夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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78 レイの家再び ⑥


 ルーベンに誘われた三人は夕食をクラークス家と共にした。上座には主のルーベン、その右側には妻シリル。横隣にはメア、ハイルが座っていた。
左側はレイ、ソード、ロキの順に席が用意され料理が順に出された。

「さぁ、皆揃った事だし楽しく食事をしようじゃないか」

 各々が食べ始める。ロキは初めて食べる順番に出てくる料理に戸惑った。ソードはそれを見て

「端から順にだけど大丈夫。俺も慣れてないから。だから好きにしたらいい」

と笑顔で言った。
それを見たメアがニコニコしながら話しかけた。

「好きにしたら大丈夫だよ~ソード君は優しいね~ロキ君はソード君のどこが好きなの?」

 容赦なくメアの突っ込んだ会話が入る。ソードの好きな所は何処か聞かれてロキは慌てて手を休め話した。

「はい、優しくて甘やかさない所です」

「ふ~ん、僕は好きな人なら甘やかしちゃうけどな~他は無いの?」

「あ、十分甘やかしてもらってるんですが言葉で表すとすごく難しいです。あと一緒にいるとすごく楽しくです」

「そうだな」

同意したルーベンをシリルがチラリと見る。

「今日、ソード君と研究室で話したが大変有意義で楽しく過ごせた。まだ見せたい物がある、よかったら明日もきて欲しい」

「まぁ、あなたの研究についていけるほど学があるのですね」

「いえ、ただの冒険者の経験談のみです」

「俺達は明日帰る」

「レイ!!許さないから!!」

シリルがバン!っと机を叩いてヒステリックにレイに怒る。

「やめなさいシリル。二人の前だぞ、それに食事中だ」

「すみません…」

「ロキ君はソード君と付き合いが長いみたいだが、どこで知り合ったのか聞いてもいいかな?」

ロキが戸惑う。話していいのか悪いのか判断がつかなかった。自分は話してもいいが孤児というのがレイに迷惑がかかると思いすぐに言い出せなかった。迷っているとすぐにソードが答えた。

「ロキが自分から話すには、少し酷な内容ですので私から。ロキ話してもいい?」

「あ、うん。大丈夫」

 孤児からの知り合いで、ソードと一緒になり剣術訓練学校を修学したなど今までの話をした。シリルは少し眉間にシワを寄せたが何も言わなかった。

「へぇ~ソード君はロキ君育てたみたいなもんなんだ凄いね~」

「いえ、私の力は微々たるものです。全てロキの努力の結果です」

「そりゃ~好きになるよね~ロキ君~」

「ソードは無償の愛をくれる唯一の人です」

「それは、凄いね~羨ましい~」

「見返りはないのか?」

ルーベンの唐突な質問にロキは素直に答えた。

「あ、はい。ソードはいつも見返りは求めないです。何か欲しいと言われた事は一度もないです…」

「あ、いやすまなかった。少なからず人ならば見返りが欲しいのではと思って」

「見返りは必要ないです」

「そうか」

ソードの返答にルーベンは満足げだった。
メアの質問が続く。

「ソード君は~レイとロキ君のどこが好きなの~?」

「二人とも私の本心を引き出してくれる所です」

「へぇ~本心ね~じゃあ、いつもはその本心隠してるのかな~?」

「隠しているつもりはないですが…そうですね。自分ではうまく引き出せないので」

「では、その本心を引き出せたら…」

ソードの発言にルーベンが呟くように声にだすとレイがピクリとなり会話を遮った。

「食事は終わった。帰る」

「座りなさい、まだ食事は終わってない。リビングで大事な話をする」

 立ち去ろうとするレイを引き留めると、食べ終わるまでメアの質問が続いた。皆が食べ終えリビングへ移動し、使用人達がお茶とお菓子を並べた。座りはそれぞれになったがルーベンはソードを自分の隣に誘導し座らせ、その隣にレイ、ロキが座る。反対側にはシリルとメアとハイル。

皆がルーベンに注目する。

「よし、よく聞いてくれ。皆もわかっているがレイが結婚をした」

ルーベンとソード以外は皆が驚いた。その発言はあり得ない結婚をあっさり容認したからだ。レイはその事を不振に感じた。あれだけ反対していたのに手のひらを返すように認められ府に落ちなかったのだ。

「あなた!!!いきなり何を言ってるの!!」
「ちょ、父さん!!」

「黙りなさい!!」

シリルとメアは噛みつくように声をあげたがルーベンの一喝で静まる。

「二人は確かに属でも魔術士でもない。しかも男で子孫も望めない。あげく、三人での結婚でハッキリ言ってクラークス家始まって以来の大事件だ。だが、こうは考えれないだろうか。これ以上の大事件は起こり得ないと、おそらくレイはソード君を譲らない。きっとロキ君もだ」

「あなた!!!」

「ここで認めなければ、レイは一生私たちから離れてしまうだろう。シリルはそれでもいいのか?」

「………それは」

「大事な家族だろレイは。なぁ、メアもそうだろ?」

「はい、ただ公にはできませんし。属に入ってない二人は認められません!信仰はどうなるんですか!」

「そうよ!!周りに示しがつかないわ!騙されてるのよあなた!」

メアとシリルは阻止をしようと必死に認めれない理由をあげた。二人の剣幕にレイも反撃をした。

「俺たちは初めからそんなのどうでもいいんだよ!認められる、られないの問題じゃない。ただの結果報告に来ただけだ。それに俺は属じゃない、お前らが勝手に決めただけだ!結婚も勝手にする!属にも絶対いれない!」

「レイ!!!」

興奮したシリルが立ち上がりレイに詰め寄ろうとした。ルーベンが右手を軽く挙げシリルを静止させる。

「そこでだ、ソード君もロキ君もおそらく属には入らない」

「入らないです」
「あ、僕も入らないです」

「そうだな、だから二人にはクラークス家になってもらおうと思う」

「「ええっ!?」」

ソード以外皆が驚く。シリルは真っ青になりメアは開いた口が塞がらず。ハイルは目を見開いていた。

「あ、あ、あ、あなた。それは…それはどういう」
「父さん、それって…」

「二人を家名に入れる」

「「はぁ!?」」

「あなた、それは無い…由緒あるクラークス家に属でもない。信仰すらない。ましてやどこの家かもわからないそんな子達…結婚の事実まで作ってしまうなんて…」

「だまれ」

レイは蔑む発言にシリルを睨み付け低い声で圧力をかけた。
ルーベンは話を続ける。

「なら、レイは別の家名に入る事になる。昨日聞いただろ?ソード君と一緒にいるなら、家名も全部捨てると。お前が騒ぐからレイは出ていったが、ならうちに入れた方がいいじゃないか」

「…それは」

「レイ、ソード君と、ロキ君はうちの養子として家名に入れてはどうだ?養子ならレイもクラークスのままだし、属に入っていなくても周りにとやかく言われる事もあるまい。若い三人を皆で認めようじゃないか」

レイはクラークスの言い方にすぐにピンときた。

「お前の養子にはさせない、入るなら俺の養子しかありえない」

ふっとルーベンは笑った。

「そうだな、そうだった。レイの養子にさせるよ、お前は成人してるからできるんだったな」

今の笑いでレイは確信した。こんなにもあっさり結婚を認めたのはソードと二人で交わした約束に関係があり、しかも自らクラークス家に入れようとしているなんてあり得ない出来事の提案。それ程までにルーベンを動かした約束。

「どうだうソード君、ロキ君。クラークス家に入るのは?」

「私は構いません」
「あ、僕もソードが良ければ」

「なら…」

「待て、三人で決めるから即答はしない」

「…わかった。ならここを出る前に決めなさい」

「わかった」

「じゃあ、話しは終わりだ。皆でお菓子でも食べようじゃないか」

そういい、ルーベンは冷めてしまったお茶を新しいのに取り換えさせた。にこにこしているルーベンをよそに、シリルとメアはそれ以上言い返せなかった。

用意したお菓子に誰も手を出そうとしなかったのでソードが折角だと思い食べようと手を向けた。すかさずルーベンがそのお菓子を取り食べやすく開封してからソードに手渡した。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

ソードは無表情で受け取りモグモグ食べた。その食べている様子を嬉しそうにじっと見つめているルーベン。この違和感にロキとレイは敏感に反応した。
ルーベン以外の家族は目まぐるしい状況についていくのがやっとで、そんな些細な事に気づきもしなかった。

お茶を飲み終えそれぞれが部屋に戻った。部屋に着くや否やロキがレイに話しかけた。

「レイさん…」
「待て、言うな」

レイは恐る恐るソードに近づき聞いた。

「ソード、確認するけどさっきの約束以外はないな?」

「無い」

「…じゃあ、聞くけど俺のお…」

言葉にするのも嫌過ぎて途中で言葉が詰まる。

「お…」

「お?」

お、で止まるレイをソードは不思議そうに見た。

(レイさん、ガンバレー!)
ロキは心でレイを応援した。

「お…」

「お?」

「親父と寝た?」

「は?」
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