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90 ご招待 ③
この国の王子を間近に見てソードが真剣なのは全部この事だったのかと二人はわかった。逆らう事が許されない王という巨大で絶対的権力を前に人は従うしかないのだと。そしてレグルス王子が妃以外、この手合わせも含め全てに興味が無いことに。
二人は手合わせの行く末を見守った。
思った以上にリヒトが強い事に驚いた。ただの手合わせだと思っていたが違った。大振りに見せかけフェイントを仕掛け下から剣が入る。他にも様々な攻撃技を出しては剣を受ける。
皆が二人を目で追いながら剣技を見ていたがソードとレグルスは違った。
リヒトか…大会で何度も最上位になってたな。レオとも対戦していたがまぁまぁだったな。太刀さばきも悪くないし動きもいい、そつなく綺麗だ…ふっ綺麗過ぎて模範生だな。レオに鍛えてもらってたのが良くわかる。
何て言ったか知らないがレオと同じ位の俺とやりたくなったのか?悪いやつじゃないけどな…
ただ、こいつはバカだ。
決定的に違うんだよ。
いくら手合わせを上手くなっても所詮手合わせ。これ以上強くはなれない。
冒険者になる前ならロキといい勝負だったがもはやそれも無い。ロキの方が遥か上だ。お前はずっとレグルスの籠の中にいればいい。
キンキンと鳴る。
へぇー案外強いじゃないか。レオが言うだけの事はあるな。リヒトの剣をかわすか、攻撃はさほどしてこないが体力温存か?
さて、いつ仕掛けるか。リヒトが優勢の時にはやれないな、劣勢もしくは計画通りとどめ前だな。
悲しい表情は用意しとくべきか、くっくっく。
□□□
悪くない粘りだが……
それよりも…仕掛けてくるな。
上に3体か…あー王子入れて4体か。
一層このまま流れに身を任せ王子を斬ってもいいが必ず仕掛けさせる。お前のしっぽを出させてやる。
キンキンと激しく剣音がなりだす。リヒトの剣はソードを攻め立てる。一瞬だけソードの目に光が当たり顔を逸らすがそこへリヒトの剣先が掠り眼鏡を飛ばした。それに遠慮しようとしたリヒトだがソードは続けた。構わず来いという合図で剣を振るとリヒトもそれに乗る。
攻めたててくるソードにリヒトは強く反発するもソードの剣はリヒトから引かなかった。一歩一歩後退りするリヒト。
踏ん張りをみせ抗うがそれもソードが弾く。剣を下から上に思い切りはね上げリヒトの手から剣が離れる。とどめと言わんばかりにソードが上に飛び上がったその時天井に隠れていた黒い影3体がソード目掛け一斉に攻撃をしてくる。
素早く3体を上で蹴り上げ吹っ飛ばすと最後1体の体を軸に勢いをつけリヒトめがけ剣を向ける。
来いよレグルス…
その瞬間
キン!!!
と一際大きな音がした。
「その目…誰が見せていいって言ったんだよ」
少し怒ったような低い声が耳元で囁やかれた。体を後ろから羽交い締めにされるような形で左手はソードの両目を覆い右手は腕ごとホールドするようにレイに制止させられていた。
レグルスはリヒトを背に剣を抜きソードを攻撃していた。手合わせの間に入り込み真剣をソードの首に向け切り落とそうとしている。
そんなレグルスの真剣を受け防いでいるのはロキだった。
ソードも体を羽交い締めにされた状態でレグルスが握る剣手をこれ以上首に入らせないよう自分の足で止めていた。
リヒトはしりもちをついてレグルスとソード達の様子をただただ見ていた。
時間差で鈍い音がする。
ドサッ
ドサッ
ドサッ
落ちた先を見ると暗殺者が3体倒れていた。
レオと護衛達が唖然としていると目を覆われたままのソードがしゃべりだした。
「王子妃様、申し訳ございません。余りにも白熱してしまい私の伴侶が止めに来てしまいました。今回の手合わせは私の負けです。もしくは次回へ持ち越しで引き分けという形にはして頂けませんでしょうか?」
王子妃が我にかえり立ち上がる。
「お互い邪魔が入った事ですし」
「あ…うん。レグなんででてきたの!?」
固まって何も話さないレグルスは剣に力が入ったままだった。
「レグ!真剣なんて出さないでよ!だから止めにきたんじゃない!ごめんね、三人とも」
レオも驚いていたがすぐにソードの意見をのんで場を取り仕切った。
「お互い今回は引き分けになされてはいかがでしょうか?たかがお手合わせで周りを本気にさせるとは流石リヒト様です。お気に召されましたらまたソードとの対戦をしてはいただけないでしょうか?」
「え!いいの!?また、やりたい!レグいいよね?」
「……。」
「レグ?レグ!!」
「あ、あぁ」
リヒトはぐいぐいと腕を引っ張った。
「寛大なお心遣いと、ありがたきお言葉に感謝いたします。ロキ、私の眼鏡を」
「ロキ」
「はい」
ゆっくり剣をおさめ眼鏡を取りに行く。ソードも足をすっと下ろした。
レイは力を緩めソードの握っていた剣をレオに渡した。王子からは目を離さないままソードの身を後ろに下げた。
「王子様、王子妃様、目が悪くこのような格好で申し上げまして誠に申し訳けありません。お手合わせありがとうございました」
とソードがいうとレオが仕切る。
「では、本日は引き分けということで終了致します。リヒト様よろしいでしょうか?」
「うん!強かった~ありがと!また宜しくね!レグいこー!楽しかった~!」
「そうか…」
ゆっくり剣を下ろし鞘に入れリヒトに引っ張られながらレグルスは部屋を出ていった。
「ねぇ、それより何なのあの3体!!気持ち悪いんだけど!まさか、邪魔するためにいれてないよね!」
「すまない…」
そんな声が遠巻きに聞こえドアが閉じられた。
一気に場の緊張感がなくなり、護衛達も床に倒れた3体を引きずり部屋を出た。その場は4人だけとなった。
「一体何が起こった…」
「さぁな。手合わせしたんだろ」
「…何でレグと暗殺者がでてくる必要がある」
「いろいろあるんだろ」
「おい!お前何かに巻き込まれてないだろうな!」
「俺はそんなつもり全くない。レイいいよ」
目を覆っていた手を外させた。
レオはソードの目が少し光ってすぐに消えた事に気がつく。
「お前それ…」
「まだ消えてない?」
「もう消えた」
レイが目を覗きこむ。
「それよりもレオ、話ってなんだ」
「あぁ、ここじゃ無理だ。ついてこい」
「ロキ…眼鏡ありがと」
「うん」
ロキの頬に手を当てお礼をいい眼鏡をかけレオの後について行く。
「おい、本当に大丈夫だろうな。レグルスは食らい付いたら離れないぞ。頼むからあいつには狙われてくれるな」
「随分優しいんだな」
「ソード、本気だぞ俺は」
「わかってるよ、こいつらのお陰で助かったし」
レオは急ぎ足で検問まで行く。更に別の検問へ行きソード達を別ルートで城の中へ入れさせた。門番とは話がついていたようで簡単に入る事が許された。
塀に囲まれた上等な造りの家。入り口は二ヶ所、正面と隠し扉。迷わず隠し扉へ向かう。中に入ると庭には綺麗な花壇と噴水、畑も少しある。
召し使いが二人と護衛が二人外にいた。レオは手を挙げて挨拶する。すると木の奥から小さな子供が走ってきた。
「レオ~!」
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