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しおりを挟む「レオ様、私の言う事をよく聞いて下さい。この国は無くなります。敵に奪われるんです。今から私と一緒に逃げます」
慌てながらも要点だけを簡素に伝えたこの男は護衛のカシム=ジルカンド。
「いいですか、私が良いと言うまで絶対に誰とも口を聞いてはいけません。今から歩いて国境へ向かいます。そこまで裸足て走っていただきます、できますか?」
うんと頷く小さな子供はレオナルド。確認したカシムは手を強く握りあちらこちらから聞こえる声に見向きもせず小さな小屋の前で立ち止まった。中に入ると服を脱がされみすぼらしい毛布を被せ裸足にさせられた。レオに土をかけ泥まみれにし小屋を出て火を付けた。
明々と燃える小屋を背に林を歩く。だんだんとあたり一体がむせかえる程の煙りに覆われる。急いでその場から立ち去る。
所々、叫び声や火の手が上がり風と混ざったその音は国の崩れる音だった。
どれぐらい歩いただろうか、カウロ乗り場へ行くと行列ができていた。待っていては日がくれてしまう。仕方なくカシムはレオを連れて道を変えて進んだ。
ようやく見えてきた大きな門には人だかりができていた。
我先にと出ようとす者、諦めて座りこむ者、強行突破しようとする者で皆が苛立ちパニック状態だった。
「この検問ではだめです。ウェザーの北側の奥へと行きましょう。何があっても私に付いてきてください。何があってもです」
しばらく歩くと幸運な事に相乗りのクロウに乗せてもらえた。しかし、不安は募るばかりだった。先ほどよりは小さな門で人も少なくこれなら数時間待てば順番が来そうだった。ただ、がらの悪い兵士達が目についた。
すぐにカシムは手を離し早歩きをして列に並ぶ。徐々に近づく検問に緊張する。
「次!」
「カシム=ジルカンド 冒険者だ」
あからさまに横柄な態度だが切り抜けるにはここを通るしかない。
「悪いが冒険者だろうと、厳しく調べろと言われている。そいつは?」
「構わない。逃げ出した使用人孤児だ。依頼者から頼まれた」
「こんな所でか?」
「ヒューズの南から逃げ出し売られ続けてここまで来た」
「ふーん。遠回りのウェザー経由で戻りか」
「どこも検問が混んでいた。遠回りの方が近道ってこともある」
「確かに」
検問には兵士が三人いた。剣術士が来ていないことから手薄だとわかるが、その分やりたい放題だった。三人の中の一人が尋問係りで別の兵士が手を体に這わせ危険な物は無いか身体検査をした。プレートを見せ依頼書の紙と特別契約の紙を手渡す。
「おい!名前言え!」
「こいつは喋れない」
といったその時大きな音と共にレオの顔に男の拳が勢い良く当たる。あまりの強さに体がふっ飛び壁にぶつかると横に倒れた。
泣き声一つでも出せば余計な質問をされバレてしまうと思ったがレオは声を出さなかった。ヨタヨタと立ち上がる。
「本当のようだな。依頼者は?」
「そこにあるとおり、依頼主はラグマ伝いで大元はわからない。こいつの名前は確かレオだ。確認したければしろ。但しお前らが殴ったガキの怪我の説明は飼い主様に直々にしてもらう。一応商品で、できるだけ使えるように捕らえろと言われている。わざわざこんな戦地でやっと見つけたんだ。もし依頼が不成立の場合はお前らに会いに行く」
「チッ、早くいけ!運がよかったな、直にここも閉まるぞ」
そう言うとカシムは男の袖に金目の物を握らせた。後腐れなくするには金目の物以外ない。孤児の名前などいちいち調べず気にとめることない兵士は救いだった。レオは起き上がり早歩きで先に行くカシムに遅れまいとついていった。
夜になってもひたすら歩き続けた。
歩いても歩いても道は続く。
レオは前触れもなく道端で意識を失った。
「レオ……さ」
思わず声がでかかるも途中で気がつき、辺りを見渡し誰もいないのを確認してから早歩きで駆け寄った。カシムは優しく抱き上げ心の中で「申し訳ございません」と何度も何度も謝りながら歩いた。
それから何日も歩き、やっと小さな街に着いた。カウロ乗り場に着くと二人は無言で乗りこむ。自分たち以外にも乗りこんだ人達がいるが二人に気にする人はおらずそれぞれが話をしていたが内容はどれも同じだった。
「なぁ、知ってるか?ハースが遂に落ちたらしいな」
「あぁ、みたいだな。噂によると城もろとも壊されたそうだ」
「相変わらず、ヒューズは容赦ねぇな」
「ウェザーでも変わらんだろうに」
「ちげぇねぇ、住んでる奴らはヒューズに入るのか?」
「だろうよ、ウェザーとの国境に近いし兵士としてかり出されるか逆らえば牢屋行きか」
「王族も皆殺しみたいだしな…おっかねぇな」
そんな会話を耳にしながらカシム達はウェザーから大回りをしてヒューズに入った。入国は意外にもすんなり入れた。
カシムはカウロックとの国境に付近にある小さな街に深夜に到着した。
この街にしては大きな家。回りにはその家の納屋や小屋が数戸建っていた。中でも小さな小屋のドアの前に行き手首に布を巻いて音を響かせないよう戸を叩いた。
トントン トン
トン トントン
中から返事のような暗号のノック音が返ってきた。
暗い小屋がゆっくりと音を気にするように少しだけ開く。フードを被った人が二人を見るとドアを開けすぐに中に入れた。誰も言葉を発することなく小屋の隅の床の石を持ち上げる。人一人が入れるような暗い穴。カシムが先に入りレオはその後に続いた。
中は細い通路になっており明かりはない。行き止まるとカシムが上の天井をコンコンと叩いた。すると上から石の天井が持ち上がる。少しだけ眩しかったが開いた中も暗かったため目がなれるのは早かった。
カシムに手を掴まれ上に引っ張りあげられた。石壁でできた通路を歩く。カシムの前にはフードを被った男。そこから鉄格子の扉があり鍵を開ける。開けた先は尋問室、中には年配の人が椅子に座っていた。
「こちらへ」
その男はレオにも椅子に座るように促した。促されるもレオは座る様子もなくただただ立っていた。カシムが肩に手を添え椅子の前に連れていく。
「レオ様、大丈夫です。お座り下さい」
そう言われカシムの顔を見てから座る。やっと座るレオに胸を撫で下ろすも、ここ迄の道のりと扱いを考えれば当たり前だった。
「長く長く辛い渡り……ご足労でございました。ここを憂いがない場所としてお使い下さい」
「……。」
「レオ様、この方はここの家主でバレットと言います」
「……。」
「カシムさん、今はそれ以上必要ないです。それよりもすぐに休ませてあげてください」
「そうですね。レオ様、安心してください」
「……。」
レオは返事をしない。カシムは不思議に思ったがここに来るまで声を聞いてないのを思い出した。自分が話すなと言ったが返事すらしないレオに気がつかないほど気をはっていていたのかと今気がついた。
「レオ様、話して結構です。申し訳ございませんでした。お返事をしてくれますか?」
うん、と頷きかすれた声をだした。
「城に帰りたい」
カシムはその場でレオを抱きしめ涙を流しながら謝った。それを見たレオは今は家に帰れないとわかってそれ以上言うのをやめた。
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