夜の目も寝ず見える景色は

かぷか

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インセット編 

8 治療中 ①

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何度目かの朝を迎えたある日

「ブレイク…」

「うん?」

「家に帰る。ブレイクにみてもらいたいのあるから持ってくる」

「うん」

 頭を撫でるとインセットは服に着替え仕度をした。すぐに準備を整えソードを待つが余りにもすんなりで拍子抜けしたのか変な顔をしていた。

「今から行くでしょ」

「うん」

「なら、すぐ送る。帰りたい時に帰らせると約束したから」

「うん」

「行って欲しくないって言って欲しかった?」

「え!」

「冗談だよ」

 インセットは靴を履きソードを抱えると三人の家まで送ってくれた。庭に下ろされるとソードは自分でもわからないぐらいインセットを名残惜しんだ。裾を掴みながら話す。

「いつ会える?」

「いつでも」

「どうやって……」

「知らせがきたら迎えに行く…といっても不安か。あの二人なら1ヶ月後ぐらいかな」

「わかった」

「必ず迎えに行く」

「うん!」

 そう言うとインセットは森へ消えていった。それを見届けると窓を小さくコンコンとならす。

 久しぶりのソードの姿が目に入ると二人が飛んできた。

「「ソード!!」」

二人は代わるがわるハグをした。

「ただ…いま……ごめん」

「話せるようになったのか?お前は謝るな、何も悪くない」
「俺達こそごめん」

ハグを返すと二人は喜んだ。何も話せなかったソードと比べればいくぶんましにはなっていた。

本当は何をしているか聞きたかったがソードが治るまで聞かないことにした。そして、いつも通り三人でベッドに入れる事を二人は喜んだ。


だがソードはというとベッドに入るとインセットの顔が浮かぶ。

 今日は一人で寝るのかな…

そんな事が頭によぎり急にインセットが恋しくなってしまった。二人がソードを抱きしめながら寝るがいてもたってもいられず腕をはずしベッドからそーっと出て外の屋根によじ登った。どうしようかと星を見ていたら好きな匂いがした。

「駄目じゃないか…」

「ブレイク!!なんで!?帰ったんじゃないの!?」

嬉しそうに言うソードを見て一瞬嬉しくなるがインセットは少し怒った顔をした。

「二人が心配する」

「でも、ブレイクが」

「ソード、俺は大丈夫だから。いつでも近くにいる」

「うん」

「明日からは二人と一緒に楽しく過ごせ」

「うん、ハグしてくれる?」

「いいよ」

 ハグをして頭にキスをした。ソードが部屋に入るのを見届けるとインセットは帰っていった。

 二人はというとソードが抜け出した事に気がつかないわけなかったが戻ってくるまでそっとした。

 屋根に登ったのは初めの1日だけで次の日からは言われた通り二人の元で寝た。


 帰ってきた日常はというと黙々とお菓子を食べてやはり何処かを見ている事が多かった。二人は帰って来たソードから紙を渡されていた。

『治療中 何もするな』

と書かれていた。

 治った訳ではないという注意だった。それを見た二人は出来るだけソードを構うのを辞めた。

何日か朝を迎えたある日、呼び鈴がなりレイが出るとそこにはレオがいた。

「よう!中も立派だな!」

「レオさん!」
「レオ」

 レオはシルバからソードの様子がおかしいと聞き様子を見に来たのだった。

ソファーに案内されレイがお茶を出す。レオが来てもソードは見向きもせずお菓子を食べる。

「よう、ソード」

「……。」

「見た目は元気そうだな。調子悪いってシルバから聞いてよ。最近顔を見ないし何してんだと思って来てみた」

「……。」

 チラリとレオを見て興味なさそうにまた何処かをみる。見かねたロキが怪我ではないと話した。

「じゃあ、なんだよ。討伐は?」

「行ってないです」

「魔の森は?」

「行ってないです」

「じゃあ、菓子ぐらいは買いに行くだろ」

「それもないです」

 あれだけ忙しくしていたソードが何もしていない事に驚いた。思わずレイとロキを交互に見たが二人は事実だと首を振った。

「なぁ、ソード今から手合わせしねぇ?」

「しない」

「なぁ、ちょっとだけだ。いいだろ?」

「しない」

「いいから来いよ」

 レオはソードの手を引っ張り庭に出た。半信半疑なレオはその辺の木の棒を握らせ手合わせを無理やり始めた。棒は握るが振りかかるレオの剣を避けもせず見ていた。ヒュンっとソードの耳元で風を切る音がした。

「ソード…お前」

何もやり返さないソードはその場で棒を落として部屋に戻った。いつもと違うソードにレオはショックを受けた。部屋に戻ると二人の複雑な顔から深刻だとわかった。

「おい…いつからだよ」

「気がついたのは数ヶ月前。何人かシルバに紹介してもらった医者にも見せたが、医者は治るのに時間がかかると言うだけで何もできなかった」

「マジかよ…何が一体どーなってんだ?」

「わかりません、徐々になっているのはわかったんですが治療が見つからないまま気がついたらここまでなってました。レオさんには治ってから報告する予定でしたが長引いてるのを心配してシルバ君が話したんだと思います」

「ただ、今は治療の一環で人に預けてる。ちょっと前に帰って来たが多分またそこへ行かせる。そのお陰で進歩はあった。これでも良くなった方なんだ」

「はい、その人に見せる前は言葉が話せなくなってましたから。それに比べたら良くなりました」

「治るのか?」

「そう信じたいです」

「俺らじゃ無理なんだとさ。結婚相手は師範にはなれないって」

「なんだそりゃ」

二人の深刻な顔にレオが話をする。

「なぁ、俺はいろんな奴を見てきたがソード以上に剣術に長けた奴は未だにいない。ただいつも思ってた。こいつの未来が想像できないって。いつか突然消えていなくなるんじゃないかって。だが、お前らと会ってはっきりわかった。ソードはお前らがいないと何もできねぇ。こいつの幸せはお前らがいるからなんだ。だから、そんな顔すんなよ」

「レオさん」
「レオ」

「おい、ソード」

レオは立ち上がりソードの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「子供扱いすんなよ」

「あはは、その元気があればいいな」

一瞬だけ前のソードに戻った気がした。
レオは「また来る」と言って城に帰っていった。

ドアが閉まると二人は少し気が楽になった。そして、顔を見合せ笑うとソードに近づきキスをした。

「なんだよ」

「いいんだよ!」
「したいからする!」

その日からちょっとだけ元気が戻った二人だった。
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