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一部
十二夜
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自宅へと帰宅した斎藤。
「凄い雨…」
「起きてたんか」
「はい…」
電気もつけていない薄暗い部屋の窓際、雨で霞む夜景の光の中に美日下は立って外を見ていた。上着を脱ぎハンガーにかけると美日下の隣に立った。
「ホンマやな」
「外から帰って来たんじゃないんですか?」
「そうやけど、全然気づかんへんかったわ」
「こんなに凄いのに?」
「車ばっかり乗ってたから…かな」
「そうですか…」
二人はただただ流れる雨を見ていた。
ここは斎藤の住むマンションの部屋で誰も知らないプライベートな場所だった。二日前和田に襲われた美日下は薬を飲まされ仕込みをされた。幸いにも斎藤が途中で駆けつけたため未遂で済んだ。薬を飲まされた美日下は気がついたら斎藤のベッドで寝ていたのだった。気持ち悪さと気だるさ、頭痛もあったが徐々に回復をした。今は仕事でいなかった斎藤の帰りを待っていたのだった。
「しばらく雨でええわ…」
「何でですか?」
「周りがうるさいから、雨の音でかき消される」
「…俺もしばらく雨でいいです」
斎藤は美日下の横顔を見て軽く頬を触った。
「まだ少し顔腫れてるな」
「もう、大丈夫です」
「……そうか」
「斎藤さん、お願いがあるんですけど」
「なんや」
「俺を…抱いて貰えませんか?」
「……ええよ」
・
・
・
・
美日下は遅かれ早かれ自分が売りに出されなければならないなら加成でもなく和田でもなく斎藤にされた方がいいと思った。本当ならそんな選択すら与えられない自分だが選べるなら最後のわがままで斎藤がいいと思った。
この件で自分の借金が原因で斎藤に迷惑をかけていることを知った。何だかんだずっと売りに出されないことが気になっていたが斎藤がなにかしら手を回していてくれていたのだとなんとなくわかった。
出会いこそ最悪ではあったが自分が巻き込まれた世界で右も左もわからなかった美日下に手を差しのべてくれたのが斎藤だった気がする。いかに斎藤が他の人から自分を守ってくれていたんだとやっと気がついた。
シオンの「斎藤さんに生かされている」とはそういうことだったんだなと。借金はいくらになっていてどうなるか不安で仕方なかったがこれ以上自分は庇われてはいけない…甘えてはいけないそう思って美日下は決意をした。
ベッドで裸になる美日下は緊張と不安それと恥ずかしそうに見えた。斎藤は目の前に座り美日下の顔を見た。
「美日下、キスできるか?」
「キスですか…」
こういうこともしなければならないとわかっているがいざ言われて自らするのは初めてで恥ずかしかった。それでもやらなければと恥ずかしいのを我慢して斎藤の顔を見ると目をつむりチュッと唇をつけた。自分ではこれが精一杯だった。
「……ッ!!なんやそのキスは」
「すみません、したことないので…」
とっさに顔を横に向け表情を隠した斎藤は数秒待ってから自分を取り戻した。
「いや、可愛ええな思ただけや。俺もしてええか?」
「はい…」
目を閉じる美日下に斎藤はゆっくり唇をつけると口を半開きにさせ舌を入れた。美日下はそれを受け入れた。
抱く前に斎藤が好きにすると言ったのでそれを受け入れたが予想外だった。もっと義務的に淡々と説明するのかと思っていたが静かに抱いていた。会話が殆ど無い中、時折斎藤はキスの合間にこう言っていた。
「美日下…好き…」
「…っ…ぁ」
こういう客がいるということなのかと美日下は受け流すべきか答えるべきなのか悩んだ。疑似恋愛をして演技をした方がいいのか。何を学んでどうすればいいもわからないまま進んでいく。
さっきから優しい愛撫や自分への好きと言う言葉。部屋貸しでは客が何度も売りの子に言っているのを聞いたが性にまみれたあの好きとは違う気がした。考えているうちにそんな事もだんだんと考えられなくなっていく。
自分の腰に斎藤の手が被されキスを繰り返し気づいたら押し倒されていた。耳に斎藤の熱い息づかいを感じた。
首筋、鎖骨に乳首を愛撫され腰骨辺りをキスされるとびくびくと体が勝手になった。自分の陰部には触らず太ももを開かれ内側を愛撫してきた。
「ぅ…あぅ」
声がうわずってしまう。斎藤の鼻で笑う声にも反応してしまうぐらいだった。
動きが止まると斎藤が指を舐めた。指が一本、二本と入り込んできた。和田の舎弟が自分にしてきたのと全く違う動きだった。あの時はひたすら広げる作業をされていた。思い出したくもなかったがこれからそんな人を沢山相手にしなければいけないと思うと怖くなってしまった。
「大丈夫か?」
「大丈夫です…」
自分の体が強ばってしまったのを気づかれてしまった。こんなことでどうするんだとすぐ返事を返したが斎藤の顔は心配に近いような気がした。
前のように凄くキツイ場所を触られるのかと思ったが軽く撫でる程度に終わった。
「美日下…ええか?」
「はい…」
そう優しく声をかけられるとついに斎藤が自分に侵入してきた。ゆっくりとゆっくりと入るのがわかった。あれだけ嫌だった事なのに今は自らがお願いをして入れてもらっている。斎藤の眉間が少し寄りキツイのを我慢していた。自分も何とか受け入れようと顔を背け全て入るのを待った。斎藤の腕が自分の視線に入る。刺青の入った腕に力が入っていたのが妙に艶っぽさを感じた。自分の中に熱い芯があるのがわかる。
「ぁっ…ぅ」
「苦しいか?」
「だい…じょうぶ…です」
「もう少しやから…」
やっと全て入ると斎藤は体を前にかがめ美日下に抱きついた。本当は苦しかったがそれよりもこの状況に自分の体が反応している事が恥ずかしかった。斎藤の熱い体温を全身で感じられるほど密着しているので気づかれているに違いない。
「ふふ…美日下…好き」
「はぁはぁ…ッ…は…ぃ…」
何とか返事を返した。
顔を埋める斎藤は動かずずっと抱きしめていた。
「…このままがええな…」
ぼそりと斎藤が呟いた。美日下はどうしていいかわからなかったが戸惑いながらそっと斎藤の背中に手を乗せた。やる前は不安で不安で仕方なかったがいざしてしまうと恐怖や不安はなくなっていた。これは斎藤だからなのか、違う人ならこうはならなかったかもしれないと思うと勇気を出して頼んで良かったと思った。
斎藤は美日下の耳元で好きだと言うとキスをして動かした。キツくて動かなかった所は少しずつ余裕ができ滑らかになっていった。耐えていた声はいつの間にか洩れてしまい打たれる度に出ていた。
斎藤の真剣な顔が目に映る。
わからなくなっていた。
今まで見てきた人達はどれも全て演技に見えた。自分もそんな演技をしながらするんだと思って気持ちを無にしようとしていた。しかし、進むにつれ相手の気持ちが伝わってくるような感覚に胸がずっと熱くなったままどうしていいかわからなかった。初めて湧く感情にわからなくて、わからなくて、思いつくまま言葉に出して聞いてみた。
「ぁっ、ッ…あの…」
「なんや…」
「んッ…こんな…客が…いるんですか?…ぁっ、ぁッ」
「さぁな」
「はぅ…んっ…いたら…困ります…あっ…ぅ」
「なんでや」
動きがとまった。
真剣な斎藤の顔を見ながら答えた。
「はぁはぁ…俺っ…こんな抱かれかたされたら…勘違い…する…かもああッ!」
雨は激しくなり明け方まで止まなかった。
「凄い雨…」
「起きてたんか」
「はい…」
電気もつけていない薄暗い部屋の窓際、雨で霞む夜景の光の中に美日下は立って外を見ていた。上着を脱ぎハンガーにかけると美日下の隣に立った。
「ホンマやな」
「外から帰って来たんじゃないんですか?」
「そうやけど、全然気づかんへんかったわ」
「こんなに凄いのに?」
「車ばっかり乗ってたから…かな」
「そうですか…」
二人はただただ流れる雨を見ていた。
ここは斎藤の住むマンションの部屋で誰も知らないプライベートな場所だった。二日前和田に襲われた美日下は薬を飲まされ仕込みをされた。幸いにも斎藤が途中で駆けつけたため未遂で済んだ。薬を飲まされた美日下は気がついたら斎藤のベッドで寝ていたのだった。気持ち悪さと気だるさ、頭痛もあったが徐々に回復をした。今は仕事でいなかった斎藤の帰りを待っていたのだった。
「しばらく雨でええわ…」
「何でですか?」
「周りがうるさいから、雨の音でかき消される」
「…俺もしばらく雨でいいです」
斎藤は美日下の横顔を見て軽く頬を触った。
「まだ少し顔腫れてるな」
「もう、大丈夫です」
「……そうか」
「斎藤さん、お願いがあるんですけど」
「なんや」
「俺を…抱いて貰えませんか?」
「……ええよ」
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美日下は遅かれ早かれ自分が売りに出されなければならないなら加成でもなく和田でもなく斎藤にされた方がいいと思った。本当ならそんな選択すら与えられない自分だが選べるなら最後のわがままで斎藤がいいと思った。
この件で自分の借金が原因で斎藤に迷惑をかけていることを知った。何だかんだずっと売りに出されないことが気になっていたが斎藤がなにかしら手を回していてくれていたのだとなんとなくわかった。
出会いこそ最悪ではあったが自分が巻き込まれた世界で右も左もわからなかった美日下に手を差しのべてくれたのが斎藤だった気がする。いかに斎藤が他の人から自分を守ってくれていたんだとやっと気がついた。
シオンの「斎藤さんに生かされている」とはそういうことだったんだなと。借金はいくらになっていてどうなるか不安で仕方なかったがこれ以上自分は庇われてはいけない…甘えてはいけないそう思って美日下は決意をした。
ベッドで裸になる美日下は緊張と不安それと恥ずかしそうに見えた。斎藤は目の前に座り美日下の顔を見た。
「美日下、キスできるか?」
「キスですか…」
こういうこともしなければならないとわかっているがいざ言われて自らするのは初めてで恥ずかしかった。それでもやらなければと恥ずかしいのを我慢して斎藤の顔を見ると目をつむりチュッと唇をつけた。自分ではこれが精一杯だった。
「……ッ!!なんやそのキスは」
「すみません、したことないので…」
とっさに顔を横に向け表情を隠した斎藤は数秒待ってから自分を取り戻した。
「いや、可愛ええな思ただけや。俺もしてええか?」
「はい…」
目を閉じる美日下に斎藤はゆっくり唇をつけると口を半開きにさせ舌を入れた。美日下はそれを受け入れた。
抱く前に斎藤が好きにすると言ったのでそれを受け入れたが予想外だった。もっと義務的に淡々と説明するのかと思っていたが静かに抱いていた。会話が殆ど無い中、時折斎藤はキスの合間にこう言っていた。
「美日下…好き…」
「…っ…ぁ」
こういう客がいるということなのかと美日下は受け流すべきか答えるべきなのか悩んだ。疑似恋愛をして演技をした方がいいのか。何を学んでどうすればいいもわからないまま進んでいく。
さっきから優しい愛撫や自分への好きと言う言葉。部屋貸しでは客が何度も売りの子に言っているのを聞いたが性にまみれたあの好きとは違う気がした。考えているうちにそんな事もだんだんと考えられなくなっていく。
自分の腰に斎藤の手が被されキスを繰り返し気づいたら押し倒されていた。耳に斎藤の熱い息づかいを感じた。
首筋、鎖骨に乳首を愛撫され腰骨辺りをキスされるとびくびくと体が勝手になった。自分の陰部には触らず太ももを開かれ内側を愛撫してきた。
「ぅ…あぅ」
声がうわずってしまう。斎藤の鼻で笑う声にも反応してしまうぐらいだった。
動きが止まると斎藤が指を舐めた。指が一本、二本と入り込んできた。和田の舎弟が自分にしてきたのと全く違う動きだった。あの時はひたすら広げる作業をされていた。思い出したくもなかったがこれからそんな人を沢山相手にしなければいけないと思うと怖くなってしまった。
「大丈夫か?」
「大丈夫です…」
自分の体が強ばってしまったのを気づかれてしまった。こんなことでどうするんだとすぐ返事を返したが斎藤の顔は心配に近いような気がした。
前のように凄くキツイ場所を触られるのかと思ったが軽く撫でる程度に終わった。
「美日下…ええか?」
「はい…」
そう優しく声をかけられるとついに斎藤が自分に侵入してきた。ゆっくりとゆっくりと入るのがわかった。あれだけ嫌だった事なのに今は自らがお願いをして入れてもらっている。斎藤の眉間が少し寄りキツイのを我慢していた。自分も何とか受け入れようと顔を背け全て入るのを待った。斎藤の腕が自分の視線に入る。刺青の入った腕に力が入っていたのが妙に艶っぽさを感じた。自分の中に熱い芯があるのがわかる。
「ぁっ…ぅ」
「苦しいか?」
「だい…じょうぶ…です」
「もう少しやから…」
やっと全て入ると斎藤は体を前にかがめ美日下に抱きついた。本当は苦しかったがそれよりもこの状況に自分の体が反応している事が恥ずかしかった。斎藤の熱い体温を全身で感じられるほど密着しているので気づかれているに違いない。
「ふふ…美日下…好き」
「はぁはぁ…ッ…は…ぃ…」
何とか返事を返した。
顔を埋める斎藤は動かずずっと抱きしめていた。
「…このままがええな…」
ぼそりと斎藤が呟いた。美日下はどうしていいかわからなかったが戸惑いながらそっと斎藤の背中に手を乗せた。やる前は不安で不安で仕方なかったがいざしてしまうと恐怖や不安はなくなっていた。これは斎藤だからなのか、違う人ならこうはならなかったかもしれないと思うと勇気を出して頼んで良かったと思った。
斎藤は美日下の耳元で好きだと言うとキスをして動かした。キツくて動かなかった所は少しずつ余裕ができ滑らかになっていった。耐えていた声はいつの間にか洩れてしまい打たれる度に出ていた。
斎藤の真剣な顔が目に映る。
わからなくなっていた。
今まで見てきた人達はどれも全て演技に見えた。自分もそんな演技をしながらするんだと思って気持ちを無にしようとしていた。しかし、進むにつれ相手の気持ちが伝わってくるような感覚に胸がずっと熱くなったままどうしていいかわからなかった。初めて湧く感情にわからなくて、わからなくて、思いつくまま言葉に出して聞いてみた。
「ぁっ、ッ…あの…」
「なんや…」
「んッ…こんな…客が…いるんですか?…ぁっ、ぁッ」
「さぁな」
「はぅ…んっ…いたら…困ります…あっ…ぅ」
「なんでや」
動きがとまった。
真剣な斎藤の顔を見ながら答えた。
「はぁはぁ…俺っ…こんな抱かれかたされたら…勘違い…する…かもああッ!」
雨は激しくなり明け方まで止まなかった。
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