夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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第二部

9 謎の男 ③


第4深層後半

「くっ…」

 …強いな

 腕はまだ動く

 考えてる暇はないか

 深い森の中で1体の巨大な魔獣と戦うソード。右側の服は派手に破れ腕が見えるがそこから血が流れ出る。他もいたる所に傷が見える。

 大きな魔獣だが動きもすばやく力も強い。斬り込みも入ってはいるが致命傷にはならない。巨大な腕がソードの体を掴もうと追いかけ回す。
長引けば不利になる、余力は残す余裕もない。

食い縛りながら双剣を何度も同じ場所に入れる。なかなか倒れない魔獣に途中から呆れ口がにやける。

 まだかよ

 クソ強いな
 これで駄目なら後がない

 声を上げながら双剣を無数に繰り出し魔獣の腕を切り落とす。腹の下に入り込み大きく切りいれ最後は魔獣の左腕から肩に駆け上がり両目を一剣ごとで突き刺す。

雄叫びとともに倒れだすがもがき苦しみ剣を抜こうと必死に暴れる。左目に突き刺さる剣をソードの体ごとひっぺ剥がし宙に投げ飛ばした。

投げた出された体はギリギリ受け身のような形をとったが衝撃が強く木に当たり叩きつけられた。

「かっはっ…」

とまりそうだった息を吸い込む。
口の中は血まみれでプッっと血唾を吐いきその場で立て膝をついた。

 気がつかない訳はなかった。

 剣を支えにゆっくり立ち上がる。相手を見ると姿勢を正し剣をピッと振り血を払う。

「強いね。一人で倒しちゃうなんて」

「とどめはお前が刺しただろ」

「あんだけ弱まればね。自分じゃ、あそこまでできない」

「とどめを刺せなければ同じだ」

「ふふふ」

男が近づく。

「それ以上近づいたら殺す」

ピタリと止まった。

「君をやるつもりはないよ」

「……。」

両手を上げ敵意の無い仕草をするがソードの警戒はとけない。

「もう少しだけ近づいていい?」

「……敵意がないのはわかるが無理だ。今、間合いに入ると勝手に手が動いてお前を殺す。余裕がないから意識の解除と体の解除が上手くできない。殺したくないから近づくな」

「あぁ…そういうこと」

男は一歩下がる。

「悪い」

「いや、こちらこそ」

「で、わざわざ来たんだ。何だ?」

顔色の悪いソードが問う。

「カウロックについて何か知ってるか?」

「はぁ…国の事は国でやってくれ」

「あ~ごめん、まわりくどかったね。君には必要無かった。魔獣を囮に使う話を知ってるなら教えて欲しい」

「…そうか…それか」

体がよろける。

「悪い…限界だ…」

 膝を着きドサッっと地面に倒れこんだ。剣を握られたままのソードに男はゆっくり近づいて握っている剣を手から離させた。


□□□

 白い部屋のベッドで寝る。ソードの意識が戻り目を開け左右を見える範囲で確かめた。

 何も無いな…

 部屋には白い壁が自分を囲むように四方にあり白いドアが一つだけあった。あとは自分の寝るベッドに椅子が1脚のみ。

危険が無いのを確認し起き上がる。体には包帯が巻かれ怪我の手当てが施されいた。怪我の具合を確かめながら布団を捲る。


 右腕の怪我と肋骨のヒビに打ち身ぐらいか。
 意外と丈夫だったな俺の体。


両手を開いたり閉じたりして力が入るか見ていた。

 廊下から小走りに駆け寄る音が聞こえ、ソードの部屋の前で止まる。ドア越しから声がかけられた。

「入っても?」

「どうぞ」

一人の小柄な男性が入ってきた。ソードよりかなり年上で眼鏡と白衣。ベッドに座るソードに近寄る。

「体調は?」

「まずまずです」

手に持っていた水を差し出すがソードは飲まない。

「警戒しないで自白水じゃないから」

そう言われ水を飲む。

「しばらくここで静養して欲しい」
「……。」

「僕は医者だから後で話を」
「今でいいです」

「わかった、君は倒れたのを担がれてここにきた」
「ここは?」

「残念ながら教えられない」
「……。」

「ただ、安全だから安心して。補償する」
「はい」

「腕の怪我は見た目が一番酷いけど大丈夫、回復する。後は肋骨が折れたのと打ち身に多数の切り傷。こちらも暫くしたら回復すると思う。2.3日すれば動くのは大丈夫。でも骨は折れてるから1ヶ月は安静に」

「ありがとうございます」

「あの森でこれで済んでるのが凄いよ。後で案内人が来るからその人に聞いてね」

まだ、眠い。瞼が重くなる。

「もう少し休むといい…」

ソードはベッドに倒れゆっくり寝た。
寝息を確認する。

「ゴメンね、もう少しだけ寝てて欲しいんだ」

□□□

 思ったより軽いな。そんなには酷くやられてないみたいだけど。腕は見た目よりはすぐ治るかなな?後は脇腹がやられたぐらいか。早く話したいな~

「その子をよろしくお願いします」

「わかってるって」

「目は?」

「目?異常ないけど」

「目が光る事ありますか?」

「聞いた事はないけど、この世には無いことはないからあるかもね」

「可能性を」

「情報が少ないな。何かしらの力が宿っている。或いは閉じ籠っている。後は持って生まれたとか」

「力は…」

「あぁ、この手のは無理矢理引き出すのやめろ。間違いなく体に影響出る。一心同体の事が多いからな。今は光ってないのはそういう事だな」

「わかりました。この話は…」

「言わないよ、医者だ。話たら首がとぶ」

「ふふ、後よろしくお願いします。報告会までは念のため寝かせて置いてください」

「わかったよ」

 力が何かわからないが初めて光る目を見た。綺麗な色の瞳だ。この後は報告会か、他の奴には知られたくないな~今はまだ情報は渡さない。

こっち来てくれないかな~

□□□

 森の中にある廃棄の開けた場所に数名が立ち話をしている。

「捕まえたのか?」
「ああ」
「話は?」
「まだ、傷が深くて寝てる」
「そうか、それよりまず報告を…」

「…んじゃ解散」


二人の男がその場に残る。

「まだ寝てる?」

「一度起きたがすぐ眠らせた。まだこの話の決着がついてなかったし二人でゆっくり話したい」

「なるほど、話きくだけだろ?」

「まぁーね、面白い事たくさん聞けそう。第4深層後半で捕まえたんだ」

「凄いな」

「まぁ、とどめさせなきゃ死んでたけど。だけど俺と同じぐらいの強さ」

「欲しいな」

「だろ?俺も欲しい」

「目が覚めたら情報を聞き出す、偶然だけど魔獣の話を知っていた。お前に報告したら好きにする」

「自分で報告しろよな」

「報告に行ってる間に逃げられたくない」

「はぁ~じゃあ皆の前に持っていけばいいだろ」

「それだと向こうが嫌がるから連れてかない。お互い顔バレは嫌だろ。だから宜しく」

「それもそうか、いいよ。しかし、熱の入れようが半端無いな」

「ふふ~魅力的なんだ♪」

「だからお手つきが二人もいるんだろ。火傷するぞ」

「火傷してもいいかな」

「バカだなお前。助けないからな」
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