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第二部
7 謎の男 ①
レイとロキとはぐれて1時間は経つか…
魔の森の第3深層へ行き三人で魔獣を追いかけていた。数体いた魔獣のうち2体をやっつけ3体目を倒そうとしたら3体目がロキめがけ近づいた。1体を倒した時にできる隙を狙う賢い魔獣だった。
レイはすぐ魔術を使い魔獣の足止めをした。抗うように魔獣は大きく腕を振り回しロキ目掛け殴りかかろうとしたがロキは剣術で腕を切り落とした。もう片方の手がロキを狙うかと思いきや、後ろから近づくソードを裏拳で殴る。剣で拳を防ぐが反動で強く押し飛ばされた。
「あ~大丈夫だから、後で合流な」
飛ばされるソードを見ながら大丈夫そうだと思い残りを倒した。ソードは無傷だが勢いよく飛ばされたためスピードがおちるまで身を任せた。
ドポン!
湖に落ちる。
クソ、ついてない。
岸まで泳ぐか…
ザバー!!
「はぁはぁ…やっと岸か…」
湖が意外と広く体力を消耗した。水を含んだずっしり重たい服を真っ先に脱いで仰向けになった。
どーするかな~少し乾くまで待つか
服を絞り木に掛け濡れた防具も下着以外は全て干した。フードマントも濡れてしまい木からポタポタと滴が垂れ乾くには時間がかかりそうだった。特にする事もないので胡座をかいて湖を眺める。
今襲われたら死ぬかな?ま、大丈夫か。
久しぶりに一人になる…前はよくこんな事あったな。魔獣がもうちょい大人しければここも綺麗だから来れるんだけどな。
「ずいぶん無防備なんだね」
声のする方へ振り返ると一人の身なりのいい冒険者が立っていた。自分が油断していたと思ったがすぐにそうではないと勘違いを訂正した。
気配なしか…フフッ
「ここら辺は危険だけど大丈夫?」
「はい、大丈夫です。湖に落ちたので服を乾かしてます」
「ふふふ、そうなんだ。たまたま通りすがったら君が見えて、あまりにも無防備だったから思わず声をかけてしまった」
「そうですか、服が乾いたら帰ります」
「ふふ、なかなか時間かかりそうだね」
「そうですね」
少し考えてから男が話しかけた。
「隣いいかな?」
「どうぞ」
「良かったらこのマントを」
「あ、いえ……ありがとうございます」
男は自分の着ているマントを外しソードに手渡してくれた。折角なのでマントを羽織り腰を下ろすと男も隣に座った。
「綺麗だね」
「はい、とても」
ずっと静かな湖を二人で眺めている。
魔獣がいるとは思えない穏やかな景色。
「寝そべっていいですか?」
「え?」
ソードはマントをきちんと畳み草の上にゴロンと体を休めた。それを見た男は畳んだマントをソードの体に掛けなおし自分も隣に寝転んだ。
「気持ちいい」
「そうですね。魔の森とは思えないぐらい穏やかです」
「そうだね。何だかいけない事をしている気分になるよ」
「あはは、そうですね。気を抜いたら死に至る森でこんな事してますから」
少し風が吹いて髪がゆらゆらする。
「君は警戒しないの?」
「したところでなんで」
「ふふ、潔いんだね」
「もし、やるなら服と防具つけるので待って貰いたいですが」
「あはは、初めからそんな気ないよ」
「そうですか」
ゆっくりとした時間が過ぎる。
「ここ、どう思う?」
「魔の森ですか?」
「うん」
「残したい。ですかね」
「へーそんな事言う人初めて会ったよ」
「そうですか」
「魔獣を善悪で判断しないの?」
「しないです」
「即答だね」
ふふっと男が笑った。
ソードがポロっと口に出した。
「俺は魔獣と共存したいです」
「!?」
「?」
「いや、自分と同じ考えの人初めて会って…驚いた」
「同じ考えなんですね。なかなか理解されないというか、話しても結論がでない話ですから。この話をしたのあなたが初めてです」
「そう。難しいよね共存…同じ考えの人に会えて嬉しいよ」
口角を上げ遠くを見ながら言うと寝転んでいた体を起こし身なりを整えた。ソードもマントを返そうと起き上がり前屈みになると男が手を貸し引っ張りあげた「ありがとうございます」と言い終わらないうちに手がぐいっと引っ張り上げられ勢いで男の胸に体がぶつかった。
「あ、すみません」
「いや」
すぐ離れようとしたら背中から引き寄せられ顔が耳元に寄り囁かれた。
「そんなに無防備だとそそられちゃうな」
「!?」
一瞬ゾクリとした反応を見せたのでさらに耳元でふふっと笑われた。そして首にチュっとされソードが手にしていたマントを取りソードの肩にかけ直した。
「ありがとう、話に付き合ってくれて。そのマント良かったら使って」
「え、あの。ありがとうございます」
「それより君を手に入れた熱烈な彼等に妬けるよ。じゃあね」
男は自分の両肩を人差し指でさして森に消えていった。
ソードは「??」と思って両肩に手を当てたら、数日前に二人につけられた歯形を思い出し顔を赤くした。
まだ少し濡れた服を取りズボンを履き防具を身につけ、さっきくれた男のマントを羽織った。マントに手を触れ足早に二人の待つ場所へ帰った。
今まで見たことの無い冒険者だった。あんなに強いなら一度ぐらい見たことがありそうだが。俺より年上だったか…。身なりもキチンとしていた。剣も持ってたが魔術が使える気もする。
読めない…このマントも綺麗で軽くて上質。微かに匂うこの香りは…嗅いだことないな。敵意は無さそうに見えたが…わからない。
遅くなったから二人が心配してそうだ。
自分も急いでその場を去ると飛ばされてきた方向へと駆け出した。案の定、二人は心配して近くまで探しに来ていた。ソードの見慣れない格好を不思議に思ったが宿に帰った。
「そのマントどうした?」
「あぁ…何か通りすがりの人が貸してくれた」
「冒険者?」
「多分」
「そーいや、お前らあの後大丈夫だった?」
「俺達は全然」
「そっか」
冷えた体を温めお風呂から上がると下着姿で髪を拭きながら答えた。
「あの後湖に落ちたんだよね?」
「そうそう、泳いで岸まで渡って。んで服乾かしてたら会ったんだよ」
「だから貸してくれた?」
「まぁ、そうなんだけど…。後ろに気配もなく近づいてきたし剣術士か魔術士かもわかんなかった」
「ソードが分からないなんて珍しいな」
「ですね」
「一人で3深層まで来るなら強いよな」
「そうだな…んー見た目は若く見えたが持ってる雰囲気と経験値が明らかに違う。俺より一回りぐらい上かな?強いのは間違いないけど…何か不思議な人だったな」
「「…。」」
ソードのあまり言わないセリフにドキッとして二人は身体を調べた。
「なんだよ!」
「何もされてないよな?」
「マント貸すって事は薄着だったて事だよね!」
「あ?下着だったがされるか!」
「信じらんない!!」
「お前、下着なんて裸だろ!」
「違うわ!」
「しかも第3深層で!!」
「あーそれは、ゴメン」
「外で下着は禁止だ!」
「は!?濡れたから仕方ないだろ!!てか、お前らが付けた歯形見られてすげぇ恥ずかしかったんだからな!!」
「あ?見られるぐらい近くに居たのかよ!」
「あーマント着けてくれた時に…あ」
首にキスされたのを思いだして言うのをやめた。何かあったと察しソードをベッドに押し倒した。
「「ソード…」」
「あ…下着やめる…ね」
「「何があったんだよ!!」」
白状するまで離される事はなかったが、それどころか白状した内容に更に激情し至るところに歯形が付けられた。
□□□
魔の森の第3深層を二人の男が歩く。
「ご機嫌?」
「まぁね、動きは?」
「ない、やっぱり誘いこむしかないね」
「了解、てことは俺の役目だな」
「宜しくお願いします」
「嫌な役だな~」
「まぁ、俺達は陽の目には当たらない活動だから。やるしかない」
「そうだな」
「俺らのこれって意味あるのかな…何か、今日あった子見たらそんな事しなくてもいい気がしてきたよ」
「へぇ~それはまた評価高いね」
「魔獣と共存したいってさ」
「!?」
「ね、いいよね。下着一枚で武器も持たずに3深層にいた。しかも、俺に全く警戒なしだよ」
「連れてこれば良かったのに。見たかったな」
「だけどしっかりお手つきだった」
「あ~そういう事」
「はぁ…勿体無かったかな」
「もう、後悔してる。そんなに後悔するならとりあえず連れてきたら良かったのに」
「だな、あ~失敗した」
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