ約束破ったの謝ったのか?普通、心配かけてゴメンとかなんだよ」
と軽く呆れ口調でいい、ちゅと首にキスをした。
「……。」
「後、何事も無いようにするなよ。昨日の倒れたの見てなくて、普通に次の日会ったらわかんねぇよ。そうやって誰にもバレないように自分の気持ち隠してきたのか?気を使いすぎだ」
ぎゅっと強く抱きしめる。
「……。」
いつも通りに。
「はぁ…生きづらいだろ?その性格だと」
「わかってるからいい」
「なぁ、頼むから。そんなお前見てるのつらい」
いつも通りに。
俺は慣れてるしこれが普通だからいいんだよ。
ソードを自分の方に向かせる。
俯くソードを前からぎゅっと抱きしめる。
「ソード、ずっといてやるから俺といろよ。全部受け止めてやるから」
レイは何を受け止めようとしてるんだ?
よくわからない。
「ソード、愛してる」
ソードがレイの背中に少しだけ手をのせる。
「これ、言っとくけどいろいろすっとばしてプロポーズだからな」
一瞬、ビクッとしたソードの肩を引き離してキスをした。
「ソード好き。やっと目をみれた」
レイの目、綺麗だな。
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