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第三部 最終
12 最終 ①
「よお、ソード元気か?」
「レオ?何だ?」
「何も」
にっと笑うレオは何だか嬉しそうだ。
「何か良いことでもあったか?」
「そうだな」
「シルバは?」
だんだんと違和感を覚える。
何でレオがここに?
待て、お前は今アビサルにいて……
やめろ見たくない
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
ベッドから飛び起き一瞬何が起こったかわからない様子で目の前が現実か探る。辺りは暗く汗が額にたれ袖で拭く。手を見ると暗くぼんやりしていて今は夜中だと気がつく。
ハッと我に返り、服を脱ぎ捨て着替える。シャツに腕を通しボタンを締める。
物音に気がつきレイが目を覚まし動くソードに焦点を合わせた。
「……ソード?」
「……。」
急いで着替えるソードの顔を見てレイが飛び起きる。
あれが見えたんだ。
「すぐ着替える!ロキ、起きろ!」
「悪いが先に行く。アビサルだ、お前らも必ず来い」
「わかった、すぐ追い付く」
ソードはあっという間に完璧に身なりを整え玄関を出ていった。ロキも異変に気がつきすぐに着替え終え二人でソードを追った。
アビサルへ最短で行ったとしても2.3日はかかる。途中宿に泊まりできるだけ早くアビサルに向かった。
油断していた訳ではないがずっと落ち着いていたからもう消えてしまったと思い込んでいた。昔、ベルにも言われていた。ソードの魔力は強いから十分気をつけるようにと。勝手に見えてしまうのはソードと繋がりの強いものには特に発揮されるかもしれない。だからこれからいろんな覚悟が必要になってくると。
また、見えてしまったんだ。
ニケのように……アビサル…
「ロキ、今からなら夜に合流できると思う」
「わかりました」
「ソードは俺達を置いていった訳じゃない」
「はい、わかってます」
「それに必ず来いと言ってた」
「はい、それよりも何を見たか気になります」
「そうだな……アビサルって言ってたからな」
「はい…早く合流したいです」
深夜にアビサルに着くが検問手前の大木の枝に身を潜めるソードを見つけ合流した。近づくと警戒を最大限にしていた。恐らく遠くの検問護衛の会話すらわかるぐらい敏感になっている。
「遅くなった」
「いや、俺も数時間前に来たばかりだ」
「中に入らないの?」
「まだ、入らない。アビサルの周りを見たが何も異変はないが…何かが来る」
「ソード…何をみたの?」
「……。」
答えてくれなかった。
静か過ぎて気持ち悪い。
集中しているソードは辺りを見渡しずっと警戒している。緊張感がひしひしと伝わり二人も息を飲んで辺りを警戒した。ソードが一点を見る。
「来る」
ガラガラ、ガラガラと夜に似つかわしくない音が近づいてくる。2体のカウロが荷物を乗せてアビサルの閉ざされた検問扉に近づく。カウロの荷物には紋章が記されていた。
「あの紋章はヒューズ国の紋章ですね」
「…ヒューズの荷物をアビサルに?」
「なんでしょう?」
暫くすると大きな扉が開き中へ入る。荷を下ろし終えたのか1時間もしないうちに扉がまた開いてカウロはゆっくり来た道を戻った。
「何か運んだようですね」
「レイ、ロキ、検問からは入らない。防壁から入るから見つかるなよ」
「「了解」」
三人は手薄な場所から侵入した。街は静かで依頼所も薄暗くなっていた。護衛達が慌ただしく城の周りに集まり始めている。荷物は城の隣に新しく作った孤児施設のような所に運んだのだとわかった。
そこには何人もの護衛が周りに張り付いていてその多さに違和感があった。それを無言で見ると急にソードは隠れるのを止め堂々と入り口へ近づいていった。その後ろをレイとロキも歩く。
護衛が三人に気がつき剣で入れないよう遮る。
「誰だ。今日はこれより先は人払いされている。一般は立ち入り禁止だ」
と言われたがもう1人が三人に気がつく。
「ソードさん…ですか?」
頷く。
ソードには見に覚えは無かったが護衛は覚えていた。昔、ヒューズ城にいた頃にシルバの部屋に通してくれていた護衛だった。
「中に入れてもらえるか?」
迷ったがレオとシルバと親しいとわかっていたので道を開け渡し、守る扉から離れた。
声が聞こえる。
扉に手を当て入る前にレイを見た。
「レイ……ロキを頼んだ」
「あぁ」
レイはなんとなく返事を返したがソードの顔を見ると穏やかなのに哀しそうなのが印象に残った。
ゆっくりと扉を開けると一番奥の大きな机の上に箱が乗っていた。その箱に光が当たり二人の人物が座りこんでいた。
足を進め近づくと二人が気がつく。
「ソード………」
「ソード様…」
シルバとジープだった。ジープはすぐに下がりソードに場所を明け渡した。箱はかなりの大きさだった。蓋が開けられ何かが見える。ソードは自分が見終わると二人にも見えるように横にずれた。
「ソード…」
ロキが思わず名前を呼ぶ。
恐る恐る黒い箱に近づく。
箱だと信じたかった。
「…嘘だ……嘘だ!!嫌だ、嫌だ!!」
ロキが叫んでソードの腕を掴もうとした。レイが後ろから羽交い締めにし必死に抑える。
「ねぇ!!違うよね!ねぇ!!ソード!」
涙を流しながら大声で叫ぶ。顔を歪めレイも必死に涙を耐える。
黒い棺の中に静かに眠る白い顔はレオだった。
「ねぇ!!ソードは誰が殺ったか知ってるんでしょ!ねぇ!!誰なんだよ!!何でなんだよ!何でレオが死ななきゃいけないんだよ!!」
レイが必死にもがくロキを止めていた。
へたりこんで茫然としているシルバへ近づき膝をついてしゃがんだ。
シルバは手に持っていた黒い紙をスッと差し出した。メッセージカードのような紙にはこう書いてあった。
ヒューズ国への反逆者につき
レオナルド=スミスを処す
たったこれだけの文章。
「ソード、レオがいっちゃった」
「……。」
「俺にさよならもなしだよ」
「……。」
「見てよ、腕も一本無いんだ」
「……。」
目を合わさず淡々とだが少し笑ったような表情でソードに話した。シルバに手を差しのべ無理やりハグをした。堰を切ったように大声で泣き出した。
「レオがぁ……レオがぁ……あぁ…あぁああ!」
周りもすすり泣きが聞こえる。泣き止まないシルバを強く抱きしめ続けた。
少しずつ落ち着くがまたすぐに涙がでる。
「うう……う…ソード…うぅ…」
優しく優しく話しかけた。
「なぁ、シルバ。俺の話を聞けるか?」
「…ぅ、う、…うん…」
「このままレオをこんな所に置いとくのは嫌だとは思わないか?」
「うぁ…ぁ…やだ」
「シルバの部屋まで持っていこう。きっとその方がレオも喜ぶ」
小さく頷く。
「シルバはレオと一番したいことは何だ?」
「うぅ…本当は…俺、成人したら…レオと結婚したくて…うぅ…うぅあぁぁ」
また、泣き出してしまった。
「じゃあ、しよう」
ずっと形ある状態ではいられないし、いずれ火葬か埋葬しなければならない。ならば一番したいことをさせてやりたいと思った。
「ソード様…」
「ジープ、すぐにシルバの部屋にレオを移動させる準備をしろ。急げ」
「シルバ、ロキと一緒に婚儀の準備をしてくれるか?レオの一番の愛弟子のロキなら護衛も間違いない。ロキ頼んだぞ」
「うん」
ロキに支えられシルバは城へ向かった。
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