夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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第二部

23 インセット


 今回の処分が下る。

 月と星が綺麗に輝き流れる雲の形を映し出す。上空の雲の流れは早い。

ヒューズを一望することのできる場所、これぞ権力の象徴。城の一番の守り部屋は見晴らしが良くこの高さなら攻め込まれる事はまずない。

王妃とはとっくに城内別居の仮面夫婦。愛人の使用人とはまだ続いているだろうか?常に夜は1人で酒を飲みながら仕事をこなす。

部屋の窓が開き風が入る。

「ん、閉め忘れか?」


窓を閉めると同時に明かりが消える。影に紛れ姿は見せず武器は必要ない。声も。
後ろからそっと近づいて俺の挨拶。

「縦か横に首を振れ」

縦に頷く

「魔獣を使い国崩しを」

横に振る

「魔獣を使うのは許さない」

縦に頷く

「息子の不始末だ。責任をとれ」

横に振る

「では息子に制裁を」

横に振る

「お前の出来る事はあるか?」

縦に振り発言を許される

「す…全て…命以外…」

再び発言は失われる

君との約束だからな…

制裁を恐れ我儘な酒臭い男は床に倒れた。

飲みすぎかな…

□□□〈フェリシア〉

「結局はヒューズに噛まれたわけだが王と王子に制裁はなしでいいな」

「王は本当によろしいのですか?」

「構わない、ヒューズだったのは明白になったが手は実際だしてきてはない。聞けば王子の企てだったと。そこまでなめられていたとはうちも落ちたもんだな。今回の上級冒険者殺しは許されざる事実。あの冒険者の言うとおり10年したらヤツは王になる。それ迄指折り数えて待つよ。それに褒美がそれだ、今さら引けまい」

「そうですね」

「下手したら国が滅んでいた。お前らと彼らがいたから助かったのは大きな事実だ。たった6人で解決とは誰1人として敵に回したくない。お前からの提案とは言え一流上級者は国をも変えるな。全くすごいよ」

「確かに、素晴らしい冒険者達でしたね」

「そうだな、三人とも素晴らしかった。直属に出来なくて残念だよ」

「そうですね~」

□□□〈ルーベン〉

 王からの呼び出しは薬の流出者の処罰を下したとの事。私が王へ先に報告していたように薬が流出しカウロックに被害がでたが今回は穏便にすませ今後このような事がないようにとの警告だった。使った相手は不明だが我が国の管理の甘さがそうさせたのは間違いない。

王は謝罪をしたらしいが機嫌が良かった。なぜなら悪用された薬を止めたのが我がだったからだ。命をかけカウロックの人々を助けたのだと報告を受けた。だがこの事は公にはしてほしくないと申し出たそうだ。

ウェザー王は私にだけは伝えておくべき事だと話された。

多大なる感謝をカウロックが述べられ彼らを今後も丁重に扱うという事と魔の森の調査協力を申し出たたので援助する様子。

 王としては流出という汚点ができカウロックとの立場関係が弱くなると思ったようだが彼らが活躍したことにより逆にパイプができたと喜んだ。

 クラークス家の当主の私に感謝をされたが…私ではない。あの三人がした事だ。

 レイを……三人を誇りに思う。

 私は素晴らしい息子達を持ったな。

「レイに手紙を」

「かしこまりました」


□□□


 あれから何も無かったように日常が続いた。
 いつもの三人。

「今日はどうする?」

「お菓子買いに行く」

「ガルシア?」

「うん、シルバに会いに行く」

「「いいね!」」


 インセットと朝日を見た日に俺は知らされた。

 昔、インセットが禁じ手を教えるはずだった子供が見つからず探しまわっていたそうだ。それが最近俺だったとわかったらしい。

 彼らはレイのように魔力の強い子供を制御すべく伝術士の存在があるのだと話す。あまりに強い魔力を持つと暴発し己を失いかねないため難しい禁じ手というのを教え縛りを与えるらしい。

滅多に使えない危険な技があれば自分を抑制できるような精神が育ち魔力も安定するらしい。
それがその子を守る術になるらしく、精神と能力が安定して育つまで彼らが近くで見守り面倒を見ることが多いとか。が、俺は地下に閉じ込められていたから見つけれなかった。

 インセットは見つけられなかった自分を責めていたが俺はそんな必要ないと答えた。早く見つけていたら俺を救う事が出来たかもしれないと泣いていた。

 俺はそれもあったからこそレイとロキに出会え幸せに暮らせている。辛い過去もあるがインセットのせいではないから気にするな。と言ったら笑ってくれた。

 目についても教えてくれた。一種の興奮状態や精神解放が光ると考えられるがそれ事態は現象に過ぎないから問題ないらしい。ただ、俺の中に閉じ込められた魔力の方が問題で一心同体になっている可能性が高く引き出す時は気をつけろと。巨大な魔力は体から無理に引きずり出そうとすると命を落としかねないと言っていた。

 それと勝手に見えるものは周りの環境や精神に影響を受ける可能性があるから心が安定するなら二人といろと言われた。今までは常に無意識に警戒している状態が続いて魔力が解除できていなかったから切り替えが必要かもねと言っていたが何がそうなって見えるかまでは不明らしい。確かにレイとロキといるとあまり気にならないし眼鏡を外せる場が増え楽だ。

「こんなに話していいんですか?」

「いいよ、今回の報酬」

「には見えませんよ。俺、あなたの事嫌いじゃないです」

「好きになってくれた?」

「レイとロキ以上はいませんよ」

「そうだね」

 最後に伝術士にならないかと聞かれたが…答えは決まっていた。

去り際に俺にもご褒美をと言って優しくおでこにキスをされた。

 それからインセットと会うことはなかった。彼らは彼らなりに魔獣や人々を助けようとしている。やり方は違えど国を良くしようとしていた。時折インセットがいるような気配は感じるが姿はない。

 また、いつか会えたらいいな。


「いつもシルバと何話してんの?」

「あ~誕生日なにが欲しいとか、どんな子が好きだとかそんな感じ?」

「へぇ~」

「シルバ君の好きな子どんな子ですかね?」

「それは秘密だな」

「「えー」」


「なぁ、ソード、ロキ」

「ん?」
「なんですか?」

「今度、親父が遊びにこいって」

「わかった」
「いいですよ」

「あと、すまなかったってさ」

「「うん」」

 数日前にレイ宛にルーベンから手紙が届いた。内容はわからないがその手紙が破られる事はなかった。手紙以降、ルーベンと属が来ることは無かったが年に1度クラークス家の皆に会いに行くのが三人の恒例になった。


 領土戦はレグルスにとって失敗に終わった。この事はヒューズの汚点となり口にだすものは誰もいない。レグルスの精神の中でも整理のつかないものとなり彼の人生に大きく不安として残るのだった。

 時は過ぎ、新たな前兆が見え隠れし始めるのは10年が経とうとしていた頃だった。
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