夜の目も寝ず見える景色は

かぷか

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 ドアを開けて貰えるまで何度もノックし続けた。ついに諦めたのかドアの鍵がカチャっと開いた。

 部屋は手当たり次第物が落ちていた。当たりどころの無い怒りや悲しみを物にぶつけたんだろう。レオ様は小さく膝を抱えて壁に向かって座っていた。そんなレオ様に近づくと小さな声で話しかけてきた。

「カシムは何で俺だけ助けたの?父様もお母様も姉様も助けてくれれば良かったのに」

 説明ができなかった。
 
 本当は俺も全員助けたかった…レオ様を助けれたことだけでも奇跡だったんだ。だが、そんな話をした所で理解できるわけがない。しかも、それをレオ様が望んでいたわけでもなく私が勝手に連れてきてしまった。

「すみません、私の力不足です」 

「本当に本当に皆死んだの?」

「はい」

 次の日もまた次の日もレオは何度も同じことを聞く。これでは前に進めるどころかいつ迄たっても現実逃避をしてしまう。
 私は拳を握りしめ意を決死て部屋に入りレオ様の目を見て向き合った。

「お前の父様も母様も姉様ももうどこにもいない。俺が信じられないなら自分の力で探すんだ」

「……まだいるかもしれない」

「なら、探せ。俺は止めない。外は兵士や悪い奴がうじゃうじゃいる。探すなら一人で探すんだな。俺は元々ただの雇われ護衛だ、お金が貰えない以上面倒を見る必要はない」

「そんな…無理だ……カシムがいないと…」

「なら、今日からお前をレオと呼ぶ。様はつけない。ここにはお手伝いや守ってくれる側近はもういない。だからできるだけ自分でやるんだ。他の子はもうできている。お前はその遅れを取り戻すための努力をするんだ」

「……。」

レオ様は不服そうだった。
当たり前だが甘えた事はしてやれない。
……いつ殺されてしまうかわからないのだから。

そうだ……俺はアーサー王に頼まれたんだ。
レオ様を守れと。生き抜く術を教えてやらねば。

 次の日から俺は行動を起こした。

「レオ、先ずは髪を赤に染める」

「嫌だよ」

「似合うから大丈夫だ。それにその髪は北土独特だ。黒やそれに近い色はすぐ出身がばれてしまう」

「……わかった」

 綺麗な深い青色だか生き抜くためだ。俺は髪を赤に染め南寄りの色にした。これなら目立たないし色が抜けても赤が残り元の色はわからない。年に数回だけ染めれば気がつかれる事もないだろう。

「痛い、しみる」

「我慢だ」

「レオ、お前の家名だがスミスに変わった。レオナルド=スミスだ。前の名前は使わないから口には絶対だすな」

「……わかった」

「年もごまかせ、わからないといえばいいから」

「わかった」

我慢をさせることが多くなる。
だが、やらねば。

明日からはもっと過酷になる……


「カシム様!そんな!!貴方が最善の配慮とおっしゃったんですよ!」

「わかっている!!だが、これは決めた事だ。より安全になる事が重要だ」

「そんな……」

 こんな風に昨日バレットに声をあらげさせた。無理もない、俺も自分で何をしてるのか疑いたくなる。だが、しなければならない。

「カシム、どこいくの?」

「レオ、お前は孤児施設に入るんだ」

「何で?」

「本来ならすぐに入れるはずだったが怪我が酷く延びただけだ。みなしごは皆、孤児施設に入る。俺は元々冒険者で雇われで護衛として面倒を見ていただけだ。王が死んで仕事がなくなったから働かなければ食っていけない。仕事をすればお前の面倒が見れない。わかるな?」

「……。」

「すまないが、孤児で生活してくれ。時が立てば必ず迎えに行く」

「……。」

 施設に着くとレオは俺の裾を掴んで離さなかった。心苦しくてたまらなかったが、ここで折れるわけにはいかない。

「…さぁ、行くんだ。レオ」

「嫌だよ」

「レオ…俺はすることがある。必ず迎えに来るから」

見かねた年上の孤児がレオを迎えにきた。

「皆、初めはそうだから。知り合いが居るだけ君は良いよね」

にこりと笑った。

レオは下を向き涙を我慢しているようだった。

「すまないが、頼む」

 俺はレオを置いてその場を立ち去った。レオの視線を感じながら施設が見えなくなる場所までゆっくり歩いた。

 視界から外れると見殺しにしたような感覚に陥り振り切るように走ってバレッドの家に戻った。

「酷い顔です…」

「はい……」

 バレッドはお茶を用意しようとしたが自分の荷物の準備をしてすぐに家を出ることにした。

「どれぐらいで戻られますか?」

「わかりませんが1年は戻れないです」

「そんなに……」

「国の情報を集めつつレオ様の遺体が無いままどうなったか調べます」

「できるだけ早く……いえ、レオ様の為にも生きてここに戻ってきてください。くれぐれもヒューズの兵士に見つからないよう気を付けて下さい」

「わかりました。時々、レオを見に行って下さい」

 俺は旅立った。

 なんとしてもレオ様を守らなければ。
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