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82 ソードの家
久しぶりのリッカは何も変わらず、前と違うのは訪れる場所。病院でも家でもなく広い土地に規則的に置かれた石の前。進んだ先には名前と年数が書かれていた。足元を見ると、小さな花がちょこんと置いてあった。その隣にソードはお菓子を一個置いた。
「報告遅れたけど…」
返事は返ってなこないけど、話かけられる事もないけどソードは少し笑った。その時ふわりと風が吹いてソード達の前を通りすぎていった。
「やっぱりニケの言う通りになったな」
「そうですね」
「ん?」
「ソードと絶対結婚するから大丈夫って言ってた」
「あぁ、そんな様な事言ってたな。確定してるかの様にな。あの時まだだったのに!」
「そうそう」
「ニケがお祝い一番乗りだったな!」
「むぅ…そうだけど、早すぎんだよ」
「でも、結果なってるから一番乗りです!」
「そうだな…でも何でニケはわかったんだ?」
レイとロキはニタニタと笑っていた。
学生時代のソードがニケに紹介するなら結婚相手しかしないと話していた。本人も忘れていそうだからもし、無意識でも紹介されたら結婚相手だと確信があるとその事をニケは二人に話していた。
「予知夢かもよ!」
「ソードみたい!」
「えー!」
自分の言った事などすっかり忘れているソードにこの答えはわならないのだった。
□□□
今回ウェザーからぐるりと周り結婚報告旅行のようになってしまった三人。初めはレイの家から身を守る為に行動したのだが、結果上手く行き計画以上の運びとなった。
リッカにきたので二人はもしかしたらソードが結婚報告をするかもと思ったが一言も家には行く素振りは見せなかった。言わないと言う事は行きたくないんだなと思ったいたが、少し興味もありロキは聞いてみた。
「ねぇ、ソードは家に報告しなくていいの?」
「あー別にどちらでも」
「家、こっから遠い?」
「いや、近いよ」
「そっか」
「ん?行きたいの?」
「ちょっと行ってみたいかな…」
「俺も気になる…」
「別にいいけど、嫌な思いするよ」
「そうなの?」
「うん」
「まぁ、ソードが嫌ならあれだけど…」
「あー俺は慣れてるからいいよ。お前らが嫌な思いするのが嫌なだけ。時間あるし暇だから行くか。レイんちみたいな熱烈歓迎はないから報告したら帰る」
「「わかった」」
レイもロキも暴力を振っていた親だと知っていたので少し戸惑ったが前から気になってはいた。仲が悪いのはレオから聞いて知っていたが、音信不通という訳でもなさそうだったからだ。
ソードが親と会わせる事を思ったより嫌がらない事に、案外解決しているのではと思った。それに嫌な思いをすると言ったソードに自分たちの結婚を罵倒や反対される事にも覚悟はできていた。
だが、二人の思い描いた嫌な思いとソードが思う嫌な思いは違っていた。
閑静な住宅街を通り1本抜け田舎道に見晴らしの良い綺麗な土地。その中で大きな家が2.3軒あるのが見え指をさしソードが言った。
「あれがうち、んで一番奥がスメルんち真ん中は、この辺の地主」
「へぇ~いい場所だな」
「昔からの場所だからな」
「ソードんちも大きいね」
「レイん所と比べたら~」
「あはは、レイさんちは城ですよ!」
家に着くなり、ノックもなくソードはズカズカ入った。ドアをバンバン開けていく。
「誰かいないのー」
「「お邪魔します…」」
意外にも普通に話かけたソードに二人はビックリした。もっと、殺伐としていたり悲壮感漂うかと思ったが普通。
「きゃ!」
「あ、いた」
「ビックリするじゃない、あらソード!お帰り!久しぶりだけど元気にしてた?」
「ただいま、元気。俺、結婚したから。じゃあ」
キッチンで見つけた母親に一言そう言い帰ろうとした。レイもロキもビ本当に報告しただけで帰ろうとしたので驚いた。
「ちょっと!どーいうこと?ちゃんと話なさい。丁度お父さんもいるから!あら?お友達?珍しいじゃない。ゆっくりしていってね」
「「はい…」」
普通に見えた。がここまでだった。
「二人ともこっち」
リビングに案内され中に入るとソードの父親がソファーに座っていた。
昔から使っていたのだろうか年期のある重そうな家具に表彰されたであろうバッジが飾ってあった。他の棚には高価そうなお酒が入っていた。
威圧感のある年配の男性でレイの家とは違う意味で緊張感のある人。確かに剣術にたけていそうだと納得する見た目だった。
「座れ」
「すぐ、帰る」
「こっちがレイでこっちがロキ」
二人はその場で頭を下げた。さっきから簡易的にしか紹介をしないソードを見て何となく気付き始める。
「あぁ」
「俺、この二人と結婚した。じゃあ、それだけ」
「待て」
父親はビックリしていたがその場で立ち上がった。ソードは帰る素振りをしたがレイとロキが居たので一応、父親の話を聞いた。
二人は厳格で厳しいなら反対が有るだろうし罵声ぐらいあってもおかしくないと少し身構えたが思っていた言葉と全然違った。
「こいつでいいのか?」
「「え?」」
「だから、本当にこんなやつなんかでいいのかと聞いている」
戸惑ったが二人は返事をした。
「「はい」」
「そうか」
「お前らの職業は?」
「お前らって言うな」
圧を込めた低い声で父親の言葉に被せた。ソードは鋭い目付きで父親を見る。それに父親が屈服して言い直す。
「君達の職業は?」
「「冒険者です」」
「そうか」
聞いた割には興味のない返事だった。おそらく自分の思い描いた良い返答では無かったからだ。結婚よりもソードよりも自分たちの何の職業かを気にする父親に…ロキは思いきって聞き直した。
「あの、結婚はいいんですか?」
「あぁ」
祝うことも反対する事もないただの返事だった。自分の息子をこんな奴といい、結婚を話しても興味のないただの返事にロキは話しても無駄だと思った。
「そうですか…」
「もう、行く」
ソードがそう言うと深くどかっと座り直しながら独り言の様に言った。
「くだらない職業より剣士か兵士になれば良かったんだ。ソウルのように国を守る素晴らしい職業につけばよかった。せめて男じゃなく女に生まれればな」
出ていこうとしたが振り向いて父親を見据えて言い返した。
「兄貴は関係ない。俺は剣士ならなくて良かった。お前らなんかより全然幸せだ。ついでだ言ってやる。お前らの子育ては失敗だった。子供の俺が言うんだ間違いない」
酷く冷たい言い方だった。
「魔獣の子め…」
その言葉で一瞬ソードの回りに黒く霞んだものが覆うように見えた気がした二人だった。すぐに部屋をでてバタンと扉を閉めるとお茶を出そうとした母親と鉢合わせた。
「あら?もう帰るの?」
「帰る」
「折角きたのに、良かったら部屋にお茶を持ってくけど?」
「……。」
ソードは立ったまま母親の入れたお茶を一口飲んで「後はいい」と下げさせた。
「俺、この二人と結婚したから報告に来ただけ」
「そうなの?」
「部屋まだあるの?」
「勿論あるわよ」
「じゃあ、それ見たら帰る」
「もっといればいいのに」
「……。あんな父親、俺ならさっさと別れるけど」
「いい人なのよ~」
「あ、そ。じゃあ、2階の部屋見たらそのまま帰るから。ソウルにもよろしく言っといて」
「ん?2階にいくの?」
「うん」
ソードは足早にレイとロキを連れて2階へ行った。案内される部屋の前に着きドアノブを持ち一言声をかけた。
「まぁ、入れないけど見るだけなら」
「「うん」」
二人はソードと母親の噛み合わない会話に違和感があったが見たとたん理由がわかり言葉が出てこなかった。
ドアを開けるとソードの部屋という場所は物置となって入り口は板で塞がれ中に入れなかった。埃まみれで随分開けてない様子。レイの家とは大違いでいつでも帰ってこれるようになどとはほど遠かった。まるで存在を無かった事にしたいように。
「一応、地下にも俺の部屋あるけど見る?」
「「いい」」
二人は揃って首を振った。
ソードの人格が否定され続けて育った家にはこれ以上いる必要がなかった。家をでて伸びをしながら話しかけた。
「あー疲れた…悪かったな二人共。な、嫌な思いしただろ?」
「「ううん」」
「まぁ、あんな感じ。報告はしたからいいよな!」
「「うん」」
すっかり外は暗くなって綺麗な星が見えていた。暗くて見えないはずのソードの顔は何となくスッキリしたような、物悲しいような顔をしているように見えた。
「俺はソードじゃなきゃ絶対ダメだからな」
「俺も、ソードしか嫌だ」
「お前ら趣味悪い」
ソードは笑いながらそう言い三人で宿に帰った。
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