夜の目も寝ず見える景色は

かぷか

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ソード オブ ソード

13 世界のお菓子

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 小さい頃、俺の中にある魔力を無くさせようとした両親。一向に無くならない事に躾として親父に殴られていた時期があった。地下の牢屋に入れられそこがいつのまにか俺の部屋になってた。

 俺の母親はお菓子を作るのが好きで親父の指導が終わると魔力に効くかもしれないとたまに作っては持ってきてくた。中身は何が入ってるかはわかんなかったが食えた。

 既にいろんな事が麻痺していたこの家は俺が殴られているなど母親は疑いもしていなかった。

「ソード、厳しいけどがんばるのよ。お父様が必ず助けて下さるから。だから、諦めないでね」

 何度も助けて欲しいと涙を流したが親父を信頼しきっている母親にはこの姿は厳しい躾や訓練で受けたと信じて疑わなかった。

「ソウルに……ソウル兄さんに会いたいよ…うっ…ぅ」

「ソード、ソウルは剣術学校で今は寮にいるから会えないわ。ソウルもがんばってるから、ね?」

「うっ…うっ…会いたいよ…」

「困ったわ~魔力が無くなればいいんだけど。寂しいわよね」

「もう……嫌だ……」

「そんな事言わないで。お父様の言うこと聞けば大丈夫だから。そうだ、ソードに本を持ってきてあげる」

 それから母親が本を何冊か持ってきた。牢屋に何冊か本が置いてあったが全部剣術の本だった。それでも無いよりはましで牢屋で読んでいた。親父が来ると窓無しの牢屋で指導が始まる。時間や日にちはわからない。長い時もあれば短い時もあった。そんな後の暇潰しや息抜きにしていた。

 数冊の中に見慣れない分厚さの本を開けるとお菓子の描いてある本だった。間違えて入れたのかと思ったが母親は親父には分からないよう剣術のカバーを被せてくれていた。剣術ではない唯一の本だった。

 何であの本をと母親に聞いたら剣術だけだとつまらないでしょっと言った。あの本はソウルの部屋にあった本だったらしくそれを母親が捨てるぐらいならと俺に持ってきたらしい。お菓子作りの好きな母親らしい選択だった。だが、これが俺の最高の出会いとなった。

 何度も何度も読んでは知らない場所へ行きたいと思った。俺の想像は膨らみ食べたいから行ってみたいになり制覇したいとなった。

 あとがきに著者について描かれていた。この著者がお菓子屋ではなく職業が冒険者でだった事に感動した。好きなお菓子を探しながらする冒険者は最高に楽しい。辛くてもお菓子があればまたがんばれると書いてあった。この人は独り身の冒険者だったが一人でも多く冒険者がいかに楽しいか伝えたくて描いたと記されていた。

 やりたいことが決まった俺にはここから出るには何もかも足りなかった。だから剣術を強くなって魔力を出さない事が最低限の条件。

 その条件を満たすには何年もかかったけど家から出ることができた。

「ソウル兄さんは?」

「この間剣術士になったのよ~皆でお祝いしたのよ。ソードもお祝いに間に合えば良かったわね」

「お前も国を守る剣術士か兵士になれ」

「………そうだね」

「ソード、貴方も立派になれるわ。貴方、やっぱりソードを指導した甲斐がありましたね」

「当たり前だ。先祖代々だからな。学校は決めてある」

「兄さんには会えないの?」

「今は忙しいから無理だわ」

「お前がソウルの邪魔になるような事はするな」

 俺はソウルに会えないまま学校へ入った。どこに住んでるかさえ教えてくれなかった。手紙の一つ位当時は書きたかったから知りたかった。それから何年か経ってやっと会えたのは冒険者になってからだった。国の行事があった時にチラッと見たぐらいだった。しかも、何となく似てる気がするぐらいでハッキリわからなかった。俺はそれ以上近寄らなかった。

なんでわかったかというと家に飾ってある三人の写真を見て随分時間がたったんだと思って覚えていたからだ。実家に帰ることもあったがソウルの事は全て事後報告だった。結婚もしたぐらいしか知らない。だから、もしかしたら両親は俺が存在してる事をソウルには話してないかもしれない。

 だって一度も俺に会いたいと言っていたという話しは聞かなかったから。

もしソウルが会いたいと言ってたとしても今さら会って、家でこんなことがありましたなんて写真に写るソウルの笑顔を壊すみたいでできなかった。

それにもう会って話すことがないよ……


 ソウル兄さんへ

 久しぶり!
 元気だった?今、幸せ?

 剣士になったんだ!凄いな!おめでとう!
 俺、あの本を見て冒険者になりたいって決めたよ!一番好きな本だよ!

 いつか会えたらいいな


 出せなかった手紙はもう捨ててしまったな
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