夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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第三部 最終

14 最終 ③

 
 皆が奇跡と歓喜を味わい喜びを噛み締めた後、部屋はレオとシルバの二人きりだけにして全員出ていった。

「ソード様、部屋をご用意しています。本当は式の為に招待状を送る予定でしたが是非今日からお泊まりください。いえ、泊まって欲しいです」

「ふふ、わかったよ。何かあったらすぐ呼んでくれ」

「はい、ありがとうございます。ではゆっくりとおやすみ下さい」

「「「おやすみ~」」」

部屋に着くと三人は今日の奇跡を実感した。
ロキはまだ不思議でしかたなかった。

「ソード、何でレオさんは生き返ったの?」

「俺にもわからないが手遅れだと思ってた。だがやけに体が冷たかったから恐らくレオは仮死状態だったと思う。それをレイの魔術で生き返らせた感じか?」

「あと、ソードの魔力な。抜き取ってレオに入れてみた」

「そんな事できるんですか!?」

「あぁ、禁じ手を使った。たまたま上手くいったんだと思う。ただ、危険なのは間違いなかった」

「そっか…ソード目は?」

「見えないが明日になれば戻るかもな。片眼だけだし問題ない」

「「……。」」

「気にするな。はぁ~疲れた。先にシャワー浴びていい?」

「いいぞ、ジープが服用意してくれてた」

「了解、そういえば何も持ってこなかったな。何とかなるか。じゃ、お先」

「「いってらっしゃい」」

「「……。」」

 命に関わる禁じ手を使い、ソードが生きている事の方が奇跡だとレイ思っていた。人の命と引き換えに他人を蘇させる魔術だとベルから聞かされていたからだ。今でも信じられない思いだった。

 ロキもレイが言わなくともその魔術が想像もつかないぐらい強いものだと気がついていた。人を蘇らせるなど、人知を越えるような魔術が何の影響もなくできるはずがないと思っていた。そして今もずっと怖い感覚のままだった。

「レイさん…」

「正直危なかったどころじゃない。あの禁じ手は等価交換だ。命と命の。今でも信じられない。今後も…どうなるかわからない」

「ですよね…」

「ロキ、悪かった…」

「いえ、決めたのはソードです。俺もレイさんと同じ事立場だったらそうしていたかもしれないです」

「途中で耐えきれなくて…俺がやめたんだ」

「そう…だったんですか」

お互い目で訴えそれをぐっとこらえるように下を向いた。

「ソードが出てくる」

「はい」

「俺達は受け入れるだけだ」

「はい、わかっています」
 
シャワーを浴び用意された服を着て出てきたソードは「疲れた」と言いすぐに眠りについた。


 珍しく朝からパチリと目が覚める。

 目を開けるが半分が全く見えない。

 わかってはいた。目が焼けるように燃え、それが燃え尽きる感覚があった。昨日から二人に何と言おうかずっと迷っていた。

顔を洗い鏡を見るとハッキリとわかる。黒目の部分が真っ黒になり目の光を写していない事に。
眼鏡をかけ二人の元に行くと二人も起きていた。

「おはよ」

「「おはよ~」」

「買い物しに街に行こう。服ないしお菓子見たい」

「「いいよ~」」

いつもと変わらない。


そう思っていたが実際は物の位置が把握できず店を見逃したり柱にぶつかったりしていた。二人は特にその事については触れなかった。

部屋に帰り一段落つく。

自分でも今日の事は良くわかっていた。だがなかなか言い出せなかった。ふと、レオの話題になる。

「レオ、体調大丈夫みたいだな」

「そうみたいですね、問題なく動けるみたいですが明日か明後日ぐらいまではゆっくりするらしいです」

「あいつは、頑丈過ぎだ」

「はい、レオさんが生きてて良かったです」

「そうだな。ソードも」

思わずその言葉にうつ向いてしまった。二人は自分の判断を責める事なく受け入れてくれた。本当は凄く二人を傷つけているのはわかっていた。ぐっと拳を握りしめる。

言葉が出てこないが何とか名前を呼んだ。

「レイ…ロキ…」

「「ん?」」

顔を上げて二人を見た。

そんな二人はいつもと変わらず優しい顔をしてソードを見つめた。痛いほど心が一気に締め付けられ喉がしまる。


「ごめん…ごめんな。レイにこんな酷い決断をさせてロキには死ぬほど心配をかけてる…うっ」

「「ソード…」」

「勝手にこんな事してごめん。そんな俺を受け入れてくれて…うっ…ありがとう…俺、片目が一生見えない。あのまま死んでいたかもしれない。ごめん…ごめん…うっうあああぁぁん」

ソードは二人の前で初めて大泣きをした。わんわんと泣くソードを二人は優しく手を差しのべた。

「ソード、そんなに泣かないで」

「俺達はそれでもいいんだよ」

「両目でお前らをもう見てやれない。片目も眼鏡がないとぼやけてしかお前ら見えない…この先だって…ううっ…うっあぁぁ」

「ソード大丈夫だから」

「泣くなよ」

「俺もレイさんもソードが好きだから、一生好きでいられる自信あるっていったじゃん」

「そうだぞ、一緒に生きてくぞこれからも」

「レイ…ロキ…」

二人の愛に燃えるように心が熱くなり震える。

「愛してる。ずっとずっとレイとロキをこの先も永遠に」

「俺も、愛してる」
「ソード、愛してる」

心配や不安、二人への懺悔も含め全て吐き出した。今までの人生で一番泣いた夜で一番心が満たされた夜。心も体も溶けるように落ちていき気が付けば寝ていた。

明け方、目が覚めベッドの二人を置いてベランダへ出た。肌寒さはあるがベランダから見える魔の森を眺めていた。

レオの事を考えていた。

もし、レグルスが本気で殺すならわざわざ腕など斬らない。心臓を一刺しで十分足りる。
なのに、腕を斬って仮死状態にしてあるように見えた。俺達や禁じ手を知っていて助けられるとわかっていたのか?いや、レイもできるか五分五分だったはず。そこまで考えていただろうか……だとしたら奇跡を信じすぎだが…わからない…


ふっと懐かしい匂いがした。


「お久しぶりです」

「やあ、久しぶり~そんな格好してるとそそられちゃうね」

下着姿でベランダに出てきたソードの肩にマントを被せ一緒に魔の森を眺める。

「随分無茶をしたね」

「…はい」

「レイは罰せられますか?」

「まさか、禁じ手を使う=罰ではないよ。寧ろ人を救ったんだ。喝采だろ」

「はい」

「レイ君は流石だね、彼じゃなきゃ君は死んでいたよ。右目と手だけで良かったね、今のところ」

「これは進行しますか?」

「わからないが魔力が変動したからね。少しずつ何か影響が出るかもしれない」

「そうですか、俺を心配して?」

「いつからそんな自意識過剰に?ふふふ。禁じ手は使えばわかるからね」

そんなことを話す横顔を見つめた。
綺麗な白銀の髪でイエローグリーンの目をした彼の不思議な雰囲気はかわらない。

「俺は…貴方に…ブレイクに会いたかった」

「ふふふ、インセットでいいよ。馴れてる」

「まだ、ちゃんとお礼を言えてない。俺を魔の森から救って命を助けて下さりありがとうございました」

 数十年前、魔の森でインセットに拾われ助けてもらった。どんな形であれ助けてもらわなければ確実に死んでいた。彼がいなければ今ここに自分が存在することは無い。

そんな彼が一度だけ自分の本名を耳打ちした。何故そんな事をと思ったがインセットではなくブレイクとして接したかったんだと思った。だから、今も会いに来てくれたとのだと感じた。

「ソード、俺はそんな柄じゃないよ」

「いえ…ブレイクは命の恩人です。ちゃんと言いたかった。今ある幸せはあなたにあの時生かされたからあります」

「ふふふ、どういたしまして。君は全部縛りも外したんだね。気分はどう?」

「ふわふわしてます」

「10年前、君との約束。執行してきた」

「そうですか」

「聞く?」

ソードは首をふった。

「そう。今日は一段と優しい顔だね」

にこりと笑うと、いきなりインセットがソードを抱きしめた。

「インセット!?」

あわてて、顔を見るが目線はソードではなくその先を見ていた。

「レイ!!ロキ!!起きろ!!」

いきなり聞き慣れない声に名前を呼ばれ二人は飛び起きた。
ベランダには下着のソード。見せつけるように下着に手を入れ太ももを触りもう片方は腰に手を這わせる人物がいた。

「「インセット!!」」

「久しぶり~!なぁ、ソードこんなにしてどうするつもりだ?」

「お前に関係無いだろ!」
「ソードを離せ!」

「ほら見ろ、お前らが開発しまくったせいでソードはこんなにもいやらしい体になった」

インセットが乳首や太ももを触り耳をペロリとなめる。ソードの股を膝で割ってぐぐっと押すとソードが甘い声をだす。

「あぁっ…ん…」

「可愛い声」

レイが氷魔術を出してロキが駆け寄る。インセットは後ろに下がった。ソードが振り向いて声をかける。

「ブレイク!また会える?」

「いつでも~次はマント返してね☆」

インセットは魔の森の方へ消えていった。

「久しぶりに見たが相変わらず油断も隙もねぇなあいつは。何しにきたんだ」

「ソードまた会えるって何!まさか、会おうとしてないよね!」

「大丈夫。そーいうのじゃないから」

「駄目だロキ、インセットに触られて感じてた。抱き直すぞ」

「はい、勿論です。下着で外でるとかあり得ないです」

「っ…待って、あっ」

「「待たない!!」」

二人にまたしても一日中抱かれるソードだが久しぶりに会えたブレイクは元気そうで嬉しく思った。
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